「まつエクやネイルだけ最近また戻してます」移住、子育て、バランスをとること|吉川ひなの対談

毎回自由に内容を変え、お送りしているひなの連載。ハウオリはハワイ語でHAPPYの意味です。
「憧れの四井さんと対談させていただきました!」
いいことではなく心地よいことを
―今回のゲストは、パーマカルチャーデザイナーの四井真治さん。
四井さん(以下Y)今、ひなのさんはどこにいるの? ハワイでしたっけ?
ひなの(以下H)10年ほどハワイで暮らしていたんですが、今年3月から沖縄です。子どもたちと親子留学みたいな感じで。
Y またハワイに戻ることも?
H いずれは、と思っています。けれど、今は日本にいて、日本語で子どもに教えられることがたくさんあるなと。アメリカ社会で育てていたときは、わたしも一緒に学ぶ感覚だったけれど。
Y やっぱり言葉は文化の芯にあるから。
H そうですね。今は「これはこうだよ」って教えられることが多くて、すごくいいなと感じています。でも一番下の子には毎日のように「いつハワイに帰れるの?」と聞かれるから、いつか行ったり来たりの暮らしができたらなって。
Y 僕は北九州の出身で、幼少期に実家周辺の森が開発でなくなり、ふるさとが壊されてしまいました。だから、子どもたちにはいつまでも変わらないふるさとをと思って、この場所(山梨県北杜市)に移り住んだんです。
H 移住されてから18年目なんですよね? 四井さんのインスタに癒やされています。暮らしぶりが本当に理想的で、今日は畑から何を収穫して、それをどう調理して、食べるかまでの流れがあって。そういう生活の仕方があるとハワイの暮らしでわたしも知ることができて。たとえば、コンポストに入れたオレンジの皮が堆肥になって、数カ月後に土から芽が出ているのを見つける。当たり前のはずのことなのに、その感動はまったく色褪せないんです。他にそれ以上のときめきを感じたことがないんですよね。
Y 〝生きる〟ということなんだと思います。
H その感動を共有したくて、細々と発信しているんですが、なんせわたしのキャラ的に、お前に何が分かるんだよみたいな感じもあって。
Y むしろ真逆。ひなのさんは誰よりもふさわしい感性を持っている人だと思いますよ。
H ……どういう意味ですか?
Y 「環境にいいからやってる」という人が多いけど、それって自分たちが環境を壊してきたことへの免罪符になっている場合がある。でも、心から気持ちよくてやっている人、やっていて本当にいいことだと思えている人。その感覚は、理屈じゃなくて本物。ひなのさんのように、心から湧き出る喜びとともに土に触れている人の言葉は、やっぱり一番伝わる。等身大であることは何より大事。僕なんて18年この暮らしをしてきたけれど、それでも多くの人に響かないもどかしさを感じるときもあって。だからこそ、ひなのさんのように発信力がある人が伝えてくれると嬉しいですね。
H すごくありがたい言葉です……。
Y 小さなことをコツコツ積み重ねていく。それこそが、実は命の仕組みそのものでもあるんです。日々の積み重ねが、大きな循環に変わっていく。僕らもそうやって、暮らしを組み立ててきた。そこには時間が必要なんだけど、その時間こそが〝豊かさ〟を育ててくれる。現代では何でもインスタントに実現させようとするけれど、自然は40億年続いている仕組み。とてもシンプルだけど素晴らしい仕組みで、それに沿って暮らしを組み立てていくと、ゆくゆくは大きな学びや発展、本当の豊かさにつながっていく。
H はい、本当にそう思います。
Y だから、最近よく聞く「自然と共に」って言葉には、ちょっと違和感を感じていて。
H 違和感というと?
Y 自然と共にと言うけれど、実はそれが〝自然と切り離された立場から眺めている〟言葉に他ならない。〝共に〟でも〝戻る〟でもなくて、〝もともと一部〟だから。
H 本来、人間も自然の一部であるはずなのに、わざわざ〝共に〟と言ってしまっている考えそのものが違っているっていうことですよね。
Y 東洋思想でいえば「空(くう)」と表現されるんだけど、科学的でなくても、大昔から人は自然を感じ取って生きてきた。文明が産業化して、いつの間にか森が恐ろしい場所と捉えられるようになって人間と自然を別物として考えるようになってしまったんですよね。
H 確かに、わたし自身も都会で暮らしていたころは、「自然はちょっと怖い」と思っていた節がありました。虫がとにかく苦手で。
Y 自然の仕組みに対して正しいことは、美しい、美味しい、楽しい、気持ちがいい……ポジティブに感じる感覚が本来は遺伝子レベルで組み込まれているはずなのに、現代社会で暮らす中で、その感覚がズレたり、歪んでしまったのかなと思います。
©YUYA SHIMAHARA
Shinji Yotsui
四井真治
パーマカルチャーデザイナー。信州大学農学部森林科学科にて農学研究科修士課程修了後、緑化会社にて営業・研究職に従事。 その後長野での農業経営、有機肥料会社勤務を経て2001年に独立。 土壌管理コンサルタント、パーマカルチャーデザインを主業務としたソイルデザインを立ち上げ、 愛知万博のガーデンのデザインや長崎県五島列島の限界集落再生プロジェクト等に携わる。企業の技術顧問やNPO法人でのパーマカルチャー講師を務めながら、2007年に山梨県北杜市へ移住。“人が暮らすことでその場の自然環境・生態系がより豊かになる”パーマカルチャーデザインを自ら実践。日本文化の継承を取り入れた暮らしの仕組みを提案するパーマカルチャーデザイナーとして、国内外で活動。
photograph:AFLO interview:HAZUKI NAGAMINE
otona MUSE 2025年8月号より
EDITOR
37歳、輝く季節が始まる! ファッション、ビューティ、カルチャーや健康など大人の女性の好奇心をくすぐる情報を独自の目線で楽しくお届けします。