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「怒りも悲しみも、笑って流す力を」田畑智子が語る日韓共同ドラマ『私の夫と結婚して』と今の自分

人生における怒りや嫉妬、裏切り――。誰もが一度は抱えるであろう“負の感情”をテーマに描いた新ドラマ『私の夫と結婚して』がPrime Videoで6月27日(金)より配信スタートしている。韓国発の人気ウェブ小説を原作に、日韓共同でドラマ化された本作で、田畑智子さんが演じるのは、主人公・美紗(小芝風花)の職場の先輩であり、優しく見守る存在・住吉役。冷静でいて、芯があり、誰よりも人間らしいその佇まいに、田畑さんの確かな芝居が光る。

 

12歳で映画デビューし、19歳で朝ドラヒロインを務めた彼女は、キャリア30年を超えた今、どのように演じ、働き、生きているのか。インタビューでは、“働く私たち”が思わず心を重ねてしまうような、飾らない言葉の数々が飛び出した。

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「あえて距離を詰めない」先輩の優しさとは

ドラマ『私の夫と結婚して』は、夫と親友に裏切られて命を落とした主人公が10年前にタイムリープし、“人生の再構築”を図るリベンジストーリー。韓国ではパク・ミニョン主演で大ヒットした作品を、日本版ではアン・ギルホ監督(『ザ・グローリー〜輝かしき復讐〜』)、大島里美・脚本(『1 リットルの涙』)のもと、小芝風花、佐藤健らが出演し、サスペンスと人間ドラマを巧みに織り交ぜた仕上がりになっている。そんな中、田畑さんが演じる住吉は、主人公・美紗の数少ない味方として登場する。彼女は美紗を直接励ますわけではない。声を荒げて訴えることもなければ、わかりやすいヒロイン的感情の爆発があるわけでもない。ただ、遠くから見ている。必要なときだけ、手を差し伸べる。その距離感が、妙にリアルで、そしてあたたかい。それはまるで、曇り空の隙間からふっと差し込む陽の光のように。いつも見えているわけではないのに、気づいたときにはそこにある。そういう人がいることは、人生において小さくない幸福なのだ。

 

「住吉さんは、無理に距離を詰めてこない。でもちゃんと見ていて、困っていたら“いつでも手を差し伸べるよ”という余裕がある人。私も子育てを経験して、ようやくそういう距離感を持てるようになった気がします。ちょっと離れたところで、誰かの背中を支えられるって、今の年齢だからできることかもしれません」

 

「理想の先輩像」などとひとくくりにしてしまえば簡単だが、田畑さんの芝居から滲むのは、もっと生活に根ざした“体温”だ。仕事帰りの飲み会、上司とのやり取り、仕事のフォロー。そこに、住吉という存在はスッと染み込んでいく。

 

「若い人たちと同じテンションにはなれないけれど、ちゃんと彼女たちの成長を見守っている。距離を取りつつ、“自分の人生も捨てたもんじゃないな”って思わせてあげられる、そんな存在になれたらと思って演じました」

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「犠牲の羊」にならないために大切なこと

誰かのために我慢して、いつのまにか自分を見失ってしまう。働くなかでそんな経験を持つ人は多いはずだ。本作の登場人物たちも例外ではない。田畑さんが演じた住吉もまた、ときに“犠牲の羊”的な立場に置かれながらも、静かにそこに立ち続ける。

 

「働いていると、無意識に我慢してしまうことって誰でもありますよね。でも私は、“犠牲”という言葉をあまり使わないようにしていて。どうせやるなら楽しんだ方がいい。起きたことを“自分への課題”くらいに思っていた方が、しんどくならないですから」

 

この「自分への課題」という視点は、田畑さん自身のキャリアの蓄積からうまれたものである。重たいことがあっても、それを“よくあること”と笑える余裕。それがあるかどうかで、人生の風通しは大きく変わるのかもしれない。無理をしすぎる必要なんてない。全部を完璧にやろうとするから、呼吸が詰まる。田畑さんはその呼吸の仕方を、長いキャリアの中で少しずつ覚えてきた。

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「怒りの感情も、最後に爆発させてください(笑)」

本作は“感情”がひとつのテーマ。怒りや嫉妬、悲しみが人の行動を左右するシーンも少なくない。

 

「住吉は、表ではずっと抑えているけど、最後の方に“キレる”シーンがあるんです。そこまでは我慢して、我慢して、感情をためていって……だからこそ、あのシーンは“ぜひ観てほしい”ですね(笑)」

 

感情は見せ方次第で「嘘くさく」もなれば、「深く刺さる」ものにもなる。田畑さんのそれは、後者だ。まるで時間の蓄積そのものが爆発するような瞬間。それを見届けるだけでも、この作品を見る価値はある。

 

「負の感情に時間を使うのが、もったいなくなってきたんですよね。この年齢になって、ようやく“忘れる”という技が身についた。私はたまに一人で飲みに行って、スッキリして帰る。家に持ち込まないように、その手前で吐き出すようにしています(笑)」

 

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「印象に残る共演者との現場エピソード」

出演者には、小芝風花や佐藤健といった実力派が揃っている。田畑さんにとっても、彼らとの共演は刺激的な時間だった。

「佐藤さんと直接ご一緒するシーンは多くはなかったのですが、病院でのワンシーンなど印象的な場面もありました。クールに見えて、実はとても気さくな方で、現場ではいろんな話をして楽しかったです」

 

 

そう語る彼女の顔は、共演者への素直な敬意と親しみでにじんでいた。目の前の相手としっかり呼吸を合わせることで、たとえ数カットの共演であっても、作品のなかに確かな熱が宿る。

 

「風花ちゃんはとにかく一生懸命。可愛いんですけど芯があって、距離感の取り方がすごく上手で、こちらが何も言わなくてもちゃんと空気を感じてくれる。だからすごくやりやすかったですね」

 

芝居というのは不思議なもので、ただ台詞を交わす以上に、その人の“余白”が交差する瞬間にこそ物語がうまれる。田畑さんの語る「呼吸」とは、きっとそういうものなのだろう。

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「“働く女性”へのアドバイス」

長年にわたって第一線で活躍してきた田畑さんにとって、仕事を“続ける”ということには並々ならぬ意味がある。単に演じるだけでなく、自分という人間の“声の出し方”を見つめ直す時間でもあったはずだ。

 

「疲れたときは、無理せずしっかり寝て、美味しいものを食べてください。そして“笑えること”をちゃんと見つけてください。私は悩みを持っていた時間がもったいないって、40代になってから本当に思うようになりました」

 

働くことは、いつのまにか自分を見失うリスクもはらんでいる。周囲の期待、自分へのプレッシャー、思い通りにならない現実。そんな中で「笑えること」を見つける力は、決して甘えではない。むしろ、それこそが生き延びるための処世術なのだ。

 

「周囲と比較しすぎると、自分がすり減っちゃいますから、“人は人、自分は自分”って思えることもすごく大事。ちょっと疲れたら、ひとりの時間を持って、深呼吸する。それだけでずいぶん変わりますよ」

 

誰もが背負うものは違う。その重さを自分で選べないからこそ、「自分の荷物は自分のペースで持つ」という考え方が、今を生きる女性たちには必要なのかもしれない。

 

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「プライベートの整え方」

俳優という仕事には、オンとオフの境目がつきにくい。だからこそ、田畑さんは「自分を整える技術」を大切にしている。

 

「私は、基本的には一人で飲みに行くのが好きなんです。レモンサワーを飲みながらぼーっとして、気づけばリセットされてる。そんな感じですね」

 

レモンサワーの炭酸が、頭の中の余計な思考を洗い流してくれる。彼女にとって“一人で飲む時間”とは、消費でも逃避でもなく、再起動に近いものなのだ。

 

「家庭に持ち帰らないようにするために、仕事の終わりに一度“外で吐き出してから帰る”ことも意識しています。ちょっと旦那さんには申し訳ないけれど(笑)」

 

帰る場所がある。迎えてくれる存在がある。だからこそ、田畑さんは役をまっとうできる。

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「今です。後悔、ないです」

30年以上にわたる俳優人生。その歩みの中で出会ってきた監督や仲間たちは、今でも彼女の心の中に生き続けている。

 

「芝居に対する知恵や経験は増えましたけど、それが必ずしもいいことかどうかは分からない。ときどき、“小手先”でやっていないか不安になる時もあるんです。でも、亡くなった恩師や祖母、そして家族が私を見ていてくれていると思えば、ちゃんと向き合わなきゃって思える。子どもに『ママ頑張ってきてね』って言われると、“よし、今日もやるぞ”って背中押されますね」

 

最後に、「タイムリープできるならいつに戻りたい?」と尋ねると、田畑さんはまっすぐにこう答えた。

 

「今です。後悔、ないです」

 

過去を美化しない。未来に怯えすぎない。その日その日を生きることで、今日という一日が“まんざらでもない”ものになる。そう信じて、田畑さんはまた、次の現場へ向かう。

 

Prime Videoで配信中の『私の夫と結婚して』。その静かな眼差しの奥にある感情の機微に、ぜひ注目してほしい。

■タイトル:Amazon Originalドラマ『私の夫と結婚して』

■配信表記:6月27日より毎週金曜日2話ずつPrime Videoにて配信中

■コピーライト:© 2025. CJ ENM Japan/ STUDIO DRAGON all rights reserved

【衣装クレジット】
ドレス:furuta
問い合わせ先:https://maisonfuruta.com/

photograph_TAKAHIRO SAKAI styling:REIKA IIJIMA hair & make-up:EMI SUYAMA

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37歳、輝く季節が始まる! ファッション、ビューティ、カルチャーや健康など大人の女性の好奇心をくすぐる情報を独自の目線で楽しくお届けします。

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