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オトナミューズ編集部

「石橋さんって笑うんですねって言われたことがあって(笑)」石橋静河さんが見せる“飾らない自分”

BEHIND THE SCENES

降り注ぐ太陽の下で始まり、終わるころには三日月が浮かぶ、豊かな時間が流れていた撮影。“素の石橋静河”を見たかったと話すUDAさんと、からだを通して表現した石橋さん。ふたりのまなざしが交差した舞台裏をお届け。

しなやかなからだに宿る無心のエネルギー

「やっとご一緒できました」

 

そんな言葉から、石橋静河さんのインタビューは始まった。数年前にUDAさんと出会って以来、「踊りの撮影をしたいね」と話してきたというふたり。いつか必ず形にしたいという想いを温めながら、今回ようやく実を結んだ。

 

撮影のモチーフとして浮かび上がったのは、モダンダンスの祖と呼ばれるイザドラ・ダンカン。UDAさんから渡されたイメージボードを通じて、静河さんは自然とその世界観へと引き込まれていったという。


「イザドラのことは知っていましたが、あらためて調べると、すごく自由な感覚で踊っていた人なんだなと感じました。“新しいことをしよう”というよりは、自分の中から自然に生まれた動きを信じていたような。今回の撮影はその感覚のような部分を、今の自分を通して表現できたらと思いました」

 

もうひとつ、静河さんの想像力を後押ししたのが、かねてより惹かれてきた画家、オディロン・ルドンが使う朱色だった。10代のころにパリのオランジュリー美術館で出合った1枚の絵から、その色彩にずっと心を奪われてきたという。


「ルドンの朱色は自然の中にあるのに、どこか異質で印象的。観る人の想像力をかき立てるような、不思議な存在感がありました。今回の撮影でも、メイクや植物の中にその色を取り入れていて……。イマジネーションが広がりました」

 

子どものころから親しんできた踊りと、20歳から始めた演技。それぞれ異なる難しさと向き合い続け、30代を迎えた今、そのふたつがようやく自分の中で繋がってきたという。

 

「どちらも、“からだを通して表現する”という意味では本質的には近いんです。ダンスには音やリズムがあり、芝居には言葉や相手がいる。だけどどちらも、場の空気やその瞬間の感覚と自分のからだを重ねることで伝わっていく。踊ることと演じることを通して、その輪郭がようやく自分の中ではっきりしてきた気がします」

 

踊りが装飾として扱われることへの違和感を抱き、「踊ってください」と言われることに戸惑いもあると話す静河さん。しかし今回、UDAさんから踊るという行為を自分の本質を映し出すための方法として真摯に投げかけてもらえたことが、大きな安心感に繋がったと語る。

 

「子どもって、どんな場所でも楽しみを見つけ出しますよね。枝を人形に見立てたり、石を宝物にしたり。その自由な想像力って、大人になっても本当はちゃんと残っていると思うんです。ただ、社会の中で知らず知らずのうちに蓋をしてしまうだけで。今回の撮影では、その感覚を自分の中からそっと引き出せたような気がしました」

 

役からもイメージからも自由になり、ただ無心に舞い、ふと素に戻る。その瞬間が、静河さんの本質を静かに浮かび上がらせる。

 

「役者をしていると、石橋さんって笑うんですねって言われたことがあって(笑)。役の印象って、それだけ強いものなんだなとあらためて感じたんです。でも今回は、そういうもの全てを取っ払って、自分としてそこにいられた。踊ってください、という言葉もただの演出じゃなくて、ちゃんと私を見て言ってくださったんだなと思えて……すごく嬉しかったです」

 

無邪気に、しなやかに、まっすぐに。今回の撮影で石橋静河さんが見せてくれたのは、飾らない透き通った“本来の自分”。

コート¥3,911,600、チョーカー¥174,900、(全てアライア/リシュモン ジャパン合同会社 アライア)

コート¥3,911,600、チョーカー¥174,900、(全てアライア/リシュモン ジャパン合同会社 アライア)

ドレス¥613,800、チョーカー¥202,400、ネックレス¥262,900、バングル¥138,600※参考価格、リング¥50,600、ブーツ¥264,000(全てクロエ/クロエ カスタマーリレーションズ)

Profile_石橋静河(いしばし・しずか)/俳優、ダンサー。1994年、東京都生まれ。バレエ留学を経て2015年に俳優デビュー。初主演作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17年)で第60回ブルーリボン賞新人賞を受賞。以降、映像と舞台、身体表現の両面から唯一無二の存在感を放ち、表現の場を広げている。2026年には連続テレビ小説『ブラッサム』の主演が控える。

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  • アートピースのニット※参考商品(sh.ke.em)、インナーはスタイリスト私物
  • ドレス¥613,800、チョーカー¥202,400、ネックレス¥262,900、バングル¥138,600※参考価格、リング¥50,600、ブーツ¥264,000(全てクロエ/クロエ カスタマーリレーションズ)
  • コート¥3,911,600、チョーカー¥174,900、(全てアライア/リシュモン ジャパン合同会社 アライア)
  • コート¥3,911,600、チョーカー¥174,900、(全てアライア/リシュモン ジャパン合同会社 アライア)
  • コート¥3,911,600、チョーカー¥174,900、(全てアライア/リシュモン ジャパン合同会社 アライア)
  • ドレス¥613,800、チョーカー¥202,400、ネックレス¥262,900、バングル¥138,600※参考価格、リング¥50,600、ブーツ¥264,000(全てクロエ/クロエ カスタマーリレーションズ)

PHOTO GALLERY

direction & make-up:UDA[mekashi project]
photograph:YUKI KUMAGAI styling:TOMOKO KOJIMA
hair:WAKA ADACHI [eightpeace] flower:YOSHIKATSU YAMATO
model:SHIZUKA ISHIBASHI edit:MIYU SUGIMORI
hair:TOMOHIRO OHASHI[M-rep]
model:MIKAKO ICHIKAWA
interview & text:MIYU SUGIMORI
coordinate:YU TAKAHASHI[TSUBAKI SHA]

otona MUSE 2025年9月号より

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37歳、輝く季節が始まる! ファッション、ビューティ、カルチャーや健康など大人の女性の好奇心をくすぐる情報を独自の目線で楽しくお届けします。

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