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「とてつもない優秀な才能に日本映画界は支えられている」二階堂ふみ9月5日公開映画『遠い山なみの光』インタビュー

認め合うということを大切にしながら現場に参加したいと思っています

――そもそも高峰さんのフォロワーだとすると、50年代パートの佐知子についても理解は早かったでしょうね。

 

二階堂 どうでしょうか…。理解できていた、とはおこがましいような気がしますが、勉強になる時間でした。50年代の日本ってすごく独特のエナジーがある時代だと、この作品を経て実感しました。佐知子はアメリカに渡ることに未来の希望を託している女性ですが、そういう人だけじゃなく、過去に希望をおいてきた人、または何かを変えようとして運動を始める人もたくさんいらした時代。それぞれ全く違う希望を持っている人たちが動かしていた時代だったのだと思うと、現代とは違う自由も感じるんですよね。もちろん戦争でまっさらになった土地や倫理観、価値観があったからゼロから作り出さないといけないという気持ちはあったと思いますが、それにしても今を生きる私たちとはだいぶ違います。振り返ると、昭和の時代のほうが今よりも生きることが大変だったはずなのですが、今の社会を覆う閉塞感みたいなものはあの時代にはあったのかな、と考えます。

 

――佐知子と悦子の50年代のパートで意味深いと思った部分は?

 

二階堂 三浦友和さんが演じられた悦子の義父・誠二です。戦中は戦中の常識で生きていた大人が、戦後ガラッと一気に常識が変わってしまったことで、生き方やアイデンティティを変えなくてはいけなくなるキャラクターです。過去の自分を否定して生きること自体、想像もつかないことですし、共鳴するというものでもありません。でも、生き方をチョイスしていく時代になり、ひとりひとりがそれぞれ歩み始めたという大事な時期を象徴するキャラクターだったと思います。

――あのパートでは巨大なセットなどがありましたが、いかがでした?

 

二階堂 すごく大きなセットでしたね。佐知子が暮らしている場所ひとつとっても壮大なんですよね。石川監督が現場でおっしゃっていて印象的だったのは、その場所に住み着いた、という言葉。それだけでも佐知子が娘とともに生きるために必死でたくましいということが分かりましたし、その家の中もすごく佐知子という人物を表すつくりなんですよ。佐知子はできる限り自分が好きなものに囲まれて、心を豊かに、前に進もうとしているキャラクターだということがセットから伝わるんですね。しかも、現場は本当に多国籍なスタッフに囲まれていたので、居心地もよく、すごく素敵でした。

 

――国際色豊かな現場といえば、『SHOGUN 将軍』もありましたが?

 

二階堂 『SHOGUN~』の経験は非常に大きかったですね。たっぷり準備する時間があって、これまで関わった作品で最大の人数が関わっていて、コミュニケーションやディスカッションにもものすごく丁寧に向き合えて。同時に、日本映画界はとてつもない優秀な才能に支えられていると実感しました。効率的であり、改善点もすごく早く対応するのが日本の現場。ハリウッドではとにかく対話して、認め合うことから始めるんです。それはとてもいいことだと思っているので、今はとにかく認め合うということを大切にしながら現場に参加したいと思っています。

『遠い山なみの光』
story
日本人の母とイギリス人の父を持ち、大学を中退して作家を目指すニキ。彼女は、戦後長崎から渡英してきた母悦子の半生を作品にしたいと考える。娘に乞われ、口を閉ざしてきた過の記憶を語り始める悦子。それは、戦後復興期の活気溢れる長崎で出会った、佐知子という女性とその幼い娘と過ごしたひと夏の思い出だった。初めて聞く母の話に心揺さぶられるニキ。だが、何かがおかしい。彼女は悦子の語る物語に秘められた<嘘>に気付き始め、やがて思いがけない真実にたどり着く──。


監督:石川慶/原作:カズオ・イシグロ/出演:広瀬すず、二階堂ふみ、吉田羊、カミラ・アイコ、柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜、松下洸平/三浦友和 /配給:ギャガ/公開:9月5日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
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遠い山なみの光

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  • 佐知子(二階堂ふみさん)と悦子(広瀬すずさん)
  • 二階堂さん演じる佐知子が暮らすのは1950年代の長崎。
  • 悦子の義父・誠二を演じられた三浦友和さん
  • 『遠い山なみの光』 story 日本人の母とイギリス人の父を持ち、大学を中退して作家を目指すニキ。彼女は、戦後長崎から渡英してきた母悦子の半生を作品にしたいと考える。娘に乞われ、口を閉ざしてきた過の記憶を語り始める悦子。それは、戦後復興期の活気溢れる長崎で出会った、佐知子という女性とその幼い娘と過ごしたひと夏の思い出だった。初めて聞く母の話に心揺さぶられるニキ。だが、何かがおかしい。彼女は悦子の語る物語に秘められた<嘘>に気付き始め、やがて思いがけない真実にたどり着く──。

PHOTO GALLERY

Interview:MASAMICHI YOSHIHIRO
Photograph:KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
Styling:ERI TAKAYAMA
Hair&Make-up:AIKO TOKASHIKI

ピアス¥30,000、リング¥150,000(共にロロ)

問い合わせ先
ロロ 03-6804-5499

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37歳、輝く季節が始まる! ファッション、ビューティ、カルチャーや健康など大人の女性の好奇心をくすぐる情報を独自の目線で楽しくお届けします。

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