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一緒に生きるって、簡単じゃない。映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの×宮沢氷魚インタビュー

“喧嘩すること”のリアリティ

ほんの少しの間と抑揚が、何年分もの誤解を連れてくる。映画はそこで大声を上げない。呼吸の起伏で物語る。この映画の見どころのひとつは、ふたりの衝突のシーンだ。

 

夜の郵便局に向かうサチ、試験の願書をめぐる言い争い。宮沢さんが印象に残った場面として挙げる。「“なんで” “なんで”ってつづくセリフ。言葉に出していない“なんで”が心の中で溜まっていく。あの場面はタモツの弱さがあらわになっていて、自分を追い込む象徴的なシーンだと思いました」

 

岸井さんは相槌を打つようにうなずく。「“そんなこと言ってないじゃん”っていうセリフ、あれがサチの心そのものかもしれません。言葉が届かないって、あんなにも切ないんだって思いました」。そして岸井さんは続ける。「喧嘩のシーンは、痛みというより、ちゃんと生きている証のように感じます」

 

映画の中のふたりは、すれ違いながらも歩みを止めない。それはまるで、曇り空の下を進む影ふたつのように、静かで、確かに寄り添っている。

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photograph:SHUYA NAKANO

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