一緒に生きるって、簡単じゃない。映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの×宮沢氷魚インタビュー
“喧嘩すること”のリアリティ
ほんの少しの間と抑揚が、何年分もの誤解を連れてくる。映画はそこで大声を上げない。呼吸の起伏で物語る。この映画の見どころのひとつは、ふたりの衝突のシーンだ。
夜の郵便局に向かうサチ、試験の願書をめぐる言い争い。宮沢さんが印象に残った場面として挙げる。「“なんで” “なんで”ってつづくセリフ。言葉に出していない“なんで”が心の中で溜まっていく。あの場面はタモツの弱さがあらわになっていて、自分を追い込む象徴的なシーンだと思いました」
岸井さんは相槌を打つようにうなずく。「“そんなこと言ってないじゃん”っていうセリフ、あれがサチの心そのものかもしれません。言葉が届かないって、あんなにも切ないんだって思いました」。そして岸井さんは続ける。「喧嘩のシーンは、痛みというより、ちゃんと生きている証のように感じます」
映画の中のふたりは、すれ違いながらも歩みを止めない。それはまるで、曇り空の下を進む影ふたつのように、静かで、確かに寄り添っている。
photograph:SHUYA NAKANO
EDITOR
37歳、輝く季節が始まる! ファッション、ビューティ、カルチャーや健康など大人の女性の好奇心をくすぐる情報を独自の目線で楽しくお届けします。










