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「自分らしさは流動的でいい」あのちゃん初の哲学書は幸せの定義に戸惑う大人にも刺さる【インタビュー】

「自分らしさは流動的でいい」あのちゃん初の哲学書は幸せの定義に戸惑う大人にも刺さる【インタビュー】

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テレビで、ネットで、その姿を見ない日はないあのちゃんが2025年のクリスマス・イヴに、初の哲学書を発売します。あのちゃんのことを可愛いなと思っている多くの人、よくわからないなと思っている人、曲が好きだなと思っている人……これほどのメディアへの露出度の多さともなると、いろんな意見を持つ人がいることでしょう。そしてSNSで、対面で、あのちゃん自身もきっと、さまざまな意見に日々、さらされていることでしょう。

 

そんな特殊な立ち位置にいる人が書いた哲学書と銘打ちつつ、とても読みやすい一冊。生い立ちから日々のエピソード、それに対するあのちゃんの考えが簡潔にまとめられていて「これは世代を問わず、人間関係に悩んだりストレスを感じる人の参考になるのでは?」という網羅ぶり。とくに他人からの嫉妬に疲れたり、つい他人と自分を比べてしまったり、幸せの定義に足元からグラついている大人にはかなり参考になるかも!? あのちゃんに相談したらこう答えが返ってくるのかーという内容が、かなり詰まっていたのです。ぜひまっすぐ向き合って、目を通してみてください。

 

オトナミューズウェブはそんなあのちゃんご本人に、発売前にお話を聞かせてもらえる機会を得ました。聞き手はライターのよしひろまさみちさんです。

――オトナミューズは30〜40代の女性が主な読者層なんですが、あのさんにとってその世代の女性はどういうイメージを持ってます?

 

かっこいいです。やっぱり。強さもあるけど、強さの中に女性らしさもありますし、うん、なんか自分にはまだないものをすごい持ってて、尊敬します。

 

――“哲学書”を書こうと思ったきっかけはなんですか?

 

きっかけは、書きたいって思ったから。その理由はあんまりなくて……うん。じつは今まで本を書きたいって思ったことはないんですが、ふつふつと初めて本を書きたいっていう感情が出てきちゃったんです。この感情がずっと続くものかわからないですし、この本でも書いてるように、感情って一定じゃなくて、どんどん変わってくものだから、今書いておかないと、という感じでした。

 

――どんなペースで書いたんでしょうか。

 

バーっと書けるところは時間があるときに書いて、仕事から帰った夜中、ちょこちょこ書き進めたりとか。ぼくは歌詞を書くときも書き始めたら一気に書くタイプなので、本も似た感じでした。ただ、書き方が難しくて……。自分の感情や経験を書きつつ、どういうことを自分は吸収してきたのかっていうところを中心にしていたので、たまに考え込むことはありました。

 

――執筆期間はどれくらい?

 

書き出したのが2025年の夏……。

 

――は!? めちゃくちゃ短い!

 

そうなんですよ。めっちゃ短期間で、他の仕事もやりつつ、武道館もある。で、ドラマの撮影もしてるっていうなかだったので、結構過酷でしたね。

 

――よく、こんだけまとまりましたね……。

 

なんかもうヤバすぎて、まわりの本出してる人に、この期間で書きましたって言ったら、びっくりされて。みんなちゃんとたっぷり時間とってたから。

――本ができあがってみて、改めてどう思ってますか?

 

書き終えて……うん、あんま読んでほしくない、って思っちゃいます。書く前は書きたいって思ったけど、書き終わってみると読まれたくないな、って。でも、それも予感はしてたというか、大事なことも書けたのかな、って思いました。自伝ではないし、もちろん書いてないこともたくさんあるんですけど、日ごろ相談を受けたりとかが多かったので、これ読んでもらって、ちょっと、ぼくが回答する代わりになればいいなとかも思ったり。

 

――かなり正直に振り返っている過去のエピソードがたくさんありますが、そのつらさは?

 

それはありました。過去のことは、やっぱり思い出したくないものがほとんどだったので。それをわざわざ振り返ることがイヤだったし、けど、それが自分の人生の憑き物だったから。それを書けば書くほど、自分がそのものごとに対してどこまで向き合えてたのか、どこまで許せてたのか、許せてないのかっていうのがわかりました。

 

――中学生のときに作った「復讐ルール」。今のあのさんはどう感じますか。

 

頑固だな、と。でも今と変わらないというか、割とこれをルールとしてやってきたので、当時も今もあんま変わらないルール。復讐といっても、人を傷つけたいという思考はなくて。たとえ人を蹴落として、何かを得ることもできたとしても、蹴落とさずに何か得たときの方がすごいから。それを知ってて。蹴落としちゃうと自分の実力じゃない気がして。なので、そこは真っ向勝負で。

 

――幸せの定義みたいなものについて、教えていただきたいです。

 

うーん、めっちゃざっくり言うと、他人と比べない。自分自身の人生や生活や日常で、他の人、それが恋人や家族だとしてもですけど、他の人と比べるのは違う。他人に測られるものでもないし、他人と比べて測るものでもなくて、全部取っ払ったうえで、自分が楽しいとか嬉しいとか思えるものとかが幸せなのかなって思いました。

 

――あのさんの場合、ファンから求められることは、自分の幸せに繋がりますか。

 

幸せというか、使命や宿命みたいのが強くて。自分ももらってるものがあればあげなきゃなって思うものもあって、一方通行じゃないから、なんか幸せとはまたちょっと違う感覚ではありますね。

 

――「曲を書くことは自分にとって救い」とありますが、文章を書くことはどんな変化をもたらしましたか。

 

この本では新しいことを書こうとは思ってなくて、当たり前なこと――まわりからしたらどうでもいいことは、ぼくにとってどうでもよくないっていうことを言いたいがために、書いたんですね。今まで持っていた考えをまとめていたつもりだったんですけど、書いているうちに、「自分はこういう考えなんだな」とか「こういう思いなんだな」と整理できたり、気づけたので。そういう意味では、書くことで整理されてく、研ぎ澄まされてる感じはありました。

 

――「自分らしさは流動的でいい」とありますが、デビューから今までで自分に変化があったと実感したことは?

 

結構やっぱ、ブレない方かなとは自分でも思うんですけど、でも昔はあまりにもブレなさ過ぎたというところがある中で、この数年で、自分らしさってブレないことはもちろん大事だけど、その自分らしさに縛られないためには、もっともっと自分を知って、自分がこうやって気分が変わることとかも受け入れれること、それを知ると一番自分らしくいれるなっていうことに気づけたから。考えのバリエーションが増えた、ということが、自分でも流動的になったなって思いました。

 

――オーディションにダマされて連れて行かれたエピソードが好きなんですが、あのときって自分のなかでどう整合性をとってたんですか?

 

逃げれなかったっていうか、やるしかないっていう感じですね。舵をバッと切る瞬間、自分でもわかるときがあって。武道館の時もそうですけど、なんかもうやるしかないってマインドに切り替えちゃってます。

――この本、ある意味、哲学的なタイトルですよね。

 

哲学、あんまり知らなくて。否定的な言葉を言われることがぼくは多いし、ぼくも言っちゃってるときあると思うし。ぶっちゃけ、哲学なんてなくても生きてけるでしょとか思っていたけど、そういう考えで生きていても、やっぱり哲学って気づかないうちにあって生きている。だから、「哲学なんて」って思ってる人が読んでもらえるタイトルにしたかったし、そういう否定をするところにもうすでに哲学があると思っているから、このタイトルにしました。

 

――長年一緒にお仕事をされているフォトグラファーの松岡一哲さんが撮影されてますが、どのような現場になりました?

 

今まで何度も撮っていただいてるので、質感とかすごくわかってたっていうのもあって「こうしてほしい」とかは伝えてはいないんです。けど、作り込まないで等身大の自分を写してもらうようにはしてました。

 

写真自体は、ぼやけてたり、ピントが合ってないものもたまにあって、それがまた魅力だなと思いつつ、なのに自分の輪郭をすごくしっかり見えるような写真とか。「お、そういうぼくを引き出してくれるんだな」っていう、鋭さが。柔らかい光の中にもすごい鋭さが宿る写真家さんだと思うので、そういうとこを引き出してもらってます。

 

――読者のイメージはありましたか?

 

本を読まない人や、哲学とか難しいことをあんまり理解しない人とか。ぼくがそうなんですけど、そういう人が読むきっかけになるといいなみたいな感じで書いていました。自分自身、書き方もわかんないし、本も数えられるくらいしか読んだことないので。

 

本を読むことが、あんまなかったんですよ。でも読んだことは多少あって、たとえば愛についての本とかも読んだことあったけど、何もわからなかったり、とか。別にそれを基準に生きてるわけじゃなくて、それでいいんだなって思ってるし。だからこれを読んだからって自分の人生の道しるべにしよう、なんて思わなくていいというとこが大前提。その上で、みんながどう思うか、とか、私もこう思う、とか。ぼくの歌詞では結構言われるんですけど、それを超えてやっぱりこの言葉を心に宿わせて、道を迷ったときに道しるべにしていくということも、いいと思う。どんな意見もきっと嬉しいと思うし、気になりはしますね。

 

――本を読まないとなると、参考にするものがなくて大変だったんじゃないですか?

 

そうなんです。何を参考にしていいかがわからなくて、すごい難しかったです。しかも哲学書。自分の過去をただ書くだけとか、自分の物語を作ってくっていうことでもないから、やっぱプラスアルファどういう思考か、っていうことを書かないといけないじゃないですか。断定的に書かなきゃいけないとことかもいっぱいあるので、自分にとっては通過点の本ではあるし、難しいとこでもあったけど、いいものになったなって思います。

 

けど、あんま読んでほしくない。結局、自分にとってはあたりまえなことを書いてるから。でもそれをあえて書くっていうことにしたので、改めてそれを読まれるっていうのは、ちょっと恥ずかしい。誰かのあたりまえが、ぼくにとってのあたりまえじゃないというのもあるし、だからこそ、ぼくのあたりまえがみんなにとってのあたりまえじゃなかったりしたら、新たな思考や環境が生まれる可能性もあると思う。そういうちっちゃな可能性があるなら、うれしいですね。

書名:哲学なんていらない哲学
著者:あの
定価:2,420円 (本体2,200円+税)
発売:2025年12月24日(水)
発売・発行:株式会社KADOKAWA

哲学なんていらない哲学

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  • 「自分らしさは流動的でいい」あのちゃん初の哲学書は幸せの定義に戸惑う大人にも刺さる【インタビュー】
  • この本では新しいことを書こうとは思ってなくて、当たり前なこと――まわりからしたらどうでもいいことは、ぼくにとってどうでもよくないっていうことを言いたいがために、書いたんですね。今まで持っていた考えをまとめていたつもりだったんですけど、書いているうちに、「自分はこういう考えなんだな」とか「こういう思いなんだな」と整理できたり、気づけたので。そういう意味では、書くことで整理されてく、研ぎ澄まされてる感じはありました。
  • きっかけは、書きたいって思ったから。その理由はあんまりなくて……うん。じつは今まで本を書きたいって思ったことはないんですが、ふつふつと初めて本を書きたいっていう感情が出てきちゃったんです。この感情がずっと続くものかわからないですし、この本でも書いてるように、感情って一定じゃなくて、どんどん変わってくものだから、今書いておかないと、という感じでした。
  • 書き終えて……うん、あんま読んでほしくない、って思っちゃいます。書く前は書きたいって思ったけど、書き終わってみると読まれたくないな、って。でも、それも予感はしてたというか、大事なことも書けたのかな、って思いました。自伝ではないし、もちろん書いてないこともたくさんあるんですけど、日ごろ相談を受けたりとかが多かったので、これ読んでもらって、ちょっと、ぼくが回答する代わりになればいいなとかも思ったり。
  • 書名:哲学なんていらない哲学 著者:あの 定価:2,420円 (本体2,200円+税) 発売:2025年12月24日(水) 発売・発行:株式会社KADOKAWA

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Interview & Text_MASAMICHI YOSHIHIRO
Photograph_KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
Hair & Make-up_YUUKI
Styling_MOMOMI KANDA

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37歳、輝く季節が始まる! ファッション、ビューティ、カルチャーや健康など大人の女性の好奇心をくすぐる情報を独自の目線で楽しくお届けします。

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