楽しいこと=愛情だと確信に変わった。長澤まさみが語る、野波麻帆にスタイリングを依頼した理由
私が一番、臆病だったのかも
野波さんの熱量や愛に触れ、モヤモヤと曇っていたものが透明になっていく。ただ、いざ一緒に仕事をする上で、たったひとつ懸念があった。
「野波さんは俳優として輝かしいキャリアがある方なので、そのイメージが先行して、素晴らしい撮影ができたとしても、純粋に作品としてストレートに伝わらないのではないか? と頭をよぎりました。なので、スタイリストとして活動するときの別名義を作るのはいかがですか? と提案したんです。でも、『私自身のまま取り組みたいし、ちゃんと勝負をしたい』という言葉が野波さんから返ってきて、まさにいらぬ心配だったなと。私が考えたことって、もしかすると彼女の情熱を閉ざすことに繋がりかねなかったなと反省したんです。確かに、隠す必要もないし、勝負というのはそのままの自分で正直に向き合っていくもの。情熱や覚悟をちょっと見くびっていたなと思ったし、結局、私が一番臆病だったんですよね。チャレンジ精神は誰の心にもあっていいもので、自分の中にある勝手な思い込みやルールを相手に押しつけてはいけない。海外に目を向ければ、俳優さんが映画のスタイリングを担当することもあるし、餅は餅屋じゃなくてもいい。その人が持っている才能や魅力、可能性を隠すことなく勝負する誠実さに圧倒されて、『先輩、やっぱりさすがだわ』と(笑)。改めて、好き! が込み上げてきました」
photo:SHUNYA ARAI[YARD] styling:MAHO NONAMI hair:RYOJI INAGAKI[maroonbrand] make-up:KOTOE SAITO styling cooperation:RANKO ISHIBASHI model:MASAMI NAGASAWA interview & text:HAZUKI NAGAMINE
otona MUSE 2024年4月号より