生かす努力をしなければ才能はなくなってしまう。映画『四月になれば彼女は』長澤まさみインタビュー
MASAMI NAGASAWA【長澤まさみ的。】後編
今月の表紙は長澤まさみさん。作品や役柄を背負わず、メゾンの最新ルックを纏うでもない。ただ自分らしくありたいと望む、既視感のない長澤まさみと出会った。「愛を注ぎ、楽しみながら仕事と向き合いたい」、澄み切った意志に導かれて。
「四月になれば彼女は」
2024年3月22日(金)全国東宝系にて公開
感情って、衝動的で刹那的なもの
長澤さんがヒロインのひとりを務める映画『四月になれば彼女は』は、数々の映画の企画・プロデュースを手がけてきた川村元気さんの同名小説を実写化。振り返ると、これまでに映画『ラフ ROUGH』『そのときは彼によろしく』『モテキ』『君の名は。』『百花』など、長澤さんは多くの作品を共にしてきた。
「川村さんからお話をいただくと、絶対やらなきゃいけないみたいな雰囲気ができあがってるんですよね、自分の中で(笑)。唯一といっていいほど、長い間、定期的に一緒にお仕事をしている珍しいプロデューサーさんでもあって、信頼が厚い。オファーをいただいたときも、山田(智和)監督に素敵な手紙を書いてもらったりして、まさに映画みたいなことを現実でするので、なんかもうずるいんです(笑)。ちゃんとほだされてしまって出演を決めたものの、川村さんの描く世界なのでちょっと特殊といいますか、ストーリーを理解するのが正直なところ難しかったです。
弥生という結婚間近の女性を演じたんですが、客観的に彼女の性格や行動を見つめてみると、ちょっと怖い行動があったりして。描き方によってはドロドロのメロドラマになり得るような展開もありながら、そこが純愛として美しく描かれるのが川村さんのすごいところ。それでいて登場人物たちがそれぞれに抱えている不器用さはリアルに描かれているので、美しいけれど生々しさもあり、人の心に刺さるのだと思います。実際の恋愛って、ぎこちなくて、不慣れだったりする。それに、自分の心に素直に誠実にいられていると思いきや、次の瞬間には気持ちが冷めてしまったりもする。人の感情は一瞬一瞬で変わっていく刹那的なものであり、衝動的なものでもあって、誰だって感情の揺れに振り回される。そんな人間の本質的な部分が詰め込まれています。私が演じた弥生は、普通、人には言わない胸の内を伝えてしまう正直な人。それが彼女の人間味にも繋がっている気がします」
photo:SHUNYA ARAI[YARD] styling:MAHO NONAMI hair:RYOJI INAGAKI[maroonbrand] make-up:KOTOE SAITO styling cooperation:RANKO ISHIBASHI model:MASAMI NAGASAWA interview & text:HAZUKI NAGAMINE
otona MUSE 2024年4月号より