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よしひろまさみち

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「受からなかったら私のキャリアは終わり、という覚悟で挑んだ」Netflix「極悪女王」唐田えりかインタビュー

抵抗はなかったです。長与さんを演じられるなら、髪なんてすぐ伸びるし。

――ネタバレになるから詳しくは言えないけど、断髪して戻れない姿になりますからね。

唐田 そうなんです。オーディションのときの条件にもあったのが「最後は髪を切る」でしたから。

――抵抗はなかった?

唐田 ぜんぜんなかったです。むしろ長与さんを演じられるなら髪なんてすぐ伸びるし、ってくらいで。

――あれも本当にリング上で行われたことでしたけど、実際に長与さんお会いしたときにそういうディテールは聞きました?

唐田 はい。初めてお会いしたときは緊張してましたけど、長与さんがすごくかわいがってくださって。「唐田えりかから出てくるものを信じているから、そのままやってくれたらいいよ」って、クランクイン前に仰ってくれたことは心強かったです。プロレスのシーンはもちろんですが、技のかけかたの細かいことまで全部長与さん自身から教わりました。具体的なエピソードもいろいろとうかがいましたし、うかがえばうかがうほど、長与さんは強くならないといけなかった、という使命を持っていらっしゃることが分かりました。そういった若い時代を経ての今、長与さんがめちゃくちゃかっこよかったんです。強くならないといけないし、何があっても立ち上がるしかない、というガッツみたいなもの。そこに強く共感しました。

――作品の中でも描かれているとおり、プロレスラーはときには所属団体の意向も取り入れながら試合をこなしていくじゃないですか。それって俳優さんが作品のために働く、みたいなところに通じると思うんです。マッチしているときはいいけど、ときにそれが意にそぐわないこともある。そういうバランスはどうとってきました?

唐田 幸いなことに、私がこれまで演じてきた役は、どれもマッチしていました。どの役に対しても自分との共通点がみつけられて。芝居をするにあたっては、近い部分をふくらませる、という感じで演じてきました。もちろんジレンマを感じるときもありましたが。

――おお。柔軟! だからこの大役に対してもすっと入れたんですね。

唐田 そういっていただけて嬉しいです。プロレスブームの時代をご存じなんですよね? 実際はどうだったんですか?

――はい、ドンピシャ世代です。この作品が描いているとおりで、隆盛と衰退の起伏が激しかったですね。それを知らない世代のみなさんが見事にやってくれたのも、この作品の素晴らしさだと思いますよ。

唐田 よかった……。スタントなしでするプロレスシーンが多いので、「知っている人が観たらどう思うんだろう」と思うことがあったんですけど、そう聞けてホッとしました。長与さんも「これは本物のレスラーがやればもっとすごいシーンが撮れるけど、魂が大事なんだ。だから役者がやる意味がある」って仰ってたんですよね。

――そのとおりだと思いますよ。スタントをほとんど使わなかったのも説得力がありますし。

唐田 顔が映ることでぜんぜん違いますよね。

――やっぱり行けばよかった……。じつは後楽園ホールの最終シーンのエキストラ募集、うちのポストに入ってたんですよ。

唐田 いらっしゃればよかったのに! プロレスシーンのエキストラの皆さんの中には、何度もいらっしゃる方もいるくらいでしたよ。それに皆さん、プロレスが本当にお好きな方ばかりだったようで、歓声や掛け声は本気モードだったんです。それに私たちも励まされたところもありますね。レトリなんて、落ちこぼれ時代からダンプ松本になっていくくだりのところで、エキストラさんから「お前強くなったな」って声をかけられていて(笑)。

――あ、それガチのプロレスファンだ。推しのレスラーが成長している気分に。

唐田 でも、そういうことがあると、こっちも盛り上がるんですよね(笑)

「極悪女王」
バブル真っただ中の80年代を舞台に、心優しき一人の少女がルール無用の極悪プロレスラーになっていく姿を描く。全国民の敵と呼ばれた最恐ヒールの知られざる物語。
出演:ゆりやんレトリィバァ、唐田えりか、剛力彩芽

Netflixシリーズ「極悪女王」9月19日より世界独占配信

photograph: KAZUYUKI EBISAWA[makiura office]
interview & text:MASAMICHI YOSHIHIRO
styling: AMI MICHIHATA
hair & make-up:IZUMI OMAGARI

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WRITER

よしひろまさみち/映画ライター

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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