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絶景の世界遺産「青の都」【ウズベキスタン・サマルカンド】でスマホを落とし…⁉ 清水みさと連載

そんなふうに街にも慣れて、気持ちがほどけ始めた3日目。首都タシュケントで最大の市場「チョルスー・バザール」にむかう移動中のタクシーで、なぜか「肩が凝るなぁ」と、首にかけていたiPhoneを外し、カバンの上に置いた。入れずに、置いた。

市場に着き、タクシーのドアが閉まる音と同時に、何かが落ちる乾いた音とが重なった。

 

iPhone。

 

あ、と思ったときにはもう車はビューンと走り去っていて、「待って、待って、待ってーーーー」と、自分でも引くくらい情けない声が空を切る。遠ざかるタクシーに、立ち尽くすわたし。地獄絵図・イン・ウズベキスタン。

 

 

英語も通じない。地図も、ホテルの予約も、航空券も、さっき撮ったばかりのいい写真も、全部あの小さな板の中にある。この現代においてスマホをなくすというのは、ただの忘れものなんかじゃなくて、自分のいまを丸ごと失うこととほぼ等価。買い替えてどうにかする手段も逃げ道もない国で、わたしは見事にやらかした。

中央アジアの主食用のパン「ノン」

油断禁物という言葉は、たぶんわたしのためにあると思う。呆然としていると、足元でパカパカ音がして、振り返ると、ひっかけサンダルのおじさんが近づいてくる。市場の周りには、たむろしているおじさんがたくさんいて、彼はそのうちの一人だった。何を言っているのかわからないけど、「OK、OK」とわたしを制して、突然、ピューーと、指笛を鳴らした。

 

焦るそぶりもなく、やっぱりサンダルをパカパカさせて、信号待ちの車の窓をコンコンと叩いて何かを伝えている。すると、その車がクラクションを鳴らした。そして、その音がどんどん前の車に、プッ、プッ、プッと数珠繋ぎのように伝って、伝言ゲームみたいなことが起きている。

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photograph & text:MISATO SHIMIZU

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WRITER

タレント・モデル・俳優

タレント、モデル、俳優など幅広く活動。サウナ好きが高じて、「サウナイキタイ」のポスターをはじめ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務めるほか、TRANSIT「世界のサウナ巡礼記」、るるぶ「あちこちサウナ旅」、リンネル「食いしんぼう寄り道サウナ」、オレンジページ「本日もトトノイマシタ!」など多数の連載を担当。

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