よしひろさん、「昨日なに観た?」
『ボイリング・ポイント/沸騰』
ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ~。
『ボイリング・ポイント/沸騰』
★ひと言申すことが多いけど外食大好きな方へ★
おかわり作品『ボイリング・ポイント/沸騰』ですよー。これ、おかわりするのにちょうどいいの~。なぜなら、95分! ちょっと映画館で日常を忘れたい(涼しい空間で)というとき、サクッと観られておまけにバテ気味の人には食欲も与え、さらには学びまであるという傑作!
いろいろ詰んでて崖っぷちになってる高級レストランのオーナーシェフが、ある夜職場に出勤してみたら人生最悪の日でした……というお話を、なんと1カメ、1カットでとらえた95分間。話が面白すぎて、途中まで「1カットってこと忘れてた!」っていうほどのめりこめるのよー。
主人公のシェフに襲いかかる不幸の連続は、もはや引き笑いの域。なんでこうもこの人ついていないんだろう……って同情してしまうのよね。でも、おかわりして分かってきたのは、彼以外のキャラクターに「外食大好き! だけど、必ずひと言ものを申し上げたいのよね。だってフーディーだから!」という方に知っていただきたい教訓があること。
人気レストランなので、予約で満席。おまけに評判を聞きつけたイチゲンのお客さんが大半を占めている状態。このキリキリする環境で働くスタッフが、どんな思いで働いているかってことなのよ。いや、たしかに評判のいいレストランだったら、「あたしの願いは全部かなえてくださるのよね? フフ~ン」って感じのわがままぶっこきたくなる気持ちもわからないではないの。でもさ、空気読んでよ~(泣)、っていうスタッフの心の叫び、聞こえません?
「プロポーズするんで、サプライズを!」とかいうハッピーなわがままや、ガチで失敗してるクレームには全力で応えますけど、「これは違う、あれも違う。はい、お前チェンジ!」って気分でいうのは違うだろ、と。高級レストランの食事って雰囲気も含めて楽しむものなんだから、場の空気を乱すのは、楽しみにいらしてるお客さんにもご迷惑、というもので。その迷惑まで描いているのですよ、この作品……ふふふ。ここで一言。「おこりんぼ沸点低い人は、ちょっと高めにしておいたほうがハッピーよ~ん」
よしひろまさみち
オトナミューズのカルチャーページ編集担当&映画ライター。おバカなコメディからおマジメ社会派まで幅広くカバー。ほんとにおもろいもんしか紹介しません。