よしひろさん、「きのう何観た?」
『怪物』
ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ〜。
『怪物』
★ネットの評判を聞いてモヤついている方へ★
あー、やっと言えるわ。というのも、このモヤモヤ、この映画をすでに観て知っている人たちからすると「言えねーんだってばよ!」というモヤモヤだったから。モヤモヤの原因は、是枝裕和監督が坂元裕二さん脚本の映画『怪物』を引っ提げて挑んだカンヌ国際映画祭での会見と脚本賞&クィア・パルム賞W受賞のニュースです。
いや、マジすごい映画ですよ、これ。オトナミューズ本誌の表紙を飾ってくださった安藤サクラさんの取材用に編集長も担当編集も観てるんですが、あたしも含めて全員が「すげー」を連呼(けっこう珍しいことです)。でも、公開するまで言えなかったことが山のよう。さすが坂元裕二さん、っていう意表をついた構成の物語で、〇部構成なんですね(観てない人もまだまだたくさんいるから数字は伏せます)。幾人かの登場人物の視点で、同じ事件・事象を描く、いわゆる「羅生門スタイル」ってやつ(黒澤明監督の『羅生門』になぞらえて、海外でも使われる言葉よ)。なので、ググって出てくるあらすじは、じつは始まって20分くらいまで。1パート40分くらいあるので、映画の半分も書けないの。なので、とにかく観て、としか言えない〜。
で、モヤモヤってのは、LGBTQ+を扱った優秀作に与えられるクィア・パルム賞をとったってのに、監督が「LGBTQ+だけを描いた作品じゃない」って言っちゃって、それを徹底的に批判する人が現れたこと。監督のコメントの切り取り方がまずかったことは理解してますが、いや……マジ、観てからにしてくださいな。今年は『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』の名匠ジョン・キャメロン・ミッチェルを筆頭にした審査員がクィア・パルム賞選出したんだから、間違いなくそのパートありますし、問題ないどころか、今の日本映画の中ではなかなか革新的な目の付け所ですから。ん〜、ヒントを言うとしたら、昨年のカンヌでグランプリを受賞した『CLOSE クロース』(7月14日公開)にかなり近いことをやった、ということくらいかしら。なにはともあれ、まずは観て。脚本賞とクィア・パルムの同時受賞は納得いくはずですわよん。あ、安藤さん表紙のオトナミューズ、絶賛発売中ですのでそちらもあわせて!(宣伝)
よしひろまさみち
オトナミューズのカルチャーページ編集担当&映画ライター。おバカなコメディからおマジメ社会派まで幅広くカバー。ほんとにおもろいもんしか紹介しません。