CULTURE

プロデューサー、デニース・リームが語るピクサー最新作『マイ・エレメント』大人にとってもエンバーはいいお手本になるかも!?

ピクサー作品『マイ・エレメント』

怒りっぽい人ほど、これを観て学びましょ

自分の思うようにならなくて、ついイラッとしてしまうこと、ありますよね? そんな人ほど、この夏一番のファミリー大作『マイ・エレメント』を観るべき。というのも、この作品の主人公エンバーは、そのタイプの女のコなのです。火・水・土・風の元素を擬人化しているこの作品。火の女のコ、エンバーは「お店の跡継ぎ」という親の期待を受けて、なんとかそれに近づこうと必死。だけど、必死になればなるほど、お客さんたちのわがままにイライラ、それを受け流せない自分にもイライラ、プラス親のアドバイスまでイライラ。文字通り爆発してしまうことも多々......。そんな彼女とは正反対の性格を持つ水の青年・ウェイドとの出会いを通して、ちょっとずつ変わっていきます。ピクサー・アニメーション・スタジオの最前線で活躍するプロデューサーで、この作品の陣頭指揮をとったデニース・リームに聞きました。

 

「それぞれのエレメントが持っているイメージを活かしながら、魅力的なかたちで感情表現させること。それがこの作品で一番難しく、絶対に必要なことでした。そのため、正反対の特性をもつ者同志が惹かれ合う、という物語自体は映画でもドラマでもたくさんあるんですけど、火と水が主人公というものは挑戦でした。でも、それを映像にすることで、自分とは全く違う他者を受け入れることが豊かな人生を送るうえで、どれほど重要なことか、子どもたちにも分かりやすく説明することができると考えたんです」

 

ごもっとも! こういったリアリティがあるからこそ、ピクサー作品は大人も泣かせるものになるんですよねー。

 

「そうそう。ピクサーでは常にパーソナルなところから起こった物語をベースに映画を創るんですよ。なんせうちには多様な人が働いているから、可能性は無限大。今回は監督のピーター・ソーン自身が韓国系アメリカ人2世として経験したことがベースになっています。私が好きなキャラクターは主人公エンバーのお母さんでした。彼女はエンバーと同じく気の強い女性だけど、エンバーと違って経験を重ねたおかげでユーモアで感情をコントロールするんです。いいお手本になる女性像だと思いますよ」

ピクサー作品『マイ・エレメント』のプロデューサー、デニース・リーム

Denise Ream ILMなどVFXスタジオを経て2006年ピクサー入社。『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009年)のアソシエイト・プロデューサーを務めたほか、ピクサーの長編作品を数々プロデュース。

ピクサー作品『マイ・エレメント』

『マイ・エレメント』
story 元素たちが暮らすエレメント・シティ。家族思いだけどちょっと怒りっぽいエンバーは、火の街から出ることなく、父の営む店の後継者としての修業中。ある日、ひょんなことから彼女とは正反対の性格の水の青年ウェイドと知り合い......。
監督:ピーター・ソーン/声の出演:リア・ルイス、ママドゥ・アティエ、キャサリン・オハラ、川口春奈、玉森裕太ほか/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/公開:8月4日より全国ロードショー
©2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

ピーター・ソーン監督にも聞きました

自身の経験を『ロミオとジュリエット』的なロマンスに紡ぎ上げ、誰にとっても勉強になる物語を作り出したピーター・ソーン監督。彼からも話を聞きました。「エンバーが怒るときは炎がとても大きくなるし、悲しんでいるときはキャンドルの灯火のように小さくなります。彼女が愛を感じているとき、炎はどうなるでしょう? また、ウェイドも混乱しているときには頭の中で泡がぐるぐるしたり......。正反対の人たちが惹かれ合うという土台のコンセプトをもとに、僕らは誰が観ても感情的に映る新しい表現を作り上げていきました。これによってみんな共感してくれると思うんですよ」

ピーター・ソーン監督

Peter Sohn 1977年、NY生まれ。ワーナー・ブラザース映画やディズニーのTV部門に勤めた後、2000年ピクサー入社。『ファインディング・ニモ』(2003年)、『Mr.インクレディブル』(2004年)などを手がけた後、『アーロと少年』(2015年)で監督デビュー。

otona MUSE 2023年 9月号より

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