森達也監督『福田村事件』、齊藤工監督の『スイート・マイホーム』ほか9月は日本映画がアツい!
日本映画ペンクラブ会員、日本アカデミー賞会員でもあるライターよしひろまさみちさんオススメの映画をご紹介。9月は小ぶりだけど観るべき日本映画に注目!
小ぶりだけど観るべき日本映画 パート1
『福田村事件』
しっぽりと味わえる日本映画がドドッと公開されるのでご紹介。まずは『福田村事件』。9月1日といえば防災の日。その由来は100年前の1923年の関東大震災ですよね。そのときに実際に起きた事件をもとに、ドキュメンタリー映画の巨匠・森達也監督が初めて手がけた劇映画です。あまりにも悲惨な事件なんですが、これは今こそ注視すべき問題。情報伝達の手段が少なかった時代に、どのように不安が伝播するのか、その不安の根っこはどこにあったのか、を描き出します。これを観て、いつか必ず来る天災のときに、自分がこうならない、なりたくない、と思うことが大事。
小ぶりだけど観るべき日本映画 パート2
『スイート・マイホーム』
次は『スイート・マイホーム』。俳優の斎藤工さんが齊藤工名義で監督した“家”にまつわるスリラーです。原作は小説現代の新人賞を受賞した神津凛子さんの同名デビュー 作。古民家じゃなくて、新築ピカピカの家を舞台に、マイホームゲットで幸せいっぱいの家族に得体のしれない何かが忍び寄る、という物語。心霊ものじゃないので、ホラーが苦手な人でも大丈夫......ですが、リアルにちょいコワ。「いるよね、こういう人」という人 間のダメなところが続々出てきて、我が振り直そうと思うはず......。
小ぶりだけど観るべき日本映画 パート3
『ABYSS アビス』
最後は若者のリアルな気持ちを描いた『ABYSS アビス』。ぶっちゃけ今の20代は大変だと思うのよね。だって、読者の皆さん以上に溢れかえる情報の海にもまれて毎日振り回されているんだから。自分を保つことすら、どうしていいのか分からない、って若い方、多いはずなんですよ。その気持ちを、めちゃくちゃリアルな設定と感情の爆発で描いたのが 本作(須藤監督の実体験もちょいちょい挟まってます)。典型的なボーイ・ミーツ・ガールの物語に落とし込んでいるけど、うちに込められたメッセージはほぼ「叫び」。若者心理の向学にぴったりの作品です。
text:MASAMICHI YOSHIHIRO
otona MUSE 2023年 10月号より