主演なのにセリフゼロ!? アクターズ・ショート・フィルムの話題作『撮影/鏑木真一』主演・秋山竜次さん&監督・仲里依紗さん対談【完全版】
ASFの過去作はどれかご覧になってからこの作品に挑まれました?
仲 『今際の国のアリス』で土屋太鳳ちゃんと共演していたので、太鳳ちゃんの作品(ASF3の一作「Prelude~プレリュード~」)を見ました。監督と主演だけでなく、脚本もやられているのですごいなあって思いましたねー。太鳳ちゃんと有村(架純)さんはお2人とも主演をやられるから、2人が共演することってレアな機会じゃないですか。友だち同士で共演したいというので叶った夢なんだろうなと思いました。
「撮影/鏑木真一」はASFでは初めてのサスペンスホラーかと。
仲 はい。初めてと聞いてます。これまでのASFで監督されたみなさん、それぞれに自分の好きなことをやられているので、私も好きなことを詰め込んで個性が出るといいなと思いました。ASF2での千葉(雄大)さんの作品(「あんた」)も拝見したんですが、素晴らしい会話劇だったんです。大量の台詞を1〜2日で覚えて撮るってなったら秋山さんに断られちゃう(笑)。そう思って私は「しゃべらない」方向に定めたんですよね。
秋山さん、もし監督としてのオファーがあったらどうします?
秋山 いや〜……難しいでしょ。さっきもその話をしてたんですけど、もしやるんだとしたら、演者全員がカンペを観て撮るとか。全方位にカンペが貼ってあって、どこ見てもカンペ。台詞は全く覚えなくていい現場。
仲 いいね、それ。
秋山 仲さんが今回僕のために台詞なしにしてくれたから、恩返しするとしたら、1回も台本見ずに現場来ていいレベルのものにしたいですよね。それかもしくは、仲さんとはロケをよくやってるので、ただロケ撮影してショートフィルムと言い張る!(横にいたプロデューサーが「それいけるかも……」とつぶやく)
秋山 いけるわけないでしょ!(笑)
杉本哲太さん、寛一郎さんとのお仕事はいかがでした?
秋山 いやもう、すごかったですね。
仲 お芝居の大先輩なので、先輩に演技指導している自分に引いてしまいました。気遣いしまくりです。
秋山 どんな感じになるんですか?
仲 たとえば、哲太さんの役は秋山さんが演じた鏑木の上司の設定でしょ。で、撮る角度によっては、全然台詞がないところなのに映り込むことになっちゃうから、少し席を移動して映り込まないようにして、出演シーンだけ撮れたらなるべく早く帰っていただけるようにしたり。
秋山 そんなことまで気にする監督いる? 気を遣いすぎですよ!
仲 いや、それがね。全然動きも何もないのに、見切れているがばかりに、ずっと現場にいなきゃいけないことってあるんですよ。
秋山 おお……知ってるからこその!
仲 あと手元に物を持ってお芝居をしちゃうと、最後に手元だけをアップで撮りなおししないといけなくなるので、イコール居残りしなくちゃならない。だから、私は近くにあるものは持たない(笑)。
秋山 そんな技あるの!?
仲 昨日の撮影も、席から立つと見切れて居残りだなーと、と思ったので座ったままでした。
秋山 すげー裏技……。手を抜いているんじゃなくて省エネというか。
今回の仕事でお互いの見えなかった魅力に気づかれたことってあります?
仲 秋山さんって、声がめっちゃ素敵だと思いますよ。すごい美声。
秋山 台詞ない……。声出してない……。出しても「あああー」とか(笑)。
仲 だから、もったいなかったなって思いました(笑)。ナレーションとか一生聞いていたいですもん。
秋山 いやありがたい。って、劇中では一言も発してないですけどね。
秋山さんは仲さんの魅力についていかがです?
秋山 普段あんなにポップなイメージなのに、ホラーな感じの引き出しも持ってらっしゃるんだって驚きました。いい意味で仲さんぽくない。しかも、ちょっと社会問題に斬り込むような物語を監督するなんて、すごいと思いましたよ。どんだけいろんな部分に興味があるんだって尊敬します。
仲 はい、そうなんです。興味あることがたくさんあるの。だからいつも時間がない!