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よしひろまさみち

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180分あるけどアカデミー賞最多7冠の映画『オッペンハイマー』、マジで必見!【よしひろまさみち】

オッペンハイマー

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ~。

よしひろさん、「きのう何観た?」
『オッペンハイマー』

オッペンハイマー

story 東西冷戦下で赤狩りの対象となった物理学者オッペンハイマー(C・マーフィー)。第二次世界大戦中に交流のあった女性との関係が疑惑の原因だった。そこで、うだつのあがらぬ戦前、一気に才覚を現した戦中の原子爆弾開発など、彼の経歴を洗いざらいぶちまけることに……。

監督:クリストファー・ノーラン/出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー ほか/配給:ビターズ・エンド/公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー ©Universal Pictures. All Rights Reserved.

★日本生まれの方全員へ★

いや、マジで必見なんですよ。180分あるから、膀胱問題は確実に起きるんですが、それでも映画館のスクリーンで観るべき『オッペンハイマー』。原爆を開発した張本人の伝記映画です。あたし昨秋、これをサンフランシスコの映画館で初めて観たとき、「あ、これは絶対映画賞全部かっさらうわ。なんなら日本で生まれた人全員観ないとダメなやつ~」と思った次第。あ、そのときに膀胱問題も起きましたよ。ええ。同じ回を観ていた人が、ほぼ同時にトイレへダッシュ(だいたい110分くらいのところ。で、みんなダッシュで席に戻った)。

 

SNSやらなんやらでどんどこ報じられているのであらすじなどはおいといて、未見の方が気にしてるのは「残酷な戦争映画でしょ? しかもアメリカ目線の」ってことだと思います。のんのん、違うの。オッペンハイマーがどんな人で、なんで核兵器開発しちゃって、おまけに戦後は批判の対象になったかってお話なので、戦争描写は皆無。いわば『シン・ゴジラ』で描かれた、「戦時下の中の人」のお話なのです。

 

ここで重要なのが、オッペンハイマーのキャラクター。物理学の天才だけどコミュ障で手先不器用なもんだから、理系のキモとなる実験が苦手なのね。それでほぼいじめられっコ。だけど、自分の才能には気づいていたもんだから、承認欲求はエベレストのように高いってのが、彼の人生を左右しちゃったのね。雑に流れを言うと、こういう感じ。


「実験苦手……俺、もうダメや」→「実験は学生に任せて机上の理論を説く先生の職あるで」→「マジか! 行くっす!」→「軍からお誘い」→「国家予算何年分みたいなビッグプロジェクト! 俺の研究やっと役に立つ!」→「軍もウホホ」……という具合。じゃ、ここでなにが一番悪いのか、って話になるんですが、それは観てからのお楽しみよ。これ、配信待ちしてる人多いと思いますが、配信じゃ途中で断念すること確実なのでスクリーンで観て!

 

 

 

オッペンハイマー

これ、戦後の赤狩りでつめられてるところ

オッペンハイマー

いいところでアインシュタイン登場します

オッペンハイマー

日本人が怒りに震えるのはおそらくこのシーンくらい

『オッペンハイマー』公式

WRITER

よしひろまさみち/映画ライター

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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