アウシュビッツの隣で平和に暮らす家族の無関心。映画『関心領域』で自身の関心領域も再確認しよう
ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ~。
よしひろさん、「きのう何観た?」
『関心領域』
★自分の関心領域に疑問を持たれている方へ★
いやー、日本版タイトルが秀逸過ぎるのよ、『関心領域』。原題の「The Zone of Interest」の直訳そのまんまだけど、変にいじくらないほうが、この作品の地獄度が伝わるってもんで。今年のアカデミー賞の国際長編映画賞と音響賞を受賞しているので、とっくのとーに観て地獄のズンドコ節を味わいましたが、あえてのおかわり。
ホロコーストに関する映画は数多作られてきましたが、このアプローチは初めてじゃない? っていうのが本作。アウシュビッツ強制収容所を取り囲む40平方キロの地域を指す通称が「関心領域」なんですって。いや、マジ、この名前、言いえて妙。だって、映画の主人公、収容所所長一家は塀の向こうで行われていることに全く関心がないんだもん。人の関心領域が狭いと、こうもまわりが見えなくなるもんかいな、ってことを最低最悪の史実で描いてるんですね。いやー、マジ地獄。
そこそこヒットしているようで嬉しい限りなんですが、観た方のお声を聞いてみますと「何も起きない……」ってのがちらほら。そうなんです。何も起きないんですよ! 何も起きないから怖いの。だからこそ、これを観て、自分の関心領域を再確認してほしいのですよ。たとえば、インスタとかTikTokばっかり観てると、それしか考えられなくなるじゃない。推しがいることは大賛成だけど、ほどほどにしないとね……。
WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。