CULTURE

FRI.02.11
2022

【短期集中連載】
よしひろまさみちが
アカデミー賞をまじめに予想!
vol.1
『ドライブ・マイ・カー』

発表されましたねー、今年の米国アカデミー賞候補。季節柄~ということで、映画ライターのよしひろまさみちがめちゃまじめに分析(本職っぽいでしょ?)。短期連載やっちゃいます。

今年のアカデミー賞候補の中で台風の目、と言われているのは、Netflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。なんせ11部門12ノミネートですよ(助演男優賞でWノミネート)。んまぁーすごい(棒)。でも、この作品の最多ノミネートよりも、ネトフリが候補作の制作スタジオでは10作品27部門の最多ノミネートを受けたことよりも、日本ではなによりも『ドライブ・マイ・カー』の話題一色ですわよね。

story 演出家の家福(西島秀俊)は、ある日妻を失う。喪失感を拭いきれぬまま2年、彼は招聘された演劇祭の演出のため、愛車で広島へ。車を誰にも触らせたくない彼だが、イベントの取り決めで寡黙な専属ドライバーがつくことに……。

4部門でノミネートの快挙!

そりゃそうだ。なんせ国際長編映画賞は2018年の『万引き家族』以来のノミネート、獲得すれば2008年の『おくりびと』以来。おまけに脚色賞と監督賞と作品賞まで候補入りだもの~。とはいえ、ホント、報道がこればっかりになってほしくないのよね……。だって、他の候補作品もすごいのばっかりなんだもん。とはいえ、それは「その2」以降のお楽しみとして、初回は話題に乗っかって『ドライブ・マイ・カー』を分析します。あらすじとかの基本情報はググってくださーい(山ほど出てきます)。

まずはアカデミー賞キホンのキから

さて、まず忘れちゃいけないのは、アカデミー賞は「アメリカの映画賞の本丸」ってことね。なので、これから続々発表されるアメリカの有力映画賞の結果が、本丸に影響を与えるの。だから、日本での評価と違うじゃん! とか言うの、ナシね。それと世界一の映画の祭典、には違いないんだけど、それは他の映画賞や国際映画祭のコンペで評価されるよりも、オスカーノミニーってだけでその後の収入(ソフトとか配信)につながるからなのよ。だってエンタメの発信地ハリウッドで認められるんだも~ん。

それと、選んでいる人達が他の映画賞よりも圧倒的に多いことも忘れちゃなんねーこと。他の映画賞は多くても数百人、少ないと数名~数十人なのよ。ところがどっこい、アカデミー賞はなんと約9500人! 以前は「白人のおじいちゃんばかり!」と批判されてましたが、ここ数年のテコ入れでアカデミー会員は一気に多様化。ちなみにあたしも入っている日本アカデミー賞は4000人弱(それもほぼ日本人)なので、数だけでもざっくり倍以上、人種も国籍も年齢もさまざまです。なので世界最強の映画の精鋭プロ集団が選んでいる、と思ってください。

さぁ、ここまで基本のキをたたきこんだうえで、『ドライブ・マイ・カー』がどうなるか、アメリカの映画賞レースの行方が分からない211日時点での分析をしまーす。加熱する報道にちょっと水をさすようなこといいますけど許しておくれ。けっこうまじめに分析しますんで。

『ドライブ・マイ・カー』はオスカーを獲得できる?

まず、国際長編映画賞はほぼ当確。あら、いきなり? と思うかもしれませんが、この部門だけはアメリカの映画賞があまり関わりないので~。歴代この部門の受賞作は、カンヌ国際映画祭をはじめとする有力な映画祭を制している作品が、アカデミー会員の心をくすぐって選ばれるんですね。その点、『ドライブ・マイ・カー』はカンヌのコンペで脚本賞を受賞しているアドバンテージあり。対抗馬は同じくカンヌの女優賞獲得作でノルウェーの『The Worst Person in the World』と、アメリカのインディ映画の登竜門・サンダンス映画祭のドキュメンタリー部門と、アニメーション映画の登竜門・アヌシー国際アニメーション映画祭を制したデンマークの『Flee』です。

主要3賞受賞の可能性は?

問題は主要賞よ。作品賞、監督賞、脚色賞の3つね。じつはこれらには当確を出す前哨戦があるの。作品賞は全米製作者組合賞(PGA)、監督賞は全米監督組合賞(DGA)、脚色賞は全米脚本家組合賞(WGA)なんだけど、あらびっくり。これらの候補に『ドライブ・マイ・カー』は入ってないのです~。なので、前哨戦の結果だけでいけば、『ドライブ・マイ・カー』に勝機なし。なんだけど、そこはほれ、アカデミー会員の多様化がプラスに働く可能性も否定できないじゃない。

まずはどう転んでも無理って部門。それは監督賞。ここは確実にジェーン・カンピオン様がとることになるでしょうねー(その理由はこの連載で『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を分析するときにたっぷりお話します)。いいじゃなーい、黒澤明以来だも~ん。しかも、スピルバーグやケネス・ブラナーなどと肩を並べただけでも十分箔がついたわい。

脚色賞も無理み~。なぜなら、『コーダ あいのうた』や『ウエスト・サイド・ストーリー』など強力タイトルがWGA候補なので、それよりは弱い。英語圏のアメリカにして全編日本語だし。ハルキストよ、ごめん。

作品賞も厳しいかな~……。でも、もしかしてとれちゃうかもって可能性は脚色賞より強め。その理由は配信用じゃなくて劇場用の作品。それも他の有力候補作が伝記やリメイクだけど、これは村上春樹の短編を3時間の大作にしていること。さらに「喪失と再生」というテーマがもろ現代を表現している、ってこと……。いやいや、ポジティブに考えすぎかしら。ただ、もしとっちゃったとしたら、ダークホース過ぎな大どんでん返しで、世界が震える大ニュース。そもそも前哨戦候補に入ってない作品が、ここまで上り詰めたこと自体が異例中の異例だっていうことをご理解くださ~い。

監督:濱口竜介/出演:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、岡田将生 ほか/配給:ビターズ・エンド/公開:211日より、TOHOシネマズ 日比谷ほかにて再上映開始/DVDBlu-ray218日発売)©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

『ドライブ・マイ・カー』公式

は〜い、次のお話は〜?(サザ●さん風) 例年だとアカデミー賞の結果が出てからじゃないとオスカー関連作は公開されないものの、今年はかなり多くの関連作が即座に観られる状態。ということで、ソッコーでチェックできる作品をご紹介&分析しま〜す。お楽しみに。

よしひろまさみち
オトナミューズのカルチャーページ編集担当&映画ライター。おバカなコメディからおマジメ社会派まで幅広くカバー。ほんとにおもろいもんしか紹介しません。

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