「30代で唯一の後悔は、旬を過ぎたオバサンだと思った時期があったこと」作家・LiLyが語る現在地
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―― さて、これからのことについて、聞かせてください。待望の新刊『オトナの子守唄』が発売になりますが、今ワクワクしていること、心待ちにしていることなどはあるのでしょうか。
「大人になるって、上り調子で成長し続けるものだと思っていたけれど、少し早めに40歳を折り返し地点とするならば、そこを起点にどんどん幼くなる自分に心底驚いているところ。うん、34歳ぐらいが一番大人だったな(笑)。いや、責任感は増しているし、これから親の介護や更年期など、シビアにキツいことが訪れることも予想はしているけれど、少しずつ子どもの手が離れることで、素の姿に戻っていく自由な感覚もあって、そこをすごく楽しみにしているんです」
―― 今後は、『恋愛小説』と『寝室革命』をテーマにしていくのですよね。
「まずはたっぷりと贅沢に時間をかけて、大人の恋模様を描きたい。こんな思いをするのは人生最後かも……そんな切ない恋。死を連想させるような恋心って、すごくロマンティックだなと感じるのです」
―― 『寝室革命』は、新たにローンチされたブランド〝ベディン〟についてですね。少し詳しく教えてください。
「私が夢見ていた寝室の風景は、まず夫婦のマスターベッドルームがあって、隣の部屋には子どもたちのベッドが並んでいる、そんなイメージでした。でも実際には離婚して、娘との女子部屋の2段ベッドの上が私のプライベートスペースになった(笑)。ただ、美顔器とスマホをもち込めば、どこでもサンクチュアリは完成することに気がついたんです。そんなことをエッセイに書いているうち、寝室革命をテーマにしたブランドをローンチすることになり、美容液キャンドルを世に送り出すまでになりました。この連載に思いをつづらなければ、おそらく実現しなかったこと。この運命的な流れをさらに充実させるべく、起業家として世の中に新しい風を起こしたいと燃えています」
―― では最後に。この新刊は、どんな人に読んでほしいですか?
「私が30代で唯一後悔しているのは、自分は旬を過ぎたオバサンだと思っていた時期があったこと。今思えば30代ってめちゃくちゃ若い。だから『最近つまんなーい』って思っている人に、ぜひ読んでほしい。でもそういう人は、もしかしたら読み続けるのが苦しくなるかも。なぜなら本の中の私は楽しそうだから。ただ、そこであきらめないで。先に進めば、キラキラして見えた人は、誰よりもダメージを受け、這い上がってきたのだと分かると思う。得ている人は、同時に失ってもいる。立ち直りやリカバリーのヒントが、リズムのある文体から子守唄のように流れてくる。そんな本になっていたら、本望だなと思っています」
photo:RK text:MAHO HONJYO illust:ekore
otona MUSE 2024年8月号より