【アカデミー賞直前集中連載】2/3
カビラさんとよしひろさんが
作品賞候補作について語ります!
『生中継!第94回アカデミー賞授賞式』
今年もWOWOWにて独占放送されますよ!
LA時間で3月27日に開催されるアカデミー賞授賞式(日本時間では28日)。今から結果が気になるところですが、そのへんのところ、長年授賞式の中継番組で案内役を務めているジョン・カビラさんに、映画ライターのよしひろまさみちが話を聞いちゃいました。短期集中連載の2回目となる今回も、カビラさんのムービーバフ(映画大好きっ子)っぷりが炸裂です。
僕はあくまでも案内役だから
賞の行方は考えていません
よしひろ(以下よ)カビラさんはこれまでの経験も知見もお持ちだから、おそらくこうなるだろう予想もお持ちで?
ジョン・カビラ(以下カ)気にはなりますが、正直いって賞の行方は考えてません。あくまで案内役ですからね(笑)。でも、もし『ドライブ・マイ・カー』が受賞したら歴史的なことになりますよね。僕は(作品賞にノミネートされた)10作品※の中にこれが入ること自体が感動。だって見てくださいよ、このラインナップ! これ自体が一つの地殻変動を示してますよね。
よ アメリカ本国でも『パラサイト 半地下の家族』が席巻した年を例にして予想してる人が多いですけど、あの作品は全米映画製作者協会賞や監督協会賞など、主要賞の前哨戦で全部受賞してたんですよね。でも、『ドライブ・マイ・カー』はそれらの前哨戦には全く入ってないからみな「え?」となってる。
カ 予想サイト見ると、『ドライブ〜』は7位とか8位くらいのところ。でも、NY批評家協会とLA批評家協会、それに全米批評家協会、3つの賞で作品賞を同時に獲った作品は10作品ないんですよね。それを獲ってアカデミー賞作品賞を獲ったのが『シンドラーのリスト』(93)と『ハート・ロッカー』(08)なんですよ。なので、これはすごい評価。ただオスカーは批評家が投票するものではないですからね。映画関係者が審査員をやって投票するものでもないし、人気投票でもない。ましてや興行収入も関係ない。だって『ドライブ~』の興収は、トップの『DUNE/デューン 砂の惑星』の50分の1以下なんです。『ドライブ~』がおよそ2.3億円、『DUNE〜』は120億円を越えてます(2月の取材時点の北米での興行収入)。
Netflix作品は
オスカーを獲得できるか
よ 今年ついにゴールデングローブ賞でNetflix作品『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が作品賞を受賞しましたよね。じゃあオスカーもNetflixがついに作品賞を獲れるんじゃない? と楽観視している人もいるのですが、あたしは逆に見ていて。「やっぱりうちは劇場公開作に作品賞をあげるよ」となるかな、と。そうすると、『ドライブ・マイ・カー』の順位がガっと上がるんですよね。
カ うーん、どうでしょう……。でも3年連続で最もオスカーにノミネートされている映画会社はNetflixですからね。それに僕らムービーバフとしてみれば、配信作でも劇場用作品でもいい作品だったら関係ないですし。
よ そうなんですよね。アカデミー会員が気にしているだけなんですよ。なにが楽しかったか、なにが面白かったかが一番ですもんね。
カ Netflixはどの映画スタジオも真似ができない潤沢な資金を投じてここまで良質な作品をたくさん世に出してくれて感謝なんですよ。でも……やっぱり望むらくは、オプションとして劇場公開もお願いします、と。
ハプニングも含めて
アカデミーの醍醐味
よ とにかく、なにかのブレイクスルーが今年起きる気がしますよね。それがNetflix作品の作品賞受賞なのか『ドライブ・マイ・カー』なのか。大きく分けるとその2つかなあ。
カ いやぁ、どうですかね。なんだかんだ言って『コーダ あいのうた』や『ベルファスト』もありますからね。僕は予想する立場ではないから、視聴者の皆さんとまったく同じ立場で一緒に驚き、一緒に嘆き、一緒に喜ぶスタンスでいるんですよね。たまたまいろんな下調べで過去のデータや興行収入、傾向を調べたりしておさえていますけど。それ以外は予想しようとはしないですね。米ニクソン大統領の陰謀、ウォーターゲートならぬエンベロープ事件があったじゃないですか(EnvelopeGate:第89回アカデミー賞作品賞の封筒を取り違え『ムーンライト』が『ラ・ラ・ランド』と発表された)。ああいうときにどういう風に適切に対処するかというのが重要な仕事なんですよ。
よ 昨年のラストもハプニングでしたよね。
カ え? これで終わり? っていう(大トリ主演男優賞プレゼンターのホアキン・フェニックスがゴニョゴニョしゃべってる間にエンドロールが流れて終わった)。
よ ああいうときはスタジオも「え?」となるんですか。
カ もちろん。現地のフロア・ディレクターはイヤーピースいれてますけど、僕らには放送があと何秒というカウントダウンしかこないんですよ。それでなんとか拾わなきゃならない。そこが醍醐味なんですけどね。
よ うわぁ、想像以上にきつい! そういうところも毎年楽しみで仕方ないんですよね。
カ ライブパフォーマンスもね。今年はビヨンセ! ビリー・アイリッシュ!! 期待ですよね。
よ その豪華さの中に濱口監督がいる!
カ 最高ですよ。
はい、今回はここまで。次回最終回はアカデミー賞直前の26日にお届けします!
interview & text:MASAMICHI YOSHIHIRO / photo:YOSHIKUNI NAKAGAWA(JON KABIRA)