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「消費するよりも、滋養していくことを選びたい」スタイリスト風間ゆみえ連載

A new year begins―and I hope this series brings joy and inspiration to you.

世界が大きく形を変え続けている、過渡の時代、拡大していくように見えるデジタルの“小さな”世界に自分を閉じ込めるのではなく、今は、どこにも属しきらない、境界の時代。いわゆるリミナルエイジの只中にいるからこそ、自分がどこにいるのか―それは、心の置きどころの話でもあるのだと思います。世界は加速しているのに、どこか時間が止まろうとしている。そんな不思議な時代にも感じます。正しさや意味が、あちこちで溶け始めている時代。それでも私たちは、画面の外にある時間へ戻ることで、自分の感覚を思い出していく。

 

時間に追われる感覚から、少し距離をとる。私たちはつい「時」を測り過ぎてしまうけれど、宇宙という大きな空間の中にいる自分を思い出すと、時間はもっと伸びやかで、曖昧で、自由なものだったはず。瞬間瞬間を、少し神秘的に感じ取れる感覚を、もう一度取り戻したい。デジタルがここまで進化したからこそ、そんなことを考えるようになったのかもしれません。どこまでも広がっていくように見えるデジタル社会は、時にとても小さく、点の集合のようにも感じられるのです。

 

私の一日の始まりは、相変わらず寝坊気味です。けれど、たまに早起きができた朝、窓から差し込む朝陽の光に、胸が少しときめく。17年ほど愛用しているバスローブは、まだ十分使えるけれど、気分を変えたくて、新しい色、ときめく鮮やかなピンクのバスローブを新調しました。白湯を沸かし、お香を焚き、花の水を替える。いわゆる「ルーティン」と言われそうな朝のリチュアルが、毎日新鮮に感じられるのは、自分の感覚に、きちんと意識を向けていられるからだと思います。鉄瓶に水を流し込む音。焚いた香の煙が描く、ゆるやかな動き。そして、静かに移ろっていく花の表情。どれひとつとして、昨日と同じものはありません。だからこそ、飽きることなく、この時間が、いつの間にか一日の軸になっていました。見たいものを見て、触れたいものに触れる。自分の感覚に正直でいると、時間は急に尊くなり、幸福度がぐっと上がる。特別な出来事がなくても、朝の過ごし方ひとつで、一日は全く違う表情を見せてくれます。

 

2026年は、「どうなる」「こうする」と未来を決め過ぎず、学び続けることそのものを楽しむ一年にしたい。朝起きて、静かに過ごす時間が「いい時間だ」と思えること。それが、今の私にとって、一番大きな豊かさなのかもしれません。

 

今日も、景色がひらく一日を。

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photograph : Mari Sarai[CEKAI]

otona MUSE 2026年3月号より

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EDITOR

37歳、輝く季節が始まる! ファッション、ビューティ、カルチャーや健康など大人の女性の好奇心をくすぐる情報を独自の目線で楽しくお届けします。

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