ミューズ世代必見。流し見できない夫婦ドラマ『あなたがしてくれなくても』
TVっ子エディター・マニタナオのドラマ放談 vol.7
ドラマ好きエディター・マニタナオが、あくまでも個人的な切り口とアングルでお届けするドラマ放談。今回は木曜22時枠の『あなたがしてくれなくても』にフォーカス。明日はいよいよ最終回目前の第10話なワケですがその前に、先週放送の第9話が見どころ満載だったので、いくつかピックアップして語らせて頂ければと。※あ、淀みなくスラスラと語りたいゆえ、今回も俳優さんたち皆さん失礼ながら敬称略でやらせて下さいまし(あしからず)。
民放ドラマも22時以降の枠はわりと切り込んだ内容が定着してきたな~と思っていたここ数年。今期は『あなたがしてくれなくても』という、皆まで言わずして誰もが「あ、その手の内容なのね」と分かるタイトルにまず、ほほう、となりました。原作は同名コミック(双葉社刊)とのことで、漫画家さんのタイトル付けって秀逸ですよね、やはり。そして題材はもちろん、現代の日本社会を生きる、ほとんどの夫婦がそうなのではないか?と思われる“セックスレス”。もはや巷ではタブーでも何でもないですよね。でもやはり公共放送ではまだまだ「夫婦のタブー」というキャプションがつくトピックなわけです。個人的にはキャスティングにビビッとくるものがあまりなかったので(失礼承知)完全ノーマークだったのですが。先日、子どもを寝かしつけたあとたまたま第7話をリアルタイム視聴。その印象としては、意外とストーリーを知らないまま単発で観たとしても、人生経験豊富なミューズ世代は十分楽しめちゃうのでは、と。現に私もそうでした(笑)。
調べてみたところ、制作陣はあの『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』のスタッフなのだそう。皆さん、覚えていますか? 木曜劇場の中でも群を抜く一本として、上戸彩の出世作(というか話題作)として、約10年前にも関わらず、我々世代の記憶に鮮明に残っているアレですアレ。途端にキョーミ湧きましたよね(単純)。
最新の9話を振り返り。
他人事じゃない⁈ 夫婦のリアル
まずは冒頭シーン。奈緒×長山瑛太の吉野夫婦、そして田中みな実×ガンちゃん(岩田剛典)の新名夫婦、どちらもセックスレスで悩んでいた側が一転、拒む側に回ってしまったという、やるせない夜が明けての朝。ここで挿入歌として流れてくるのが「ダンスはうまく踊れない」。井上陽水が作詞作曲したいわずと知れた名曲ですが、憂いと色っぽさが混在した独特のボーカルで、二組の夫婦の悲哀を物語るような何ともいえないムード……それもそのはず、今回ドラマの主題歌を担当しているB’z稲葉浩志がカバーしてるんです。あの稲葉さんがこのカバー選曲、なかなか意外な気もするけど、その意外さも相まってすんごいよい感じで。夫婦の気持ちのスレ違いが伝わってきて、冒頭から気持ちをこう、グイッと持ってかれるような。毎回、流れるタイミングもナイスなのです~。そのあと、スタートから10分も経たないタイミングで見逃せないポイントが。こちとら、いわゆるトレンディドラマが一斉を風靡していた時代に多感な時期を過ごしてきたため、倫理観とか恋愛観とか、多かれ少なかれドラマ観賞で育まれてきたといっても過言ではない感、あるんですよね。だからつい、ドラマには(人生観にゴーンと響くような)格言的名ゼリフを求めがち。これも、そうなのです。奈緒演じるヒロイン・みちの会社の後輩(武田玲奈)がサラッと言ってのける台詞なのですが。
「モノにも人にも思い出添付したらダメですよ~。捨てづらくなるだけ。それ愛着じゃなくて執着ですからね~。失うこと恐れてしがみついてると、ホラ! (後ろから抱きつきながら)両手が塞がってなーんにも掴めませんよ?」
これ、本人わりとライトな感じで喋ってましたけど。結構しっかり核心ついてるんですよ。だって知らず知らずのうちに思い出添付、しちゃうでしょ(笑)? でも、愛着と思ってたのが執着かもしれないと思うと、なんか一気にマイナス要素漂ってくる……!! 愛着と執着って紙一重なのねと妙に納得(しみじみ)。あ、台詞トピックでいうなら、田中みな実の上司・編集長を演じるMEGUMIの、頼もしさ満載の励ましの言葉にも心掴まれたし、ガンちゃんのお母さん役の大塚寧々が病室で諭すように話す、夫婦は二人三脚、というくだりにもしんみりきました。余談ではありますが、ふと気づけばMEGUMIはvol.06で取り上げた『unknown』にも出ているね!? キーパーソン的な役で着実に足跡残してる感じ、ある。しかも毎回やたら自然体っぽいというか、その役然りとした演技で、なんかすごいなぁと妙にリスペクトしてしまう。
今さら明らかになる価値観のズレ。
二組の夫婦がたどり着く結論は…?
そしてストーリーはダダダっと進んで終盤、聞き捨てならなかったのがこちら。食卓に向き合って座り、みち(奈緒)に「子どもは~……、欲しくない」とハッキリ言った陽一(長山瑛太)。みちが子どもを欲しがっていることを知ったうえで、今まで自分の気持ちをあえて言わなかったこの人。「(子どもはいらないと思っていることを)言ったら俺から離れていくだろ? 俺はみちと一緒にいたくて結婚したんだよ」って。いやいやいや。これ一瞬、俺はおまえがただ好きなんだよ的な骨太っぽい感じに聞こえそうだけどさ。そうじゃないでしょ(怒)、夫婦は2人で人生を共にしていくんだからさ。“子ども”って結構な重要トピックで、そこの見解の相違はどう考えても最初に伝え合うべきでしょ。言ったら俺から離れていくだろって、なんだそれ(怒怒)! そんな後出しジャンケンみたいなやつ、通用するかボケ(怒怒怒)!
陽一は、その少し前のシーンでカフェのオーナーに子ども作らないのかって聞かれて「俺はただ、いつまでもアイスクリームとかナポリタンとか食べたいんすよ」つって、ずっと子どものままでいたい的発言もしていて。そういうの、結婚する前にちゃんと言って? って切に思うわけですよ、女としては。でも実際、こういう男ってわりかし多いのが現実なのかも。だから女性はそのへんシビアにしっかり見極めていかないと、あとで、え? ハナシ違わない? ってなりかねない。死活問題ですこれ。なんつってうっかり白熱しちゃうくらい、夫婦の、というかむしろ男女のリアルがふんだんに盛り込まれている本作。明日の第10話、どちらの夫婦もついに“離婚”というステップに踏み出すようで……!? 見逃せない!! 見逃せないけど寝かしつけで多分見逃すから、後追いしなきゃ(必死)!
Profile
まにた なお/ファッションエディター。オトナミューズをはじめ、雑誌やアパレルブランドの広告などで企画ディレクション、編集、ライティングまで幅広く担当。プライベートでは一児の母として0歳の愛娘の育児に奮闘中。最愛のヴィンテージ服への欲求はひとまず封印。Instagram @manico_70
text:NAO MANITA[BIEI]
illustration:YUKI HORIMOTO