今年は赤いコートの女の人の人生を楽しみたい。In The Mood for Lady in Red【風間ゆみえ連載】
In The Mood for Lady in Red
真っ赤なルージュに真っ赤なパンプス、真っ赤なバラetc.。女性にとって赤ってどこか特別な色。今回は真っ赤なコートに惹かれたという、ゆみえさんのお話。
初夏の太陽が本気を見せ始めたある日、展示会で一目惚れして強く印象づいた赤いコート。私、このコートでひと冬過ごしてみたい。そんな思いつきで手に取るには高価なものだけど、素敵な“赤いコートを着た女の人”、そんなふうに人の記憶に残りたいなと。
人の印象はさまざまで、ある人はそれが声だったり、眉の太さや目元の動きだったり、何か気に留まる仕草だったり、匂いだったり、眼鏡だったり、それぞれのアイデンティティは魅力のひとつになりうるわけで。それがコートっていうのもなんだけど……。私は幼いころからいろんな人になって人生をいく通りも生きたいと欲張りな考えが根底にあったので、着るものはそのときどきの気分に合わせて選び、胸の奥に棲みつく変身願望みたいなものを満たしていた。そんな私が一着のコートで毎日を過ごしたいと思うなんて。毎日が赤いコートってなかなかだと思うのだけど、私という人生の中に「赤いコート」っていうタイトルがつく、そんな冬があってもいいな。毎日をドラマ仕立てに過ごしたい。笑
さておき、何より素敵なのに実は楽。選ぶコートが一枚なんだから。とにかく玄関に掛けられた赤いコートをさらりと羽織って出かける。赤いコートを着た女の人の人生をこの冬楽しみたいと考えている今日このごろ。
Lady in Red. 私の色になる日を願って。
photograph_DAEHYUN IM hair & make-up_HISANO KOMINE
otona MUSE 2023年11月号より