経験値で、心が着膨れしてない?【スタイリスト白幡啓連載】脱げないアレと、脱げるアレ
みなさんは朝起きて最初に何を思いますか?
本年度も私のSpotifyで
再生回数1位になった
大ファンのアーティストの曲の中に
心身共に堪える箇所がある。
朝眠りから覚めたとき、
知らない誰かになってたりしないかなあ、
まぁそんなことないわな、うそうそ。
(私的解釈によるとこんな感じ)
これって思ったことがない人が
いないんじゃないかな? というくらい
人間の心理を突いている言葉だと思う。
何より最近感じているのは、
新しい自分に生まれ変わることは
ないにしても、朝目が覚めたとき
〝新しい朝が来た!〟
という感覚がないということ。
なんだか昨日との境界線があやふやで……。
お洋服に例えるなら、
毎日着たものを脱がないままどんどん重ねて
着膨れしている感覚?
何よりSNSというツールで
倍×倍、すなわち二乗の情報量に
翻弄されながら、
あっちこっちのことをインプットしてるし、
さらに自ら進んでアウトプットにも必死。
そんな情報の渦の中に身を置きながら、
さらに歳を重ねた分だけの経験値
という名の鎧も纏っている。
いったい本当の自分は何なのか?
自分の拠点はどこなのか? を
見失いつつあるのでは?
まさに心身共に着膨れし過ぎなんじゃないか?
もちろんSNSが普及して
便利になったのも確かな功績だけど、
その分「私は私だから」という
元から私に備わっていたはずの、
確固たる自分軸のドライな感覚が
消えかかっている!?
そもそもかつての私は
結構なバリアを張り巡らせていて
いわゆる〝とっつきにくい人〟だったはず。
なのに最近は自らどんどん情報を
拾いにいっていて、
気づけばこれまでになかった他人軸の
しかも感情までも汲み取ってしまっていて
共感性まで生まれているという始末(怖)。
どおりで最近知らない人に
よく道を尋ねられるはずだ(笑)!
(↑これ、私が生きる上で結構重要なポイント)
つまり、他人との距離感が
バグってしまっている。
そこに加えて
歳を重ねるたびに〝経験〟という
ある意味脱げない鎧を纏っている……。
ということに気がついたのだ。
これは大変危険なことで、
普段から私が大切にしている、
自分とその自分を俯瞰で見るという行為が
毎日の締めくくりにできていないんだー!
ってことで、
まずは、来年から携帯を見ながら
寝落ちする日々にサヨナラしよう!!
お洋服を生み出す仕事をしているから
人が喜ぶお洋服を考えるその目は昼間に養いつつ、
せめて
経験値の衣で
心が着膨れしている自分が
纏う洋服はシンプルに
するべきだと思い立った。
自分を表現するにふさわしい、
納得のいく美しいパンツを基本に
それに似合うトップスに集中する!
そこを自分の拠点と決めてみる。
こんなふうに決めただけで力が抜けて、
しかしながらパワーが上がっている年の瀬。
2024年、
お付き合いいただきありがとうございました!
来るべき2025年は少し成長した自分で
より面白い『THAT IS』を発信できたらと
思っております。
みなさまのよりよい新しい朝を願って――。
よいお年をお迎えください。
白幡 啓
今回はそんなちょっとした決意で
脱げるものは脱いでみた飾らない私を
撮影してもらいました。
styling:KEI SHIRAHATA[LOVABLE] photograph:MISUZU OTSUKA hair & make-up:RIKA SAGAWA
otona MUSE 2025年2月号より
EDITOR
37歳、輝く季節が始まる! ファッション、ビューティ、カルチャーや健康など大人の女性の好奇心をくすぐる情報を独自の目線で楽しくお届けします。