【Velnica.小林加奈連載】最終回スペシャル! スタイリスト佐々木敬子とウェルビーイング対談
クリエイティブな2人が
美を生み出すとき
オトナミューズ創刊から8年、連載100回を迎えるVelnica.デザイナー小林加奈さんの連載「Lady Holistic」。最終回となる今回は、小林さんの長年の友人であるスタイリストの佐々木敬子さんを迎え、美に対する世界観やモノ作りについてお話を伺いました。
経営者として母として
駆け抜けながら守ってきたもの
ー今回、記念すべき連載100回目にして最終回のゲストに小林さんがリクエストしたのは、スタイリストの佐々木敬子さん。信頼する友人であり、ブランドの経営者でもあり、10代の男の子の母親でもある、共通項の多いお二人。
小林加奈:Velnica.を立ち上げる前、まだ20代のころ、私は女性誌のライターとして週の半分は編集部で朝を迎えていたんだけど、隣の編集部で既にカリスマスタイリストとして雑誌を引っ張るケティ(佐々木敬子さんのニックネーム)をよく見てたよ。徹夜でコーディネートをチェックしている姿を(笑)。
佐々木敬子:もう20年も前のこと! 懐かしいね。雑誌全盛期で、ほんと命がけで雑誌を作ってたよね。
小林加奈:その後、それぞれブランドを立ち上げたり、子どもを産んだタイミングもちょうど同じころで、男の子同士だったこともあってよく助け合ってたよね。仕事の仕方は分かるけど、お互い働きながらの子育ては手探りで必死だったから(笑)、いろいろ心強かったのを覚えてる。
佐々木敬子:状況が似ているからね。子どももいて、経営もしていて、見てきたものが近い。何より話したいな‥‥とか思ったときに、ちょっとどう?って約束しなくてもすぐに会える存在は、一日を笑ってすっきりと終えることができる上で本当に大切。
小林加奈:ファッション業界は華やかだけど、経営者としてもデザイナーとしても、表には出ないひとりで向き合わなくてはいけない時間が大半で。そんな悩みや思いをすぐに話せて、共感できる部分が多いケティには本当にたくさん助けられてる。ケティは経営者としても誰にも頼れないときに、自分を支えてくれたり、インスピレーションにつながるものってある?
心が反映されるモノ作りは
いい状態で取り組みたい。
そのためには環境作りが大切
ーKeiko Sasaki
佐々木敬子:私にとって、気持ちを高めてくれるのはやっぱり天然石かな。環境を整えることはとても大切で、石と新鮮な花や香りに囲まれた空間は必要不可欠なもの。あと一番いい状態でモノ作りをしたいから、旅に出て美しいものを見たり、人と会って心を解放したりと、エネルギーや精神状態が整ったときに一気にデザインに取りかかるの。逆に精神状態がよくないときはモノ作りにそれが反映されてしまうから絶対に取りかからない(笑)。
小林加奈:その瞬発力と集中力は凄まじいよね。私はけっこうもっとよくなるはず‥‥というのを永遠にやってしまうから。その状況を把握して生み出す瞬発力は、やっぱりスタイリストとしての仕事の中で培ったものだよね。
佐々木敬子:孤独な時間にコツコツやってます、という感覚はなくて、出したい! というタイミングに焦点を合わせて動いている感じ。
小林加奈:MYLANの透明感ある世界は、その淀みのないモノ作りへの精神状態が表れているんだね。
佐々木敬子:Velnica.はもっと光と影の両方を感じさせるような、濃密な色使いだよね。
小林加奈:そう。色を混ぜ合わせて調合しながら辿り着く感じ。あと1滴この色を足したらどうだろう? あと1ミリ柄を大きくしたらどうだろう?って。制作途中の試行錯誤を存分に味わわないと満足できない。そういう意味では、モノ作りは不安と期待がいつも一緒で、だからこそドラマティックなんだよね。
幸せになるには、自分と向き合い
心地よい場所を見つけること
ー境遇がとてもよく似ているお二人。でも話を聞くと、好きなものやライフスタイルは違う印象も。お互い求めている価値観についてはどう思っていますか?
小林加奈:ケティって、ナチュラルにどこまでも自分と向き合ってて、誰かと比べたり、周りの動きを気にすることが全くないよね。すごくかっこいいし、そうあれたらいいなといつも思うよ。
佐々木敬子:そもそも自分のことで精一杯だし、人に依存することがあまりないの。宇宙人だから(笑)。でも環境という意味では、気が付くとひざを抱えて地球を眺めている自分がいるのよ。今の地球環境であはどうしてもストレスフルで生き辛い。
小林加奈:地球上だと(笑)、どこだと満たされて解放できるの?
佐々木敬子:海や大地の美しいエネルギーに包まれている場所。例えばハワイ島とかカプリ島は最も自分らしくいられるところ。まず現地に着いた途端にからだが軽くなるのを感じて、疲れがふぁ〜! って全て飛んで、心地いい風と波が自分の周りを舞ってくれるような感覚になれるの。磁場のエネルギーが合うんだろうね。美しい原石や太陽の光り溢れる、自然由来の色使いに惹かれるのもそんな理由だと思う。加奈ちゃんは?
時代を超えて巡り会えるもの、
手仕事で作られたものに惹かれ、
強く影響されていると思う
ーKana Kobayashi
小林加奈:私はアジアとヨーロッパ文化がミックスされているところにいつも強く惹かれる。モロッコだったり、ベトナムだったり、上海だったり。海外でも国内でも、旅先では必ず蚤の市とか骨董屋をチェックして、時代を超えて巡り会えるデザインがずっと好き。手仕事で作られた一点物のアクセサリーとか刺繍たちは、デザインにすごく影響していると思う。ヴィンテージのボタンとか、今ではなかなか作れないような細工が美しいものを少しずつ集めて、新作のデザインに使用してみたり。ケティは最近国内の旅も増えたよね?
佐々木敬子:ここ数年はコロナの影響もあって、今まで行かなかった国内のパワースポットやお寺に導かれることが多くて。予定していなかったのになぜか誘われて行くことになったり。でも導かれていった先での感動や気付きも多いから、今年は、お誘いを受けたものはスケジュールが合う限り行こうと決めているの。
小林加奈:ケティが体験している本格的な瞑想や座禅は私もすごく気になってた! 時間に追われる毎日の中で無になれる時間ってなかなかないけど、自分と向き合う時間ってすごく価値のあることだと思うから。
佐々木敬子:瞑想はやっぱり思考をクリアにできるよね。今は価値観が変わって、事実を突き詰めて、より自分を持っていないと生き辛くなる時代。
小林加奈:うん。たくさんの情報の中で彷徨ってしまうから。そういう意味では、いかに自分が居心地がいいと思える場所や価値を見出していけるかが勝負なのかも。
佐々木敬子:固定概念を手放して、自分にとっての幸せをまっすぐに選んで、会いたいと思える人に会っていかないとね。手放さないと正しい価値は入ってこないから。自分に誠実に美しい景色を見出して行きたいよね。
小林加奈:私もこの連載を通して、たくさんのクリエイティブに触れさせてもらったけど、まだ見ぬ美しいものに出会えることを、これからもずっと期待してます。
自分が心地いいと思える
場所や価値を見出せることが
これからは大切だと思う
ーKana Kobayashi
photograph:AKARI HATAKEYAMA(portrait) / hair & make-up:MIKAKO KIKUCHI[TRON]