LIFESTYLE

木津明子のこども食堂日記vol.13
「MAPLE BASE@秩父にお邪魔しました」

こども食堂
JR根岸線、横浜駅から約20分の洋光台駅。洋光台駅北団地1街区11号棟ラウンジ(サポートby UR都市機構)に、「こども食堂レインボー」はあります。オープンは月に2日。昼ごはん30食、夜ごはん30食。 ずらりと並ぶカラフルなお惣菜、お魚とお肉のメインディッシュのワンプレートごはん。日によってメニューは変わりますが、家庭的で親しみやすく、栄養価の高い食事をいただくことができます。会場横の広場では子どもたちが指揮をとって、わたあめやかき氷など食後のちょっとしたおやつを作ったりしています。 2021年8月に「こども食堂レインボー」は開店しました。店主は『otona MUSE』はもちろん、モード雑誌からタレントのスタイリングまで幅広く活躍しているスタイリスト木津明子さん。売れっ子スタイリストである彼女がなぜ、こども食堂をやってみようと決心したのか。vol.1では、開業に至るまでの過程を木津さんからお話しいただきました。vol.2からは、さまざまな角度でこども食堂とその周辺についてお伝えしています。 vol.13の今回は、埼玉県秩父市にあるカフェMAPLE BASEさんにお邪魔しました。実はこちらのカフェがこども食堂の立ち上げ当初から、ずっと無農薬野菜を支援してくださっているのです。そのMAPLE BASEの代表である井原愛子さんと愛子さんのお母様に、こども食堂への支援のきっかけや動機をお伺いしました。
木津明子のこども食堂日記vol.12はこちら
メープルベース外観

西武秩父駅から車で20分ほど。カフェ「MAPLE BASE」は広大な公園内にあり、休日のこの日はお客さんの切れ目がない盛況ぶり。廃屋だった建物を改造して利用しています。

特産品であるメープルシロップやメープルシロップにする前の楓の樹液を使った珍しいメニューも

特産品であるメープルシロップやメープルシロップにする前のカエデの樹液を使った珍しいメニューも。パンケーキが人気です♡

「MAPLE BASE」オーナーの井原愛子さんとお母様

「MAPLE BASE」代表の井原愛子さんとお母様

木津「こども食堂を始めてからずっと無農薬の野菜を提供していただいているのですが、どんなことがきっかけだったのですか?」 井原さんお母様(以下お母様)「実は私、前々からこども食堂の必要性を感じていたんです。今の時代こども食堂によって助かる家庭はたくさんあるんじゃないかと思っていて。だから陽子さん(木津の姉)の妹さんが始めるって聞いたとき、すごく嬉しかったの」 木津「お母さん、もともと教育関係のお仕事をされていたんですよね」 お母様「はい、中学校の教諭をしていました。私が現役だったころは、学校給食で一日の栄養をまかなっている子がいるなんて話はそんなに聞くこともなかったんですよね。大変な状況が今の時代にはあるんだなと思っていたんです。それにしても、コロナ禍というタイミングもあって、よく決断して動き出しましたよね。平時でさえ、こども食堂の運営ってなかなか大変なことだと思うけれど……。人が集まるのも困難な状況下でも始めると聞いて『よし!やってくれるんだ!』ってすごく嬉しかったし賛同しました」 木津「ありがとうございます。すぐに声をかけてくださったことが、本当に嬉しかったです」 お母様「私、2011年の東日本大震災からずっと被災地の支援活動をやってるんですよ。始めて10年経ち、コロナ禍で福島に行くことが難しくなり、それまでと同じやり方では支援ができなくなって……。そんなときに木津さんがこども食堂を始めると聞いたので、協力したいと思ったんです。私自身が東北の人たちに関わってから10年経ち、わかったことがあって。“被災地”とか“援助する側”とか、そういう違いは本当はなくて、結局はお互いさまだということ。何かをしてあげる、という一方通行の話ではないんだだなと感じています。木津さんのこども食堂は神奈川だけど、私が自分の足元の秩父からでもできることがあるっていうのは嬉しかった」 木津「私も食堂を始めて『食べさせてあげる』とかじゃなくて『自分がただやりたいからやってる』っていうのがあって、実際食堂を始めて、お客さん・支援者・スタッフが対等であることが大事ということに気が付いたので、お母さんの話がすごくわかります」 お母様「朝日新聞の木津さんの記事(こども食堂についての取材記事が掲載された)を見たとき、こういう気持ちでやっているって理由が心にストンと落ちたというか、心に響きました」 木津「愛子ちゃんはどうしてこども食堂のことを知ってくれたの?」 井原愛子さん(以下愛子)「木津さんのインスタの告知を見て。ピンときたんです。私が前職を辞めて、秩父に戻ってきたのは“森の活動”をたくさんの人たちに知ってもらいたいと思ったからなんです。その中で、収入を得ていくための仕組みの一環として、このカフェを始めたんですね。私も飲食店の経験がなく始めたから最初は大変だったので、木津さんがこども食堂を始めるのにいろいろ必要だろうなと。母にも相談して、無農薬の野菜なら集めて送れるんじゃないかなとなったんです」
メープルベースでの木津さん、愛子さん、お母様の対談風景

愛子さんと木津さんのお姉さんが職場の同僚だったそうで、そこから家族ぐるみのお付き合いに。木津家の家族旅行に愛子さんが参加したこともあったとか。

森の活動

愛子さんたちの「森の活動」は、こんな循環をめざして行われています。

木津「“森の活動”ってどんなことをするの?」 愛子「今あるカエデの木から樹液を採取したり、将来を見据えて新しくカエデの木を植えています。もともと私が加わる前からその活動はあったのだけれど、ボランティアで行われることが多く、収入を得ることは難しかったんですよね。でもこの活動を続けていくためには、まずはちゃんと利益を生む仕組みを作ることが本当に大切。メープルシロップ関連商品の生産もその一環です。そして、もっと若い人たちを巻き込み、たくさんの人に知ってもらう必要があるんですよね。コロナ禍でできていなかったんですが、今後はイベントやエコツアーなど交流事業もやっていきたいと思っています。植林して、大きくなった木の樹液を採り、それを製品にしていくって、とても長期的な活動なんですよね。皆さんにここでメープルシロップやカエデの樹液を使った食事を食べてもらい、カエデの成長を見守り、生産性のある持続可能な循環する森へと育てていく。規模としては大きく感じられるかもしれませんが、とても地道な作業の繰り返しというか、積み重ねなのかなと」 木津「カエデって樹液が採取できるようになるまで、だいたい何年かかるの?」 愛子「幹の直径が20センチくらい。1年に1センチくらい育つから、大体最短で20年。カエデは小さいと鹿に食べられてしまうので、ある程度の大きさになるまで(約10年くらい)畑で育ててから植えています。さらにそこから10年〜15年かかるんですよね」 編集部「人間が育つくらいかかるなんて……。まさに子どもを育てるみたいに見守りながらなんですね」 愛子「そうなんです。今はもともとあったカエデの木から樹液を採取している感じです。採取した樹液をシロップにするには煮詰めて糖度66%にします。採った量の50分の1くらいに煮詰めないと甘いメープルシロップは作れないんです」 木津「相当な手間がかかってるんだね」 愛子「戦後の国策で、自生していた山の木を切って(建築資材として扱いやすい)スギやヒノキをたくさん植えてしまったのですが、本来秩父は豊富な種類のカエデが生えていた場所なんですね。私たちは秩父のDNAを持つ苗木をきちんと地元で育て、山に返すのをモットーとしてやっています。手間はかかりますが、少しでも森を豊かにするために、いろんな人が関わって活動しているんですよね。未来に繋げていくというか、これから先もっとちゃんと循環していけるよう礎を固める活動中です」 お母様「愛子が(森の活動を始めるにあたって)基地を作りたいって言っていて、基地って何のことだろうと思っていたんですね。でもここ(メープルベース)ができて、お客さんにカエデの樹液やメープルシロップを使った食べ物や飲み物を提供して、メープルシロップを作る機械まであって。そんなのに触れる機会もなかったけど、やっぱりこの場所があることで、お客さんはもちろん、少しずつ関わる人たちが増えていっているのが私にも見えるんですね。こうして人が集まれる場所があるって、大事なんだと実感しました」 木津「その感じはとても、こども食堂に似ているなって思います。こども食堂を始めてから、人がこんなに関わってくれて、友人とも以前よりも関係が深まったり、知らなかった面を知ったり。もちろん新たな出会いもあって、徐々に食堂が人が集まり、濃密な関係を築ける基地になっていっているなと、ちょうど実感してたんです。人間関係がどんどん膨らんでいって、いい化学反応が起きるみたいな。そういうのとっても素敵ですよね」 お母様「メープルベースもこども食堂も形は違うけど、根っこの部分に『共にやっていこう』っていう気持ちがある。そしていろいろなものを『繋いでいく』ことを大切にしていて。大事なのはやっぱり人だと思うんです」 木津「すごくそう思います」 愛子「秩父と神奈川で場所も離れているけれど、今こんな風な話ができてて、おたがいの活動を知るとなお、こども食堂レインボーに関われてよかったと思います。私の活動もゴールはなく、どこに行けば終わりみたいなそういうことではなくて。いろんな人に知ってもらい、支援してもらいながら、継続していくことがやっぱりすごく大切だと思います」
秩父での集合写真

今回は子どもたちも取材に参加! みんなで自然を堪能してきました。

愛子さんが地元の方と協力して生産しているメープルシロップ製品

愛子さんが地元の方と協力して生産しているメープルシロップ製品。珍しい樹液は、ウィスキーを割る水代わりや、お米を炊く水代わりにするのが愛子さんのオススメ。

ひみつ

ミツバチにリンゴジューズを食べさせるという、珍しい方法で集められた蜜とキャンディー。「秘蜜」という商品名で販売されている。

ひと言でカエデといっても、種類が豊富。採れる樹液の味わいも異なるそう!

紅葉のピークを過ぎてしまっていましたが、とても清々しい気分に。カフェの前の散歩道です。

MAPLE BASE インスタグラムMAPLE BASE運営会社のインスタグラム

text:AKIKO KIZU

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