LIFESTYLE

ドイツの街「トリーア」を歩く。古代ローマ皇帝浴場の遺跡、世界遺産のポルタ・ニグラを疑似体験

フリーアナウンサー小山瑶の海外生活 in Germany Epi.22 「街を歩く トリーア編」

フリーアナウンサー小山瑶の海外生活 in Germany Epi.22「街を歩く トリーア編」

ドイツ・フランクフルト在住でフリーアナウンサーの小山瑶さんが、現地で暮らすからこそ得られるディープで旬な情報を教えてくれる連載。ドイツで2回目の夏を迎えるとあって、これまでよりも「ドイツに住んでいるからこそ! フランクフルトにいるからこそ!」な情報を伝えてくれます。

 

今回は、シリーズでお送りしている「街を歩くトリーア編」。ドイツで暮らし始めて1年半が経過しましたが、トリーアという都市を知りませんでした。マイナー(?)とも言える、トリーアの魅力的な最新情報を、足を運ばないと見られない風景写真とお届けします!

前回の「街を歩く」はミュンヘンからお届け!

ドイツ最古の町【トリーア】の
シンボルを探せ!

今回ご紹介するのは、ドイツ中西部に位置する小さな都市トリーア(トリール)。隣国のルクセンブルクの国境付近に位置し、私の住むフランクフルトからは車で2時間半ほどで到着します。これまでドイツのさまざまな都市に足を運んできましたが、実はドイツの街はどこも似たり寄ったり。主要駅から少し離れたところに旧市街があって、川沿いにカフェやお店が集約していることが多いのですが、トリーアは街中に世界遺産が点在していて、どこかイタリアやフランスを思わせる異国情緒あふれる街だと思いました。

トリーアの地図

ドイツ中西部に位置する小さな都市トリーア。

フランス、ルクセンブルク、ドイツを流れるモーゼル川沿いに位置するトリーアは、人口約10万人。西に約40㎞のところにルクセンブルクがあります。ドイツ語が公用語ですが、フランスのロレーヌ地方が隣接していることから、フランス語を話す人も多いそう。

 

トリーアは2000年以上もの歴史を持つドイツ最古の街。その歴史は長く、紀元前にローマ帝国がヨーロッパ進出のために築いた植民都市のひとつと言われています。その後5世紀までローマ帝国の支配下にあったトリーアでは、石橋や円形競技場、皇帝浴場などが建設されました。街を歩くとトリーアは第二のローマのように感じます。

世界遺産めぐり
①ポルタ・ニグラ

ローマ人により2世紀に建設されたポルタ・ニグラ。

ローマ人によって建設されたポルタ・ニグラは、どこかコロッセオを思わせる外観。高さ30m、幅36m、奥行22mの巨大な門です。

トリーアの街の北門としての役割を果たしていたポルタ・ニグラは、ラテン語で「黒い門」という意味があります。写真のように外壁が黒い石でできていることからそう名付けられたなど、さまざまな説話があるようです。1986年にはユネスコの世界遺産に登録されました。門の上まで続く長い螺旋階段を登りきると、モーゼル川と旧市街地が眼下に広がっています。ローマ時代に築かれた城門のなかでは、最大級とも言われています。夜はライトアップもされるそうで、違った表情が楽しめます。

 

トリーアをホストタウンとして行われるFIA 世界ラリー選手権では、このポルタ・ニグラでスタート・フィニッシュセレモニーが行われています。歴史ある建築物を背景に、モータースポーツが行われるなんて素敵ですよね。

②トリーア大聖堂(聖ペテロ大聖堂)

ドイツ最古の大聖堂、トリーア大聖堂(聖ペテロ大聖堂)

ドイツ3大聖堂のひとつ、トリーア大聖堂。

ドイツ最古の大聖堂で、ケルン大聖堂、マインツ大聖堂に次ぐ3大聖堂のひとつでもあります。古代ローマ時代の4世紀ごろに建設された聖堂で、トリーアにある教会のなかでも歴史が長く、最大と言われています。ですが、建設当初は今の4倍の大きさがあったという驚愕の記録も残されています。十字架の形をした大聖堂が多いなかで、この聖堂は長方形の箱型になっているため、歴史的に珍しい建築物でもあります。

精巧な彫刻が施されている祭壇

精巧な彫刻が施されている丸天井や祭壇があり、思わず見入ってしまいました。隣接する聖母マリア教会のステンドグラスも非常に美しいので、訪れた際にはぜひ見てみてくださいね。

③カイザーテルメ

カイザーテルメの跡地

なんと古代ローマ時代の共同浴場、皇帝浴場の遺跡があるんです! まさかドイツにあるなんて、と驚きました。かの有名なカラカラ浴場に次いで、公共浴場のなかでは屈指の大きさを誇っています。4世紀に建てられたとされているこのテルメ、現在は浴槽の一部や地下通路などを見学することができます。修復作業をしている場所もありましたが、地下通路を見ると当時の建築技術力の高さが伺え、非常に感動しました。

皇帝浴場の遺跡

地下通路は非常に暗く、肌寒く感じるほど。全部まわるのに30分以上かかりました。浴場の地下は非常に複雑でした。

④アンピシアター(円形劇場)

アンピシアターの跡地

その名の通りトリーアには、アリーナの遺跡がありました。長さ75m、幅50m。3万人近くの観客を収容することができる劇場だったそうです。アリーナの地下に行くと地下水が湧き出ているのか、池ができていました。当時は舞台の昇降を操作できる機械が置かれていたのだとか。現在はこの円形劇場でコンサートが開かれたり、剣闘士たちの戦いを再現したイベントが開催されたりと、現代でもこの場所は市民らによって活用されています。

アンピシアターの地下の様子

地下の様子。原因は分かりませんが、地下水が湧き出てしまっているようです。入場料は€4。

そしてトリーアは、ドイツワイン発祥の地としても知られています。ここではモーゼルワインが多く生産されていて、特徴としては白ワイン、リースリングが半数を占めています。古くからブドウの取引地としても知られ、ブドウ栽培学校や州立ブドウ園もあります。車を走らせていると山肌で栽培されているワイン畑の風景が印象的でした。

しばらく続くトリーアのぶどう畑

車窓から。こうした景色がしばらく続きます。ヨーロッパの夏は日照時間が長いので、ブドウもよく育つそうですよ。

ここからはおまけ話ですが、今回ご紹介したトリーアから車を走らせること1時間、ドイツ三大美城のひとつ、エルツ城にも行ってきました。ドイツはいたる所にお城があるのですが、三大美城といわれるだけあって存在感に圧倒されました。エルツ城は、1965年から1990年代のドイツマルクの紙幣の図柄にも使用されたこともあり、ドイツ国民にとっても自国を象徴する存在として認識されているのが分かります。

左奥に見えるのがエルツ城

建設された12世紀初頭から一度も戦争で崩落したことがないそうで、当時の建築技術を見ることができます。残念ながら、この日は入り口が工事中のようでした。

ドイツ三大美城のひとつ、エルツ城

城中は撮影禁止。ツアーガイドが常駐していて、時間になると内部を案内してくれます。当時からこんな技術があったのかと驚くような部屋の装飾に感動の嵐でした。

エルツ城は、現在ケンペニヒ家が所有しているそうです。所有者が現代にいることに驚きましたが調べたところ第34代目だそうです。時代と共に城の建物を建て増ししていることから、建築様式のロマネスクとバロック様式が混在しているというほかの城では見ることのできない造りを一度に楽しむことができました。エルツ城は、地元の人曰く「最も写真に収められた城」だそう。800年間で一度も破壊されなかった城。ドイツにはこれからも守り続けたい宝物がたくさんありそうです。

 

Chao!

小山瑶

Profile
小山瑶(こやまはるか)/山形県のテレビ局で4年間アナウンサーとして勤務し、2022年4月からフリーアナウンサーに転身。(ニチエンプロダクション所属)ドイツ・フランクフルトで勤務する夫に帯同。暮らしぶりをSNSで綴っている。

text : HARUKA KOYAMA

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