LIFESTYLE

TUE.03.15
2022

木津明子のこども食堂日記vol.4

JR根岸線、横浜駅から約20分の洋光台駅。駅前のまちまどレンタルスペースの中に、「こども食堂レインボー」はあります。オープンは月に2日。昼ごはん30食、夜ごはん30食。

ずらりと並ぶカラフルなお惣菜、お魚とお肉のメインディッシュのワンプレートごはん。日によってメニューは変わりますが、家庭的で親しみやすく、栄養価の高い食事をいただくことができます。広めの廊下では子ども達が指揮をとって、わたあめやかき氷など食後のちょっとしたおやつを作ったりしています。

2021
8月に「こども食堂レインボー」は開店しました。

店主は『otonaMUSE』はもちろん、モード誌からタレントのスタイリングまで幅広く活躍しているスタイリスト木津明子さん。売れっ子スタイリストである彼女がなぜ、こども食堂をやってみようと決心したのか。vol.1では、開業に至るまでの過程を木津さんからお話しいただきました。前回のvol.2から、月に1度こども食堂へお手伝いに行っている、編集・ライター 柿本 真希が木津さんにお話を伺ったり、実際のお店の様子などをレポートしています。

今回のvol.4は、『料理家・寺本りえ子さんと“子どもの食”について考える』です。

vol.3の記事はこちら

料理家・寺本りえ子さんは、GIFT SCHOOL(※編集部注:北青山にあるフリースクール。3歳から14歳までの子どもが通う。現在2期生を募集中)の平日の昼食を担当しています。りえ子さんが“食育”に長年興味を持っていたことがキッカケでした。

縁あって20214月から平日の昼食のレシピと調理を担当することになり、関心がある友人知人たちがりえ子さんのサポートとして料理補助へ。

筆者(柿本)がりえ子さんと友人で、GIFT SCHOOLの手伝いに行ったことがあり、木津さんから「こども食堂を始めようと思う」との相談を受けたとき、「りえ子さんのお手伝いに行ってみたらいい経験になるかも」とふたりを繋げました。すぐに数回手伝いに行った木津さん。その出会いによって、こども食堂をスタートしたときには、メニューや調味料などりえ子さんにアドバイスしてもらったりと、困った時に相談できる力強い存在となっているそう。

そんなおふたりに「子どもと食」についてお話いただきました。

りえ子さんが春巻きのコツをレクチャー。「今度こども食堂でも春巻き作ろう!」と決意する木津さん。

木津さん「真希ちゃんに紹介してもらってりえ子さんの手伝いに行かせてもらったのが2021年の5月。実際に行ってみたら大忙しで……、私も学ぶことが多いから、その後も何回かお邪魔していますが、いつもあっという間に帰りの時間に。だから今日は改めてりえ子さんにお話を伺いたいなと思っています。まずはGIFT SCHOOLで昼食を担当することになった経緯を教えてください」

りえ子さん「元々食育の講演などもしたり、子どもたちに“食”をきちんと伝えていきたいという想いはずっと持っていたんです。“食”というものが人生の中で温かい思い出となったり、救われる瞬間は誰しも必ずあるはず。美味しいってそれだけで幸せになれるものだから。子どものうちに、“食”にどう触れ合うかはその後の未来に影響すると思うんです。そうして“食育”にずっと想いを持っていて、たまたまこのスクール立ち上げのお話を伺ったので、手を挙げて参加させてもらうことになりました」

木津さん「平日毎日作るって、想像以上に大変だと思うんです。その合間に料理家としての仕事やワークショップ、イベントなどもあって…。私なんて月に2度でもいっぱいいっぱいなので」

りえ子さん「給食みたいに毎日作って食べてもらうのではなく、なるべく子どもたちと一緒に作るようにしています。食に触れると子どもって変わるんですよ。自分が少しでも関わったり調理したりすることで、食への興味がぐっと増えていくのが伝わってきてとても嬉しくなります。毎日続けるのは大変だし、周りからも心配されたりもしたけれど、やっぱり毎日続けるということで見えてきたものがあるし、繋がれたものがある。日常の食を子どもたちと共有するということの大切さや影響を感じた1年だったので、続けてきて良かったです」

木津さん「数回手伝いに来ただけの私でも、子どもたちの変化を感じました。久しぶりに来れた今日なんて、特に変化を感じてびっくりしています」

りえ子さん「子どもたちは私のこと“師匠”って呼ぶのですが、『師匠〜今日のご飯なに?』と尋ねるようになったんです。そういう瞬間に、毎日の生活の一部になったんだなと感じます」

カラフルカリフラワーがどんなものなのか、調理前の状態で皿に置いておきます。

木津さん「毎日のメニューはある程度前もって決めておいて仕込んでいるんですか?」

りえ子さん「事前に仕込んでおくのは味噌や糠漬けなどくらいで、買っておいた食材をベースに、その日の顔ぶれを見て買い足しに出かけたり、わりとライブ感で作っているかも」

木津さん「手伝っていると、子どもたちとりえ子さんの会話がまた面白くて!」

りえ子さん「横並びで料理したり何かの皮を剥いたり作業をしながらの方が、色々話しやすい時もあると思います。私は常に真正面で向き合う必要はないと思っていて、横並びで何かをしながらだからこそ、ぽろっと話せることは大人にだってありますもんね」

木津さん「たしかにこども食堂でも、大人たちが仕込みをしながらラフに喋っているときに色々な話をしていたりします。すごくふざけていたり、妙に真面目に話したり。初デートはカウンターがいいって聞くのはそれだからか(笑)」

子どもたちは嬉しそうに、自分たちで食べきれる量を器に盛りつけていきます。

木津さん「1年続けられたそうですが、これから新しくチャレンジしたいことってありますか?」

りえ子さん「食べるための調理を子どもたちと一緒にしてきたけれど、次のステップとしてこれからは食全体の話や文化などもっと深く広く“食”を伝えていけたらいいなと思っています。実験や遊びみたいなことを混ぜながら」

木津さん「楽しみながら学んでいけるって理想的。今年の初めにこども食堂で餅つき機を買ったんです。それでランチは関東風のお雑煮、ディナーは関西風のお雑煮に。『お雑煮くらべ』という絵本を子どもが持っていて、それを読んだときに面白かったし、調べるのが好きなのでやってみようかなと思い立って。そうしたら自分も楽しかったし、子どもたちも楽しそうで嬉しかったなぁ」

りえ子さん「うん。料理って創作でいいんですよね。自由に楽しく作って食べるのが一番だと思っています。究極、塩さえあれば何とかなるものなので」

この日のメニューは、春巻き(豚肉、キャベツ、白菜、にんじん、インゲン、ネギ、春雨)、卵焼き(甘め)、炒めもの(しめじ、小松菜、にんじん、黒胡麻たっぷり)、カラフルカリフラワー、糠漬け(きゅうりとにんじん)、酢の物(かぶ、大根、にんじん)に、デザートにみかん。野菜たっぷり!

木津さん「りえ子さんの“食育”への強い思いの理由とは?」

りえ子さん「未来で食に救われる場面が必ずくると信じているからかな。落ち込んでいるときに美味しいものを作ったり食べたり、誰かを食を通して元気にしてあげられたり。生きていく上でずっと何かを食べているんだから、“食”に興味を持つことで豊かさが変わるはず。このスクールで毎日食べたものやその思い出が、いつか心を包み込む日ももしかするとあるのかもしれないと思っています。豊かな人生に繋がっていって欲しいし、子どもたちにはその可能性が満ちているので、早いうちから“食”を楽しむ術を持ってもらえたらいいなと願っています」

子どもたちの盛り付けが終わったら、大人たちも同じものを食べる。木津さんはメインの春巻きに舌鼓。

木津さん「最初に手伝わせてもらったその頃は、まだざっくりと“こども食堂をはじめる!”としか考えていなかったんです。でも、りえ子さんと子どもたちの関係や、子ども一人一人に対するりえこさんの“食”を通したアプローチを見て、頭で考えていたことと、実際に多くの子どもたちに触れ合うことが良い意味でまた違っていて、シンプルに人間関係の場所なんだと感じました。

今、私は私のやり方で、来てくれている子どもたちや大人の方々とコミュニケーションをとっていますが、一緒に働く仲間たちは各自がそれぞれのやり方でコミュニケーションをとっていて、感じ方や話し方もみんな違っています。そういう風に、色々な大人がいて、色々な子どもたちがいるということはすごくいいなと思っています。

りえ子さんの“食”が健康な身体・心を育てる、という考え方がとても好きです。私に出来ることは、丁寧に調理をしてLOVEやハッピーが伝わる温かいごはんを子どもたちに食べてもらうこと‼  りえ子さん、これからも相談に乗ってください」

寺本りえ子さん
音楽アーティスト、TVCMなどのナレーターとして活躍中にケータリング、フードコーディネーターとして始動。発酵食を広める活動や季節の手仕事、スパイス料理、薬膳料理など「世界中のテーブルを笑顔に!」をモットーに教室、講演、レシピ開発やディレクションなどを務める。現在は、フリースクール「GIFT SCHOOL」の食育・ランチも担当。

昼食を全て食べ終えて、空っぽのお皿を見せにきた子ども。この後、おかわりを自分でさらに盛り付けていました。

GIFT SCHOOL
3~14
歳の異年齢混在のバイリンガルマイクロスクール。少人数でそれぞれの子どもに合わせた個別の学習、プロジェクトをベースとした集団の探求学習を行なっている。

 

GIFT SCHOOL公式サイト

photo&text:MAKI KAKIMOTO

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