フィンランドサウナで自然と一体に。1日3組限定の宿〈ume,yamazoe〉オーナーの梅守さんにインタビュー
Velnica.デザイナーの小林加奈さんが、未来に繋ぎたい日本のクリエイティブに注目し、今活躍するクリエイターたちを紹介する「Lady Holistic」。
今回ご紹介するのは、
〈ume.yamazoe〉
オーナー梅守志歩さん
大自然に囲まれた奈良県の山添村。ここに築100年以上の古民家をリノベーションして建てられた、1日3組限定の宿〈ume,yamazoe〉があります。そこは訪れた誰もが「幻想的なこの景色を独り占めできるなんて……」と酔いしれる空間。
日本に数件しかない本格的なフィンランド式のサウナが併設されていて、地元の方たちが届けてくれる季節の野菜を使った料理に感動し、そしてなにより、女主人である梅守志歩さんにもう一度会いたくて仕方がなくなる場所。「どんな人もそのままの状態で満たされて、心が優しくなれる価値観を共有したかったんです」と語る梅守さん。オープンから2年弱で、あっという間に予約が取りにくい宿となったストーリーと“これから”を伺いました。
性別や年齢、国籍、そして障がい。
全てを超えてフラットでいられる場所
「私は4人姉妹なんですが、20代のときに姉や妹に障がいや病気が降りかかり、看病やケアを通して、いつ人生がどうなるか分からないという思いや現場のどうにもならない憤りを感じた経験があって。そんな中、全ての方がフラットな状態で世界を見ることができる環境が増えてほしい、と思ったのがこの宿を始める原点になっています。
経営についてキャリアもない上、近隣の方との調整もあり、建築が完成するまでには2年半もの時間がかかりました。私が唯一上手にできたな、と思うのは何もないところから仲間を作ること! それは地元のおじいいちゃん、おばあちゃん、設計士やサウナのパイオニアの方たちと強い信頼を持って繋がっていけたこと。オープンして2年が経ち、多くのお客様にこの村や宿を好きになっていただくようになって、去年の終わりに、本当に私たちがやりたかったことに立ち返ったんです。
出た答えは、月1回ですが、障がいや病気があるご家族を無料でご招待すること。迎える側の人間が思いを共有できたり、何に困っているか? を想像できて包み込めるのは、私だからこそできること。いわゆる施設としてバリアフリーなわけでもなく、それこそ丘の上まで段差なんてたくさんあるけど、もちろん運ばせてもらいます!という“心のバリアフリー”を感じてもらいたいなと。健常者の方にも、気を遣わずに余暇を楽しめる選択肢があることを目指して前に進んでいきたいと思っています」
text:Kana Kobayashi(Velnica.)
小林加奈。 Velnica.デザイナー。1975年生まれ。てんびん座。B型Rh-。著書『リトルアトリエ ヴェルニカ』が発売中。