「人って変わるし、変わることは進むこと」東京から長野、ハワイから沖縄へ。吉川ひなのと語る移住ライフ
土と菌に囲まれたふたりの生活
—今回のインタビューは、沖縄、長野、東京からそれぞれリモートで。大きな窓を背に座る早坂さん。その背景には雪に包まれた壮大な森林が。一方で、ひなのさんはまるで夏! なキャミソール姿でおでまし。
H かずちゃん、逆光のはずなのに室内がすごく明るく見えるね。
K うちは天窓もあって、360度光が回るように設計してもらったの。私は暗いところが苦手だから、建築士さんには“光の家で”と伝えたくらい。森の中にいても光を感じられるように。
H どうして長野にしたの? 土地が決まってから、実際に家が建つまでどのくらいの時間がかかったの?
K 人によって全然違うと思うけど、私の場合は家を建てたいというアイデアは7、8年前くらいに浮かんでいたの。私、すごく冷え性で、冷えを治すために中医学やハーブを学んだり、色々模索していたけれど、そもそも暖かい家に住んだら全部解消するじゃん! と気づいて。調べていく中で、“パッシブハウス”という高断熱住宅に出会ったんだよね。効率的に陽の光を取り込んで、家の中で循環させて、エネルギーを極力使わずに暮らせる家があると。またそこで勉強をしていくと最後に森林の存在にたどり着いたの。パッシブハウスの始まりは、ドイツや北欧といった寒い地域で、森と人間の暮らしが近い。人が森林を管理して、その恩恵を受けるという暮らし方について、森林学者さんに教えていただくうちに、家を建てるなら森の中にしたいなって。
H 森には妖精がたくさんいるでしょ?
K そう、妖精だらけだよ(笑)。私がこの場所に出会ったのがちょうど3年前。友人夫婦が近くに住んでいて、北アルプスが見えて、湖があって、まるで日本じゃないような景色が広がっていたの。ここに住みたい! と思える土地に出会って、間伐からスタートして、家が建つまでには2年半ぐらいかかったかな。
H 家を建てるってその人自身が反映されるよね。昔、沖縄の久高島に行ったときに出会ったおじさんから、“菌”と暮らすために、発酵に最適な半地下の部屋を作ったっていう話を聞いたの。人間も健康になるし、環境にも優しい。わたしもいつか、菌の家を建てたいんだ。
K それでいうと、この家は下水道がなくて、浄化槽を使っているのね。家から出る排水は全て浄化槽に一旦溜まって、そこで微生物が分解してくれて、森に水を流していく仕組み。敷地の中に小川が流れているのだけど、その先には湖がある。そこに流れ着くと思うと、自分が使う洗剤ひとつにしても考えさせられる。海へ流れた水が、また雲になって、森に雨を降らせるわけだから、森で暮らしているとその縮図を体験させてもらえる日々です。土なんて菌の宝庫なわけだから、私の排水でいい菌を育ててやる! くらいの気持ち。沖縄だとEM菌があるじゃない? お掃除に使ったりしているよ。
H かずちゃん、EM使ってるんだ! ハワイでもEMがすごい使われていて、世界一汚いといわれたアラワイ運河もだんだんキレイになってきたの。わたしもEMが大好き♡
—ちなみにEMとは、「微生物による発酵の力で悪臭を消したり、土や川の微生物環境を整える善玉菌の集まり」とのこと。
K 沖縄にEMのホテルがあって、ホテルの漆喰の壁にはEMが混ざっていると聞いたの。それをヒントにして、うちの壁は漆喰の下に麻の炭を混ぜてもらったし、琉球畳の部屋を作ったりしたんだよね。
photograph: ©YUYA SHIMAHARA ©saikocamera ©AFLO
interview:HAZUKI NAGAMINE
otona MUSE 2025年6月号より
EDITOR
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