PEOPLE

梨花、7年ぶりの書籍が発売後即重版!
オトナミューズだけに話してくれた
「変わるわたし、変わらないわたし」

ミューズのカバーモデルとして創刊から変わらず時代を象徴する女性像を表現し続ける梨花。7年ぶりに待望の書籍を発売し現在の価値観を、心情を語ってくれました。今を生きる全てのミューズへ、エールになることを願います。

この2冊を作り上げることが
私自身を癒やすセラピーになった

 40代は、辛かったの。そんなことすら歯切れよく言い切る梨花さん。2年以上をかけた書籍を完成させ、制作期間を振り返る表情は晴れやかだ。 「なんで辛かったんだろうって、自分で人生を振り返ってみたんですけど、納得しちゃいました。重なっていたんですよ。出産して自分のアパレルブランドを立ち上げたのが38歳ごろ。東京に家を建てたのが40歳、そして41歳でハワイに移住。自分で決めたこととはいえ、不慣れなことが重なってしまった。本を作ることはそんな自分を整理する作業だったのかもしれません。書くということはのちに、セラピーなどに繋がった気がします、自分自身の。あ、でも大切なことだから伝えておきたいけれど。タイミングは人それぞれです、ということ。私は40代がものすごく辛かった。けれど30代が辛くて40代は楽になった方もいらっしゃるだろうし、本当に、人それぞれだと思うんです。30代40代は順調に楽しく過ごしたけど、50歳で辛さが押し寄せる人もいるでしょう。私はお世辞にも40代は楽しかったとは言えない。でももう49歳でしょ。今、この先は少しだけ楽に、楽しくなりそうな予感がしているんです」 やはり表情は晴れやかだ。2019年にブランドディレクターをスパッと退き、コロナ禍が到来。かねてから『2022年から新しいことをスタートする』と決めていた梨花さんも、当然、予定が狂った。なのに、晴れやかだ。 「この時間をどう過ごすかで、新たなインプットがあるんだな、って。ただここまで仕事をしない時期ってこれまでの人生、なかったんです。妊娠中でさえ、もっと仕事していた。母親業もあくまで仕事をしながらであって、専業主婦のように……お母さん友だちには『厳密に言うといつか仕事すると思いながら過ごしているあなたは、専業主婦ではないよ』って言われてすごく納得したんだけれど……全てが子育て、という時間はある意味、私にとって貴重でしたね。自分ではない誰かのため『だけ』に尽くして生きることを、したことがなかったから。ただその『誰か』は、自分の命よりも大切で。向き不向きで言うと私は良妻賢母=昭和の日本人的な価値観の、昔ながらのいわゆるいいお母さんに向いているタイプでは、決してないと思うの。それは今でも思う。けれどドップリ子どもに向き合って、毎日お弁当を作ってっていう毎日はとても新鮮で、ある意味私も成長できた気がするんです。これからの自分にどう反映されていくのかが、楽しみでもあるんです」

今の自分を自分が認められないかぎり
ありのままでいいわけがない

 書籍『わたしのユリイカ』には、10歳になる息子さんのお弁当にまつわる微笑ましいエピソードが登場する。カバーモデルとして長く第一線に君臨し、連日のようにめまぐるしく撮影し雑誌でテレビで街で、その姿を見ない日はなかったころより今、目の前にいる梨花さんのほうが自信に満ちているように感じる。 「いえいえ、今でもちょっとしたことに動揺する弱気な部分はありますよ。でももしかしたら、何かしらの自信はもしかしたら、あるのかも。そしてその自信はきっと、仕事で得たものじゃない。仕事をしていると、やっぱりどこか人からの評価とか、数値化とか、上とか下とか、あるでしょう。今は『自分の評価は、自分で決める!』って思えている……なんだろう、自分と『梨花』との間に差が、ないのかも。本を書き始めた当初まではあったと思うんです。『梨花』ってもっとこうあるべきじゃないか、もっとこうしたらいいんじゃないか、って、自分が『梨花』に理想を抱いた。そしていつしか、自分の中で理想像のほうが大きくなっていたんでしょうね」 トップモデルと持てはやされ、イベントを開催すれば記録的な数字を叩き出す。その経験は誰しもできるものではなく、その高みからの景色は梨花さんひとりで見るしかない。その誇らしさと、プレッシャー。 「もっと楽に生きたいという気持ちが昔からずっとあって。楽しく生きられるのも、才能だと思うんです。皆にどう見えているか分からないけれど、昔から応援してくださる方の中には、私のそういう性格を理解してくれている方もいるように感じるけど。私はストイックに一生懸命生きちゃう性質で、『べき』が多い。『モデルはこうあるべき』『母はこうあるべき』。でも年齢的にもそろそろもっと、楽に、楽しく生きたい。ただ結局、『わたしのユリイカ』のあとがきを今年書いているときに、『……一生懸命生きちゃうタイプの自分も、悪くないな』って思えました。そうやってしか生きていけないな、って。だって、自分で納得しないと先に進めないんだもの。例えば『ありのままで素敵だよ。何も変わる必要はないよ』と誰かに言ってもらえたとしても、自分が自分を素敵だと思えなければ、それが全て。誰かに『ありのままでいいよ』と言われて『そうかしら』って思える人は、それでいいんです。でも私は、自分が『変わりたい』『もっと素敵になりたい』と思っているときに『何が不満なの? そのままでいいのに』って言われても、全く心が動かないんです。自分が自分のことを今のままでいいって思えない限り、ありのままでいいわけがないの」

お弁当生活がもたらした
小さくて大きな幸せのこと

自分が自分を素敵と思えるように、ちょっとだけあがいて、ちょっとだけもがいて。書籍『What I'm doing 私がしていること73こ』には、梨花さんが学び、実践し続けている生活習慣や健康法、考え方が紹介されている。呼吸を整えること。思考の癖を解放すること。実際に愛飲するお水や使っているコスメの情報まで2年間かけて厳選し、更新し続けてきたことが伝わる、丁寧に作り上げられた一冊だ。変わりたいなら少しずつ変えていく、もっと自分を好きになるために。そうやって積み重ねてきたからこそ今もSNSの投稿ひとつでニュースになる美貌があり、私たちが憧れる存在であり続けられるのだ。その一方で、毎日息子さんがお弁当箱を空にして「ママのお弁当が一番美味しい!」と元気に帰ってきてくれることに、爪の先まで喜びで満たされる。「お料理上手な世のお母さんたちには、そんなの当たり前だよって笑われるかもしれないけれど」と照れながら、日々の生活の中で揺るぎない幸せを実感した2年間でもあったのだ。 「仕事とか関係なく、誰に何を言われる筋合いもなく、ただ人として一生懸命生きた時間だったから。変わりたいと願う部分は、もちろん今もあります。いつでもありますよ、そんなの(笑)。でも『そのあたりはもう、来世に期待かな~』という気持ちもある。そんなね、全部理想を目指しましょうなんて、無理ですよ(笑)」 あははと笑いながら冗談めかす姿はまさに、あれほど求めていた「楽に楽しく生きる」人の姿そのもの。変わりたい、変わらなきゃ、ともがき続けた過程とは別に、「変わるもの」があると実体験から受け入れたのだ。 「今回の書籍に通じるテーマでもあるかもしれないけれど。雨が、好きになったんですね。昔からずーっと苦手だったのに、しとしと降る雨を見ていると『頑張らなくていいよ』って言われている気がして。そんなふうに変えよう変えようと努力するんじゃなく、自然と変わっていくこともあるんですね。あとはやっぱり、経験値。辛いことが起きたとき『きっとこの経験が学びになる』って、自分やまわりの人を励ますことってあると思うけれど。本当にその通りだし、何より自分でそう『して』いくんです。これまでも辛いことを乗り越えて、今があって、あの経験があってよかったってことにして『きた』経験があるから、辛いことが起きたとき『きたきたきた、きましたね。今のコレ、経験値として成長させられるタイミングですね』って思える。それは年齢を重ねて、経験をしてきたからなのかもしれませんね」 真面目過ぎて、自分をごまかせない。不器用過ぎて、何かを始めるためには全てを捨てて全力で向き合わずにはいられない。そんな梨花さんが今、新たにスタートしていることについては「涼しくなったころにはお伝えできるよう、準備中です」とのこと。 「そうは言っても革命家じゃないから、新しいことって、そんなに特殊なことではありませんよ(笑)。モデルも、私が考えるこのままのモデル業でいいと言っていただけるなら続けさせていただきます。でも、どうかな。この書籍の完成までが一段落で。これから始まる新たなプロジェクトで、ここ数年の自分の成長をどう感じられるのか、どう活かせるのか、自分でも楽しみです」 雨の日でも、心の中は晴れやかで、眼差しの奥には希望が光る梨花さん。新たなプロジェクトについてお伝えできる日が、私たちも楽しみです。

『わたしのユリイカ』¥1,980 発行:SDP
梨花が本当に伝えたい言葉と、かけがえのない日常を切り取った写真で構成された104ページ。これまでの半生で「大切にしてきた言葉」や「自身の思想」「感じてきたこと」のありのままを、2年の歳月をかけて削ぎ落し厳選した渾身の一冊。読後に希望の光を感じる。

『What I'm doing 私がしていること73こ』¥1,980 発行:SDP
美しく健康に生きていくために、梨花が普段から取り入れ、行っている73のトピックスを梨花自身の言葉で紹介。最新の梨花スタイルが凝縮した一冊と言える。専用ブックケース入り『わたしのユリイカ』『What I'm doing 私がしていること73こ』セットは¥6,160。

photograph:YUKI KUMAGAI / make-up:UDA[mekashi project] / hair:ASASHI[ota office] / styling:TOMOKO KOJIMA / model:RINKA

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