PEOPLE

FRI.10.28
2022

作家LiLyから梨花へ愛を込めて

梨花

梨花、新しいシーズンの光。by LiLy

この日の撮影のために梨花さんが選んだのは、アライアのシックなネイビーのコートに白いソックスとメリー・ジェーン。かっこよさとモード感、それに永遠の少女性……。その全てが違和感なく同居している女性像を表現できるのは、梨花さんをおいて他にないのではないだろうか。今回は、そんな彼女の現在地を余すところなくお伝えするため、作家・LiLyさんに「カバーミューズ梨花」についてのテキストを特別に書き下ろしていただいた。

白いレースソックスにメリー・ジェーン。
華奢なからだがその重みごと引き立てる、
クラシカルなネイビーコート


「去年は髪をバッサリ切ってベリーショートにしたけれど、今は、伸ばした毛先に動きをつけて女っぽさを出してもいいのかも」と話していたニュンアンスボブが、しなやかにポージングを変えてゆく「モデル、梨花」の頰のあたりで軽やかに揺れる―その姿は、もう、まるで、レオンをきちんと魅了できる「オトナ年齢」へとやっと辿り着いたマチルダなのかと……。

映画『レオン』の中で、父親に張られた頰を赤くはらし、学校をサボってタバコを吸っていた10歳のマチルダは、誰よりも子どもでいることを疎ましく思っていたに違いなく、もしオトナの女性へと成長したマチルダを拝めるとしたら、まさにこんな姿になっていたんじゃないか、と夢を見るような気持ちで妄想しながらも、「モデルは服を見せる以上に“魂”勝負なものだと思っている」という梨花さんの言葉の意味がスーッと腹落ちしていくのを感じていた。モノトーンなスクールガール・ルックでありながら、どこかパンクで、梨花さんにしか出せないその空気感までもがマチルダチックだったから。

言い換えるなら、きちんとした格好をしていても滲み出る、こなれた不良感。フェミニンなミニドレスを身につけていてもカッコよく、きちんと年齢を重ねたアンニュイな表情をしているのに少女のような可愛さで。どの角度から切り取ってみても、突き抜けて垢抜けている。

梨花

そのような「オーラの源」を、
梨花さんは「魂」と言いあらわした。


40代で、もう一度コンサバに向き合ってみようと挑戦した時期があったけど、これはやっぱり私ではダメだと降りたのも同じ理由から。コンサバルックを最も綺麗に着こなせるのは、モデルの私ではなく、生まれも育ちもコンサバな生粋のお嬢様だと分かってしまったの」

魂は、目に見えないもののようでいて写真にまでハッキリと映るもの。装飾で誤魔化せるものであるはずもなく、その人の魂が放つオーラそのものが服までお洒落に見せてしまう。つまり「裸でもお洒落」なのがトップモデル。これは、その境地まで辿り着いた人、つまりはトップを走り続けてきた梨花さんにしかわかりえない、彼女自身の実感を伴う発見だ。

その言葉の重みもまた、
キャリアを重ねてきた
オトナにしか出せない魅力のひとつ。


「以前、ある雑誌で20代から60代まで、年代ごとにひとりずつモデルが登場するという企画があって。60代の方があまりにも素敵で……。こんなにカッコよくトレンチコートを着こなせる方は見たことがない、という感じ。袖のまくり方から何から何まで。風味というか。似合い方を熟知していらして。似合う=自分自身を知っている、ということはもう絶対で」

お洒落なオトナへの憧れをうっとりと語る梨花さん本人に対して、私は同じことを感じていた。自分のことを、その魂ごと知ることがファッションモデルとしての重要事項であるのなら、若さはもはやハンデでしかないのではないか、とまで。撮影を見ていて痛感してしまったから。まだ若くてきれいなだけのモデルでは、梨花には到底勝てっこない、と。

もちろん、既存の美しさの刷り込み(多くの場合、それは若さを伴う)から逃れることは誰にとっても難しく、日々年齢を重ねながらも雑誌のカバーを飾り続ける“舞台裏の苦労”は想像以上のものだろう。

撮影前からストイックにからだの調整に入るという話を聞いたときは、体型の維持ひとつをとってもまるでアスリートのようだ、と本気で唸った。見ている側からしても、同年代、もしくは年上のモデルの美しさへの感嘆は、純粋な憧れだけではなく尊敬を伴うものへと年々変化していく。ある一定の年齢を超えたあとは、ただただ普通に生きているだけで保てる美貌など何処にもないことを、誰もが身を以て知っているからだ。

「私は食べることが大好きだから、(体型維持は)特に大変で。撮影前は、まわりからの期待を裏切りたくない一心で頑張るんだけど、いざ撮影が始まったら、今度は自分が(自分のために)輝きたいというスイッチに切り替わる」

梨花

どう、今の自分を活かせるか。

「“執着”という言葉をあえて使いたいのだけど、私はカバーモデルを続けることに執着があって。他には(執着しているものは)そんなにないからね。私にとってカバー撮影はそれくらい特別なこと。前に事務所の社長から言われた“自分の価値は自分であげていきなさい”という言葉がずっと頭にあるの。10回の撮影よりも最高の1回を、という気持ちで(全力で)カバーに挑んでる。年々、本当に大変だけどね(笑)。でも、未来から見たら“40代って若かったなぁ”って絶対に思うだろうなってわかるから、今はその40代の最後の1年。そう思ったら、女性であることをもっと楽しみたいマインドに入っていった。
 
ベリーショートにしたときは、やっぱり髪型の影響で性格もよりストイックになるのね。今は、女っぽさを出してもいいかなって。それこそ昔は、男ウケなんていらない! って尖っていた時期もあったけど、今はそれも大歓迎だし(笑)、今はね、どんな褒め言葉もとってもありがたいの」

そう柔らかく語る梨花さんはとても楽しそうで、「40代はとても苦しい時期だった」と言っていたところから完全に“抜けた”としか思えないほどの輝きを放っていた。人によってその時期は違えども、長い人生の中には暗いトンネルというものは何処かには用意されている。ただ、それをくぐることでしか得られない「新しいシーズンの光」というものがあるのかもしれない。

今の梨花さんの、内側から発光しているかのような美しさを見ていてそう感じたことを最後に伝えると、「あぁ、そうなのかもしれないね!?」と目を丸くして心底ビックリしたかのうな表情に! その、天真爛漫なビッグリアクションから、感じやすい心(つまりは繊細さ)と、その心にいつも正直な性格(つまりは感性)をセットで見たように思った。

生まれながらに素直な人は、
魂の進化にもとても敏感だ。


「カメレオン」。私が梨花さんと初めて話したときに得た、第一印象。そのときの自分のモード/マインドが頭の天辺から爪の先にまで影響を与える人。―だから、ここはきっと、新たな色を放ちはじめた梨花さんの新章への入り口。楽しみ。とても楽しみ。だって、カバーミューズの進化は、雑誌のカラーさえ丸ごと染めなおすほどのエネルギーを持っているものだから。

梨花

コート¥546,700、ドレス¥311,300、インナースカート¥233,200(全てアライア/リシュモン ジャパン株式会社 アライア)、ソックス¥5,500(ピエールマントゥー/ステッラ)、その他スタイリスト私物

LiLy
作家。蠍座。N.Y.、フロリダでの海外生活を経て上智大学卒。著作多数。2児の育児に奮闘中。TwitterInstagram @LiLyLiLyLiLycom 本誌の連載をまとめた『オトナ白書』(小社刊)が好評発売中。

photo:SHUNYA ARAI[YARD] / styling:TSUYOSHI NOGUCHI / hair:ASASHI[ota office] / make-up:JURI YAMANAKA / text:LiLy / model:RINKA

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