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夏木マリさんが貫く、「自分らしさ」とは? 【後編】

夏木マリ
その表現は多岐にわたり、もはや肩書という枠に収めるなんてもってのほか。憧れと畏怖が混在した鮮やかな存在感を持つ夏木マリさんが、“自分らしさ”を分かり始めたのは40代に差しかかったタイミング。人から与えられたものではなく、自分でこれと決めた道を歩み始めてからのことだったそう。
前編はこちら

人生ってイメージですから。
たとえ漠然としていても、
そこに向かって動くようになる

夏木マリ

黒地にマゼンタピンクのよろけ滝縞小紋、黒とシルバーの細縞に唐辛子と赤蕪の刺繍名古屋帯、紫の三分紐※全て参考商品(全て雨庵)、陶器の帯留¥18,700(五福×雨庵/THE COVER NIPPON東京ミッドタウン)、[左手]ダイヤのリング¥506,000、[右手・人差し指]パールと蝶のリング¥528,000、[薬指]ダイヤのリング¥462,000(全てシンティランテ/イセタン サローネ東京ミッドタウン)、黒とネオングリーンの草履は本人私物

人生におけるポリシーとは? と尋ねると、「そんなに堅苦しいものじゃないけど」と前置きして、夏木さんはこう続けた。 「例えば、4年後のサッカーワールドカップのとき、私はどんな状態で応援しているのかな? と想像したの。車椅子に乗っていたくないなと思ったから、じゃあジムでトレーニングをしなきゃねって。普段から健康にも気をつけなきゃと思えば、お酒も控えるし、タバコだって吸わない。そうやって漠然とでいいからイメージを持つこと。すると人間ってそこに向かって動いていくし、イメージとつながる何かに対してのキャッチも鋭くなるもの。最短距離で辿り着こうとがむしゃらになると、楽しさや幸せを感じづらくなるから、イメージを持つくらいがちょうどいい。縛られすぎたらツライじゃない? 生きていくこと自体も大変なのに。人間なんて、一晩寝たり、美味しいものを食べただけでも、簡単に考え方が変わるもの。私なんて特にそんなタイプだから、美味しいごはんを食べれば、さっきまで悩んでいたのに『死にやしない』とケロッとする。私は、心のままに動物のように生きたい。イメージさえあれば、それが軸となり、毎日忙しくて心がブレまくっても、ちゃんと真ん中に引き戻してくれる。その程度のポリシーをベースにしつつ、プラスして“今日やれることは今日やる”ようにしています。誰だってそうだけど、今が永遠に続くわけじゃありません。そのときにしかない巡り合わせが人生にはあるし、今の世の中、自然災害や戦争、政治も経済も自分ではどうにもならない出来事が訪れるかもしれないから。そういった緊張感や危機感は、年齢に関係なく、持ち合わせたほうがいい」

人生はイメージよ。それだけでいい。
生きること自体が大変なんだから、
縛られるくらいなら夢や目標はなくてもいい。
イメージさえあれば、人間はそちらへ自然と向かう。
その過程の中で生まれるのが自分らしさ。

夏木マリ
40代のころ、次があるはずと諦めたことがあった。でも、二度目はなかった。その後悔が今でも夏木さんを突き動かす。 「ジッと待っているだけじゃダメなのよ。たった1ミリでも、四つん這いでもいいから動くこと。動いてすぐに自分のイメージ通りになるわけでも結果が残るわけでもなく、砂金を集めるようなものなんだけど、自分が動くことで、出会いがあって、“やりたい”が生まれる。この前、TOSHI-LOW(BRAHMAN)に、『姐さん、音楽活動頑張れてないじゃないですか?』と言われたことがあったの。何気ない一言だったんだけど、私なりに頑張ってやっているつもりだったから、まわりの目にはそう映ってなかったと思うとハッとして、心に火がついちゃった。メラッとね(笑)。もうひと踏ん張り、自分らしく歌をうたいたいと奮い立たせてもらう出来事でした」 インタビューが行われたのは、サッカーワールドカップの真っ最中。選手たちの激闘に大いに感化されたと夏木さん。 「私もピッチに立ち続けなきゃね。それが生きるってことじゃない?」
夏木マリ

夏木マリ
1973年デビュー。演劇で活躍の場を広げ、1993年に自身が企画・構成、演出を手掛け、出演までする舞台『印象派』をスタート。2023年はデビュー50周年、『印象派』30周年、支援活動「One of Loveプロジェクト」15周年、清水寺奉納パフォーマンス「PLAY×PRAY」が10周年を迎える。2023年1月期ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』(毎週火曜22時〜TBS系にて放送)に出演。

オトナミューズ2月号「貫け!自分らしさ」のトップを飾ってくださった夏木マリさん。次回は木村カエラさんが登場します。お楽しみに♡

photograph:HIRO KIMURA[W] / styling:YOKO AKIZUKI / hair:SHOTARO[SENSE OF HUMOUR] / make-up:SADA ITO[SENSE OF HUMOUR] / interview:HAZUKI NAGAMINE

otonaMUSE 2023年2月号より

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