ド真面目で子どものように無垢で繊細で脆い。俳優・野波麻帆さんが服で紐解く「本当の長澤まさみ」の姿
屈託なく笑う無垢な一面を持ちながらも
本質は真面目で、とても繊細。
―――今回のスタイリングは、野波さんのなかで描いている長澤さんのイメージが投影されているように思います。
先程も少しお話しましたが、まーちゃんにはずっと、本当の彼女の姿をもうちょっと見せていいんじゃないかと、とくにこの3~4年いつも話していました。俳優・長澤まさみは「東宝シンデレラ」という大きな看板を背負いつつ、たくさんの作品のなかで主演という想像を超える大きなプレッシャーを抱えて仕事をしています。パブリックではガハハと笑う、明るい正統派美人というイメージが強いと思うのですが、私のなかのまーちゃんは、“ド”がつくほどとっても真面目で、とてつもなく繊細で、明るい彼女からは想像できないくらい陰な部分もあるんです。
あの少年のように屈託なく笑う、小学生のような純真無垢な一面も持っているのですが、彼女の本質はそれを思うと心がぎゅっと切なくなってしまうくらい、繊細で脆い。でも、そこってなかなかパブリックには出ていなくて。私のなかでの長澤まさみは、もっと少年のような無垢さだとか、陰と陽の部分の両面を持ったアンバランスな人だと思っています。その部分をもっと見せていいんじゃないかとずっと思っていました。
―――今回の撮影では今まで見せたことがない、長澤さんの本質を表すような新しい一面を見せていただいたように思いますが、そのコンセプトはどのようにして決まったのですか?
まーちゃんと話していたとき、彼女が自分のパブリックイメージが分からないと言っていたんです。自分のことって、自分ではなかなか分からないんですよね。そのとき、「イメージを変えたいけど、どうしたらいいか分からない。でもここ最近、腑に落ちないというか、何か分からないけど、しっくりこないことがある」という話もしていて。じゃあ少しずつでも変えていった方がいいかもしれないね、という話をしていたのです。彼女の真面目な性格がゆえに、今までそういうことを言えるチームをあまり持っていなかったみたいで。自分のことを自分発信できる性格ではなかったんですよね。みんなが求める長澤まさみでいることが正解なんじゃないかと。チームでディスカッションしながら作るというよりも、みんなが作る長澤まさみを演じていたんじゃないかと思います。
でも、20代だったらそれでよかったかもしれないけれど、30代になり、これから先の人生を歩んでいくなかで、もっと自分の好きなことや自分のやりたいことをちゃんとまわりに伝えるべきだし、自分の気持ちを自分で声に出していかないと、今後の人生、ひとりの人間としても、俳優・長澤まさみとしても、あなたは楽しくないじゃない? ということを伝えたんです。そしたら彼女もどこか腑に落ちた部分があったみたいで。じゃあどうする? どうしたい? と聞いてみたら、彼女のビジョンを「こんなのはどうかな、こうしてみたらいいかも!」と、話してくれたんです。
―――野波さんの、長澤さんへの愛をとっても感じます。すごいいいチームだなって。野波さんじゃないと、今回の企画は実現しなかったんじゃないかと。
そう言っていただけて嬉しいです。本当に大好きなんです、彼女のこと。不器用なほど真面目なところも、弱いところも、全部ひっくるめて。ちょっとだけその荷を軽くしてあげたい。役柄ではなく長澤まさみで人前に出るときは、もう少し楽しく、肩の力を抜いて、自分らしくいることができればいいなあと。カッコよく、愛くるしく、凛々しく、優しく立っている長澤まさみであってほしいし、その姿が私にはもう見えているんです。
photography:SHUNYA ARAI[YARD] styling:MAHO NONAMI hair:RYOJI INAGAKI[maroonbrand] make-up:KOTOE SAITO styling cooperation:RANKO ISHIBASHI model:MASAMI NAGASAWA videographer:MANA SHIRAISHI