「関わる作品の価値を高めることで、現場の状況も変わる」Netflixシリーズ「さよならのつづき」主演・坂口健太郎が語る俳優としての現在地
2024年最後を飾る話題のラブストーリー、Netflixシリーズ「さよならのつづき」は11月14日配信スタート!
坂口健太郎が、「そして、生きる」の脚本家・岡田惠和×有村架純と再び組んだNetflixシリーズ「さよならのつづき」が11月14日より配信開始(全8話)。
最愛の恋人・雄介(生田斗真)をプロポーズ当日に事故で失ったさえ子(有村架純)。雄介の心臓を移植され、一命をとりとめた成瀬(坂口健太郎)。2人は偶然出会い、意気投合するが、さえ子は成瀬に亡くなったはずの雄介の面影を感じるように。一方成瀬も、移植後に自分の身に生じた変化に戸惑っていた。「移植後の記憶や技能の転移」をテーマに、運命に翻弄される人々の切ないラブストーリーが展開する。
オトナミューズでは、坂口健太郎にインタビュー。彼が「難しい」と語るラブストーリー独自の表現方法や、脚本開発時から参加したという本作の制作環境を経て生まれた今後の目標など、俳優としての現在地を語っていただいた。
――坂口さんは以前、「ラブストーリーは多くの方が経験する恋愛を描いていて、観る側が自分を投影するからこそ難しい」と仰っていましたね。
坂口健太郎(以下坂口) 全く違うジャンルの作品に参加したときに、改めてそう発見しました。たとえば「普通の人のお芝居をするのって実は一番難しい」とよく言われますが、普通の定義自体が難しいなかで、愛情は最も身近で一番ちゃんと定義できる事柄かと思います。愛情の向け方、もらい方、応え方をどういうものと捉えているか、各々の中である程度の答えがあるような気がして。
僕たち俳優はある程度ストーリーに則って動きますが、セリフを言って次のセリフを吐くまでの間(ま)や表情が最も大事な場合もよくあります。つまり「いまこう思っている」をどう表現するかで質がまるで変わってくるなかで、感情の機微が見えやすいラブストーリーはより微細な表現を求められるから難しい、と感じるようになりました。
――タイムリープを描いた『君と100回目の恋』や相手に触れられない『今夜、ロマンス劇場で』ほか、“ハードル”を描いたラブストーリーにも多く出演されてきました。
坂口 昔とあるプロデューサーさんに「坂口くんには何かを背負わせたくなる」と言われましたが、僕と真逆だからだろうとは受け止めています。僕はハッピー野郎というと言い過ぎかもしれませんが(笑)、テンション的には「みんなが幸せで楽しければいいじゃん、元気でいればOK!」というタイプです。ラブストーリーは個人的に好きなジャンルですし、オファーをいただくのはすごく嬉しいですが、根がそんな自分にしんどい役をさせたいと皆さんが思うのは、自分ではわかっていない何かしらの根拠があるんでしょうね。ただ、正直を言うと自分の感覚で「俺に似てる」と思う役自体がこれまでなかったようにも思います。台本のなかにはその人の人生があり、たとえば職業が前に演じた役と重なったとしてもみんなそれぞれ異なる人生を歩んできていますから。
自分が台本を選ぶときに何をもってチョイスをするかというと、その役のセリフや持っている感覚をまず僕自身が愛せるかどうかが強くあります。仮にどんなに非道な役だったとしても、最終的に肯定してあげられるのは自分しかいないと思いますし、100%理解することは難しいけれど肯定はしてあげたいという気持ちが根底にあるなかで仕事をしてきました。
――ラブストーリーが好きというのは、観る側としてもでしょうか。
坂口 そうですね。ただ、パッと選びがちなのはクライムサスペンスです。最近だと、Netflixシリーズ「殺人者のパラドックス」はとても面白かったです。あとはイ・スンギさんとイ・ヒジュンさんが出演しているドラマ「マウス~ある殺人者の系譜~」。ソン・ガンホさん主演の映画『殺人の追憶』を久しぶりに観返して「やっぱり面白いな」と感じたり。いまがそういうモードなのかもしれません。
Interview & text:SYO
Photograph:KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
Styling:TAICHI SUMURA[COZEN inc]
Hair & Make-up:HIROSE RUMI