「関わる作品の価値を高めることで、現場の状況も変わる」Netflixシリーズ「さよならのつづき」主演・坂口健太郎が語る俳優としての現在地
――「さよならのつづき」は長期ロケだったかと思いますが、撮影期間中の気分転換にそうした作品をご覧になるのでしょうか。
坂口 どちらかというとオフのときです。1日や2日まるまる撮休だったら観ますが、たとえば早めに現場が終わって夜に時間が空いていても、変に引っ張られてしまってもよくないので観ないようにしています。
昔は小説やエッセイ含めてさまざまな本を読んでいましたが、あるとき小説のセリフを覚えてしまったことがあって。同時にいろいろな作品を並行してやっていくなかでセリフ覚えがかなり早くなったのですが、読んでいるものや観ているものも無意識にインプットしてしまうのは仕事に支障をきたすと思い、分けることにしました。その当時はお医者さんや弁護士の役をやっていて、勉強のためにも医療小説や法廷小説を読んでいたら変にリンクしてしまって「あれ? こんなセリフあったっけ?」と思ったら小説のセリフだった――というようなことがあり「一緒に読まない方がいい」と決めました。
――そんな事情が! しかし、複数作品を縫うことも含めて、坂口さんはノンストップでお仕事をされていますよね。「今までは“休みはいらない”という感じだった」とも話されていましたが、その気力はどこから来るのでしょう。
坂口 僕はとにかく現場が好きで、ずっと現場にいるんです。ロケ場所だったらカメラマンや監督とずっと喋っていたりするので、それが気分転換になっているのかもしれません。「こんなに現場にいる人はあまりいない」とよく言われますが、僕にとっての「楽屋に戻って休憩しよう」が現場なんでしょうね。
現場以外の気分転換でいうと、今回は小樽でずっと撮っていたので、街の方々に本当によくしていただきました。街を歩いていて声をかけられたら昨日一緒に飲んだ人――ということもあり、そういったことで気分転換していたのかなと思います。
――確かに『パレード』の撮影現場にお邪魔した際、極寒のなかでも坂口さんはスタッフの皆さんと談笑されていました。
坂口 あれはさすがに寒すぎました(笑)。これはちょっと後付けでもありますが、撮影が早く進めば進むほど、監督が「もう一回」と粘れる気がするんです。きっと「あと5分あったらこっちのパターンも試してみたかった」という想いは、多くの監督にあるでしょうから。
僕が思う最悪は、編集のときに監督が「あれも撮っておけばよかった」と後悔すること。監督が撮りたい画のためなら多少現場が押すのは別にいいと僕は思っていますが、巻けるのに越したことはありません。僕が現場にずっといることで少しでもセッティングの時間を短縮できたなら、監督の「もう少し」を実現できる可能性や選択肢が広がります。基本的には「楽しいから」で動いていますが、そういう意図も頭の片隅にあるかもしれません。
これは僕の個人的な感覚ですが、主演が撮影自体を楽しんでいると現場の雰囲気もいいし、みんなが楽しんでくれるような気がしています。節度を守って監督に言われたことを100%やるのも大事なことですが、僕は現場も作品もどっちもいいものにしたいです。
Interview & text:SYO
Photograph:KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
Styling:TAICHI SUMURA[COZEN inc]
Hair & Make-up:HIROSE RUMI