【俳優・中川大志インタビュー】大河ドラマ出演と並行して監督業に挑戦。『アクターズ・ショート・フィルム3』「いつまで」で最年少組監督デビュー
俳優部でも、裏方でもいい。
エンターテインメントを作ること自体が好き
予算、撮影日数、オリジナル脚本、監督本人が出演する。これら同じルールを共有した5人の俳優が、25分以内のショート・フィルムを制作する、WOWOW独自の企画『アクターズ・ショート・フィルム』。その第3弾となる『アクターズ・ショート・フィルム3』が、2月11日(土)よりWOWOWプライムで放映、WOWOWオンデマンドで配信開始になります。これまでも旬の俳優がそれぞれの視点で作品作りに挑んできましたが、今回は最年少組の中川大志さんが参加。「いつまで」を発表しました。友人の結婚式で再会した高校時代の親友3人、松尾(井之脇海)、西田(板垣瑞生)、荻原(林裕太)は、電車で乗り過ごして終点駅に。タクシーもなく、宿もない田舎町を、それぞれの悩みを打ち明けながら夜明けまでやり過ごそうと歩き始めるのだが……という物語です。
――この『アクターズ・ショート・フィルム』の企画は、オファーの前からご存知でしたか?
中川 WOWOWがこういう試みをしていることは、ネットニュースなどで取り上げられた記事を読んで存じ上げていました。でも、まさか僕にお声掛けいただくとは……。
――思っていなかった?
中川 はい、全然。でも、本当に嬉しかったです。じつは、監督業や制作の現場仕事には興味があったんですよ。それをあちこちで言ってたので、どこかで知ってくださったのかな。いつか挑戦してみたい、と思っていたことが、こんなにも早く実現するとは思わず、お話をいただいたときは嬉しさが勝りましたね。
――子どもの頃から表舞台に立ってらっしゃいますが、裏方仕事に興味をもたれたきっかけは?
中川 きっかけはないんですけど、「エンターテインメントを作る」ということ自体が好きなんですよね。もちろん、芝居をすることは好きなんですが、俳優部にこだわる、ではなく、エンターテインメントを作る仕事だったらなんでもチャレンジしたい、という気持ちがあったんです。子どもの頃から、映画を観たらメイキングも見たい、という気持ちがありましたし。小学校の頃にこの業界に入って現場を経験してきましたが、芝居のおもしろさとともに、現場の裏側を見られる楽しさも同時に味わってました。プロフェッショナルな大人の仕事を間近でみて、みんな一丸となってものづくりをしていく作業にワクワクしてたんですよね。
■俳優じゃなくても現場ならば!
――監督でなくとも現場のスタッフになってみたかったんですか?
中川 そうです。撮影機材にも興味あるので技術部でもいいですし、もちろん俳優部でもいいですし。監督はその頂点だからもちろんやってみたかったんですよ。
――実際にやってみていかがでした?
中川 想像はしていたものの、すごい大変な仕事でしたね。とにかくやることが多いし、決断することがたくさんある。いろんな部署をたばねるだけじゃなく、ジャッジを下す立場だから、時間との闘いを実感しました。僕自身は普段、優柔不断なほうなので、どんどん決めていかなきゃ進まない、という状況は苦しかったですね。
――決めごとで一番悩んだことは?
中川 キャスティングでした。この3人(井之脇海、板垣瑞生、林裕太)のバランスが絶対に必要で、それが全てだと思っていたので、彼らのキャスティングにこだわりました。でも、スケジュールなどの調整でかなり……。当然のことではあるんですけど、こんなに調整するのが難しいのか、と思いました。
――しかも、ほぼ夜のシーンですもんね。
中川 撮影は2日間とルールで決まっているので、そこにはめるのも本当に大変。夜中撮影して朝を迎え、というのを2日間集中的に。
――撮影はいつごろ?
中川 昨年の10月です。大河ドラマが撮了したあとですね。ロケハンとか脚本などの準備はずっと前からやっていて、それこそ大河をやっている間も同時進行していました。
監督業ではより、自分のデリケートな部分が出る。
それをやろうと決めていました
■実体験? じゃないですよね?
――物語の着想はどこから?
中川 過去2回を含めて『アクターズ・ショート・フィルム』の監督で僕が最年少組なので、若いエネルギーがあって、今の僕にしかできない物語、座組でいきたい、というのが最初にありました。そこで、キャストはみんな僕と同世代、脚本も同世代の増田嵩虎さん(『間借り屋の恋』で監督デビューした新鋭作家)にお願いしたんです。じつは僕、高校時代に同級生とお遊びレベルで映像を撮影して編集して、っていうことはやってたんですよ。そのテンションの延長線上でやってみたかったんですよね。それで高校時代の同級生たちに思いを馳せて、今の20代半ばの僕たち……少年と大人の間にいる世代の話にしようと思ったんです。
――まさかとは思いますが、実体験じゃないですよね?
中川 それはないです(笑)。でも経験上、こういう予期せぬハプニングが起こるときって、たいがい仲間同士で集まった日だったりするんですよね。そういうことって、時間経ってからも想い出として残っているもの。それでこの物語になりました。
――井之脇さんたち3人はこの脚本を読んでどう感じられてました?
中川 みんなで共感して共有できるんですが、言語化が難しかったですね。絶妙な空気感や距離感みたいなものを表現しようとしていたので、僕が監督としてちゃんと言語化して指示しないといけないという壁に……。監督ってこういう部分が難しいな、と感じました。
■クリエイターとしての可能性
――ちなみに、『アクターズ・ショート・フィルム』の過去作を観てどう感じました?
中川 作り手のカラーが出るんだな、って思いました。もちろん俳優部でも色は出るんですけど、よりそれが濃く、人柄が出てくるものなんだ、と感じました。たとえるなら、見ちゃいけないデリケートな部分がちょっと垣間見られる感じ? ちょっとドキドキしますよね。
――それはとりもなおさず、中川さんの作品も……。
中川 そうなんですよ! 自分のデリケートな部分が出ちゃうんですよね。ナチュラルな部分、かっこつけていない素直な部分が出てきてるのかな、と自分でも感じてます。それをやろうと決めていたので、うまくいったんじゃないかな。
――短編を撮ったら次は長編、っていう欲が出たんじゃないですか?
中川 いやー……どうでしょう。今回やってみて分かったのは、キャスティングや脚本とか決まってから肉付けしていく作業は楽しかったんですが、全く無の状態から何かを生み出すクリエイターの作業が本当に大変だったんですよ。長編はもちろんいつかやってみたいんですけど、それにとりかかることができる時間と余裕がちゃんとあるときに取り組みたいですよね。海外の役者さんたちは、自分でプロデューサーも務めたりしてますよね。監督や役者など、部署にこだわることなく、なにかでエンターテインメントを作り続けていくことは可能なんだ、ってことを、今回の経験で知ることができたのは収穫だと思っています。
特別上映&監督登壇イベント
2月18日(土)、19日(日)、23日(木・祝)
上映劇場
ユナイテッド・シネマ豊洲(東京)
シネマ・ジャック&ベティ(神奈川)
センチュリーシネマ(名古屋)
出町座(京都)
第七藝術劇場(大阪)
※リモート登壇も含む
NEWS
昨年11月に上演された中川大志さん主演の音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』がWOWOWライブ、WOWOWオンデマンドにて3月25日(土)18:00より放送
写真:黒豆直樹、 ヘア&メイク:堤紗也香、スタイリスト:Lim Lean Lee、取材・文:よしひろまさみち