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「愛する人と生きるためには?」今月のシネマミューズは映画『ザ・ホエール』出演のホン・チャウ

『ザ・ホエール』ホン・チャウ

Hong Chau/ホン・チャウ 1979年6月25日、タイ生まれ。2006年から俳優として活動し、ドラマ『ビッグ・リトル・ライズ セレブママたちの憂うつ』(2017年)や映画『ダウンサイズ』(2017年)で注目を浴びる。

愛する人と共に生きるためには?
『ザ・ホエール』

今年のアカデミー賞で、最優秀主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザー。その主演作『ザ・ホエール』では、毎日数時間特殊メイクを施して、自力で歩くのが難しいほど太ってしまった男チャーリーを演じ、見事スター街道に返り咲きを果たした。ボーイフレンドとの恋に落ちたことで、妻子との生活を放り出してしまったチャーリーが、そのボーイフレンドを亡くした苦しみから引きこもり、過食に。やがてひとりで生活できないほど太ってしまい死期を悟った彼は、心残りだった娘との関係を取り戻そうとする......。そのチャーリーを日ごろからサポートし、心身共に彼の支えとなる彼の親友リズを演じたホン・チャウは、この作品を「誠実さと受容を描く物語。人が生きていくためには、絶 対に必要だと思うけど、実際それに正面から向き合うことは容易なことではないから」と語る。 「サミュエル・D・ハンターの生み出した原作戯曲は、人が誠実に生きる困難さを描いたものです。チャーリーの親友リズは、彼をいろいろな面で手助けしているんだけど、彼にとって一番危険な行為(主に過食)を助長してしまっているところもあるんです。たとえ、それが彼を愛するがゆえに行っていることだったとしても、よくないことですよね。とはいえ私たちの誰もが、大切な人のためなら、まずいと思ったことでも見て見ぬふりをしてしまうことってあるんじゃな いでしょうか」
『ザ・ホエール』ホン・チャウ
食べるのをやめようとしない、病院にも行こうとしないチャーリー。彼に対してそれをけしかけるリズは、看護師という立場ながら決して無理強いはしない。それどころか、フライドチキンを食べたいと言われたら、彼に渡してしまう。複雑な心境だが、自分がリズの立場だったら......と考えると、それを批判することはできないだろう。チャーリーの部屋の中だけで進行する物語だけに、芝居の調整はひと苦労。リハーサルに際しては「3週間も時間を取ってくれた」という。 「これだけの長い時間をリハーサルに費やしたおかげで、肩の力を抜くことができました。そうじゃなきゃ“ダーレン・アロノフスキーの映画だ”とか力んでしまったと思う。リラックスしてリズに向き合ったおかげで、オリジナルの戯曲で語りたいことも吸収できたんです。読み取らねばならないことが多かったし、映画化に際して大量のセリフ...... 本当にこの3週間は非常に重要でしたね」 この作品を通して、何を感じ取ってもらいたいか? 「誰の命にも限りがあることに気づかされる作品だからこそ、愛する人には愛している気持ちを伝えることが大事。そして、愛する人と一緒にいるために自分をいたわることが大切だと感じてもらいたいですね」
『ザ・ホエール』ブレンダン・フレイザー

story パートナーを亡くしてから引きこもりになり、ひとりでは歩けないくらいの肥満になってしまったチャーリー(B・フレイザー)。親友のリズ(H・チャウ)の助けを借りて、なんとか生きている彼に死期が迫る。そんなとき、彼は娘との再会を求めるのだが......。

監督:ダーレン・アロノフスキー/出演:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、サマンサ・モートン ほか/配給:キノフィルムズ/公開:4月7日より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー中

text:MASAMICHI YOSHIHIRO 
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