よしひろさん、「きのう何観た?」
『老ナルキソス』
ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ〜。
『老ナルキソス』
★ナルシシズムに悩まされている方へ★
人は多かれ少なかれ自己愛があるもんですが、ナルシシズムまでいっちゃうとなかなか厄介なもんです。いや、それが転じて福となす人もいるのよ。芸能のお仕事している人とか。逆にそうじゃなかったらやってらんないわよね。でも、一般的な生活をしていると過度なナルシシズムって邪魔でしかないのよ。社会生活と折り合いつかないんだもん。プンスカ。ということで、それを極めて老いてしまった人がどうこじれてしまうのか、ありありと描いた『老ナルキソス』をご覧くださいまし。
これ、もともとは短編映画だったものを長編化したもの。ナルシシストの主人公で、かつての美青年絵本作家・山崎が、ウリセンの美少年レオくんと出会い、弾ける若さと美貌に惚れ込んじゃう、というのが短編版。で、長編版はもっと踏み込んで、なぜ山崎がこじれた爺さんになってしまったのかという過去エピソードと、レオくんの今どきゲイの恋愛事情をプラスしているのね。
マジ見事。生まれながらにしてのナルシシストにして、生涯恋愛はしないで自分だけを愛することを決めた山崎爺さんがこじれまくった理由に「なーるほど」なのよ。それとともに、恋愛や家族に対する価値観の世代間ギャップが描かれているので、あらゆる世代の方に観てもらって、自分の感性を計るみちしるべにしてもらえる傑作。ゲイ&同性婚がテーマの作品なので「関係ねーわ」って思う人も多いかもしれないけど、こういう見方をしたら自分ごとに思っていただける……と願っております。
よしひろまさみち
オトナミューズのカルチャーページ編集担当&映画ライター。おバカなコメディからおマジメ社会派まで幅広くカバー。ほんとにおもろいもんしか紹介しません。