人類初の月面着陸は「フェイク」!? 映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』は陰謀論×ロマコメのハイブリッド

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ~。
よしひろさん、「きのう何観た?」
『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』
story アポロ計画が失敗続きで宇宙開発への関心が薄れていた1969年。大統領側近はそれを危惧し、PRのプロ・ケリー(S・ヨハンソン)をNASAに雇い入れ、人類初の月面着陸のイメージ戦略を立てる。それは、月面着陸のフェイク映像の制作となり……。
監督:グレッグ・バーランティ/出演:スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム、ジム・ラッシュ ほか/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー中
★陰謀論を信じていない人へ★
根も葉もないお話なのに、なぜか信じてしまう陰謀論ってありますよね? オカルトブームだった20世紀末は、おもしろがって信じている人が多かったけど、ちょいと最近のそれは……(以下自粛)。そんな数ある説の中でも、昔からまことしやかにささやかれていた「アポロ計画の人類初の月面着陸はフェイク」。この説を逆手に取って、コメディにしちゃったのが『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』ですのよ。おもしろかったのでおかわり。もちろんフィクションよ。
スカジョさんが演じる凄腕PRケリーが、失敗続きで崖っぷちのNASAに入り込んで、国家の威信をかけたプロジェクトを嘘でもいいから成功に導く、というめちゃくちゃなお話。人類初の月面着陸を目指しつつ、なんかあったときのために地上でその映像を撮っておきましょ、っていう超軽いノリ。フィクションにしたってええんか、これで!? と思うんだけど、ここで恐ろしいと思うのは、あたしらが吹き込まれている「あれはフェイクだ」という陰謀論。なんだか本当に見えてきちゃうのよね~。おっそろし。実際にこんなことあったとしたら、間違いなく証言者出てくるでしょうに……ということを頭の片隅に置いといてね。そういう話じゃないのは、観てるうちに分かるから。
しかもですよ、ここまで例の諸説がベースになっている作品が陰謀論に傾いてないのは、フェイク映像を作ろうとするケリーと、それに真っ向から反対するNASAのエンジニア・コールのロマコメに仕立ててあるから! きゃー、00年代を代表するイケメンと美魔女が恋ですよ! おまけにコメディ! この手のコメディ最近なかったから、そっちに首ったけ。ライトなノリで楽しんじゃって~。
スカジョさん、スーパーできるPR女史役です
これがフェイク動画撮影現場!※フィクションです
胸熱お仕事コメディとしても、陰謀論パロディとしてもおもろいですのよ
WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。