CULTURE

【短期集中連載】
よしひろまさみちが
アカデミー賞をまじめに予想!vol.2
「授賞式前に日本公開される注目作」の巻

発表されましたねー、今年の米国アカデミー賞候補。季節柄~ということで、映画ライターのよしひろまさみちがめちゃまじめに分析(本職っぽいでしょ?)。連載2回目は、3月28日の授賞式の前にいち早く日本公開される作品をご紹介。 アカデミー賞って、2月とか3月に授賞結果が出て盛り上がるけど、日本の劇場で観るのはずっと先……(遠い目)、という時代が長く続いておりました。が、今年は違いますのよ。なんと、主要賞の候補作のいくつかが、劇場公開中、もしくはちょっと待てば劇場で観られちゃう! 今公開してるもんはとりあえず観て、授賞式の直前公開っていう作品は駆け込みで観て! ということで、それらを分析して、どれにしよっかな? って迷う皆さんへのヒントをお知らせします。 『コーダ あいのうた』は助演男優賞? まず手堅く観てもらいたいのは3部門で候補入りの『コーダ あいのうた』。これ、フランス映画の『エール!』のリメイクなんですね。だから脚本賞ではなく脚色賞の候補。両方観ると分かるけど、フランス版よりもエンタメしてて感情移入しやすいのよね。ただ、賞の行方に関しては「リメイク」ってのが大きく響くので、作品賞と脚色賞は難しめ(あーんど、この作品は北米ではAppleTV+配信作というのも反作用を起こす原因)。おそらく助演男優賞は確実です。なぜなら、耳が不自由なお父さんフランク役を、ろう者の俳優トロイ・コッツァーが演じているから(彼だけ候補入りってのが残念でしたわ)。

作品賞、助演男優賞、脚色賞『コーダ あいのうた』
story 海辺の町。両親と兄と暮らす高校生ルビー(E・ジョーンズ)は、一人だけ耳が聞こえることから家族の“通訳”として育ってきた。そんな彼女が、合唱部の先生に歌の才能を見いだされ、名門音楽大学への受験を勧められるが。

監督:シアン・ヘダー/出演:エミリア・ジョーンズ、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ ほか/配給:ギャガ/公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー中 ©2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

リメイク作品は不利? アカデミー賞主要部門は、リメイク作品や配信作品への風当たりが強いのよね。なんせ「オリジナルの作品」を評価したい、ってのがアカデミーの思いでございますので。その点でいうと、『ウエスト・サイド・ストーリー』や『ナイトメア・アリー』もリメイクなので、作品賞や監督賞はかなり厳しいかな~。とはいえ、どっちもオスカーを持っている巨匠監督の作品だけに、別の部門ではとれそうな予感。『ウエスト・サイド・ストーリー』でほぼ当確なのはアリアナ・デボーズの助演女優賞。あの「アメリカ」のシーンを観たらあげたくなるってば! この部門だと対抗馬は『ドリームプラン』のアーンジャニュー・エリスと『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のキルスティン・ダンストね。

作品賞、監督賞、助演女優賞、美術賞、撮影賞、音響賞、衣装デザイン賞『ウエスト・サイド・ストーリー』
story 1950年代、NY。ウエスト・サイドに集まる移民の中でも、差別や貧困に苦しむ若者のグループ対立は激化していた。そんなある日、ポーランド系のトニー(A・エルゴート)は、プエルトリコ系のマリア(R・ゼグラー)と出会い恋に落ちるのだが……。

監督:スティーヴン・スピルバーグ/出演:アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デヴォース、リタ・モレノ ほか /配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/公開:現在、全国ロードショー中 ©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

授賞式直前に公開される『ナイトメア・アリー』も超いいのよ~。ぶっちゃけオリジナル版よりずっといい。だけどトロたん(ギレルモ・デル・トロ)、前作『シェイプ・オブ・ウォーター』で4つもオスカーとってるからなー、っていう感情も動くでしょうね。かなり厳しいけど、可能性があるとしたら撮影賞か美術賞かなー。

作品賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞『ナイトメア・アリー』
story カーニバルの一座に入り下働きを始めた青年スタン(B・クーパー)。野心に満ちた彼は、読心術の使い手からスキルを盗んで独立。売れっ子興行師として出世するのだが……。

監督:ギレルモ・デル・トロ/出演:ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、 ほか/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/公開:3月25日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー ©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

オリジナル脚本の作品賞候補作も公開! さて、オリジナルな作品賞候補もすぐ観られる&ちょい待てば観られるのよ~。それが現在公開中の『ドリームプラン』と授賞式直前、3月25日公開の『ベルファスト』。この2作品は北米でも劇場公開された作品だし、オリジナル脚本。前者は女子テニス界のスーパースター、セリーナ&ビーナス・ウイリアムス姉妹の伝記映画、後者はケネス・ブラナー監督の半自伝的現代史映画。どっちも健在&活躍中の人の伝記ってのが個人的にひっかかるところなんだけど、とはいえこれまでの作品賞の傾向をみていると、伝記ものや実際に起きた事件をフィクション化した作品が受賞可能性高め。 ってーことは、この2作品はなかなかいいライバル関係にあるってわけ。よしひろ個人的にはケネス・ブラナーをラブし過ぎ、色眼鏡があるので『ベルファスト』推しなんですが(冷静に判断するとどの賞でも弱めなのが玉に瑕)、とはいえウイリアムズ姉妹の話もトンデモ実話なので好き。あ~ん、選べないからどっちも観て~。

作品賞、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞、主題歌賞『ドリームプラン』
story リチャード(W・スミス)はテレビでプロテニスの優勝賞金を見て、自分の娘達をテニスプレイヤーに育てることを決意。独学でテニスの教育法を研究し、破天荒な計画を実行に移すのだが……。

監督:レイナルド・マーカス・グリーン/出演:ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、サナイヤ・シドニー、デミ・シングルトン ほか/配給:ワーナー・ブラザース映画/公開:2月23日より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー ©2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、歌曲賞『ベルファスト』
story 1969年、北アイルランドのベルファスト。プロテスタントの武装集団が、カトリック系住民が暮らす地域を襲撃。対立が激化するなか、少年バディ(J・ヒル)と彼の家族は、移住の決断を迫られる。

監督:ケネス・ブラナー/出演:ジュード・ヒル、カトリーナ・バルフ、ジェイミー・ドーナン、ジュディ・デンチ、キアラン・ハインズ ほか/配給:パルコ ユニバーサル映画/公開:3月25日より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー ©2021 Focus Features, LLC.

ちなみに今回紹介した5作品は、どいつもこいつも『ドライブ・マイ・カー』のライバルになっていることをお知らせしておきます。次回は配信でソッコー観られる作品をチェックよ!

よしひろまさみち
オトナミューズのカルチャーページ編集担当&映画ライター。おバカなコメディからおマジメ社会派まで幅広くカバー。ほんとにおもろいもんしか紹介しません。

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