物語の鍵を握る3人のミューズとは!?
ギレルモ・デル・トロ監督が語る
『ナイトメア・アリー』撮影裏話
映画ライターよしひろまさみちが、今注目するシネマミューズをご紹介。今月は、大ヒット上映中の映画『ナイトメア・アリー』から。物語のキーパーソンとなる3人のミューズ達について、ギレルモ・デル・トロ監督に語ってもらいました。
じつは女性が鍵を握るサスペンス映画です
アカデミー賞候補になって話題の『ナイトメア・アリー』は、パッと見、ブラッドリー・クーパーがフィーチャーされたノワール・サスペンス。で・も・ね! 中身はちょっと違うんですよ。ブラッドリー演じるスタンを取り巻く女性達が、物語全ての鍵を握るという、まごうことなきミューズ映画なんですわ。観る前に想像していたものと違ったので、そこんとこ、トロたんことギレルモ・デル・トロ監督に聞いちゃいました。
「そもそもこの作品は、原作とそれを映画化したオリジナル版(1947年の『悪魔の往く町』)が大好きで、長年温めていた企画。アメリカン・ドリームの明暗、野心と倫理観について描かれた作品なんだ。昔の作品で時代設定も古い。それなのに今もなお、空虚な名声を求める人が急増しているだけに、バチっとテーマがハマって驚いてるよ」
主人公スタンは、あるカーニバルの一座で働きながら読心術を習得。持ち前の人当たりのよさとハンサムなルックス、それに見事な読心術を駆使して一流のショーマンに。「そこで彼の運命を示唆するのが、3人の女性達なんだよ」とトロたん。
「読心術師のジーナ、スタンと恋に落ちるモリー、彼に儲け話を持ちかけるリリス。この3人は、野心に溺れるスタンに対して、それぞれが“持続可能な未来”を提示するんだ。ジーナは心が広く、地に足がついている。モリーは恋に恋する若い女性。リリスはスタンに内に隠し持つ真実を気づかせる。彼女らはスタンにズケズケとものを言える親密な関係になり、ちゃんとアドバイスをするんだけど、スタンは自分でその関係をぶち壊して勝手に落ちていく。これがこの物語最大の面白さだよね」
聞く耳を持て、モテ男よ‥‥。という話でございます。ちなみに彼女らのキャスティングは第1希望だったそうで。
「じつは脚本を書いているときからジーナはトニ・コレット、モリーはルーニー・マーラ、リリスはケイト・ブランシェットをイメージしてたんだよ。オファーを即決してくれて嬉しかったな〜」
『ナイトメア・アリー』
text : MASAMICHI YOSHIHIRO