国際派スターとして、堅実に歩みを進めている山下智久さん。海外ドラマ初主演を果たしたHuluオリジナル『神の雫/Drops of God』が、9月15日から独占配信開始。本作は、2004年に連載開始されるや人気を獲得し、全世界累計発行部数1500万部超を誇る人気漫画『神の雫』をアレンジし、フランス・日本・イタリアを舞台にした実写版。世界的なワインの権威が亡くなり、160億円もの遺産の相続権をかけて実の娘と一番弟子がワイン対決を繰り広げていくストーリー。山下さんが今回演じたのは、ワインに人生を捧げるワイン評論家の遠峰一青。本作で自身最長となる海外ロケに挑戦した山下に、作品の舞台裏と「景色を広げる」方法論を教えてもらった。

――山下さんのワインのテイスティングをする際などの所作の美しさが印象に残りました。どのようなトレーニングをされて臨まれたのでしょう？

所作については、現場にソムリエの方が来てくださって教えていただきました。ただその先生は「自分のスタイルでいいと思う」という哲学の方だったため、自分も型にとらわれすぎず、そのときの気持ちやムードにあわせて自由な所作を行っていました。僕から提案したことでいうと、テイスティングなどをアップで撮る際には「本物のワインを使いたい」とお願いしました。やっぱり香りや味など、本物を目の前にすると表現が全く変わってきますから。

その他、撮影に際して行ったことはダイエットです。僕は一青を「ワインのことしか考えられず、やりすぎてしまう人間」と捉えて、彼に近づこうと身体を絞ったのですが、香りや味の感じ方がまるで変わりました。自分の神経がどんどん敏感になっていき、一青の状態を疑似体験した感覚になりましたね。また、撮影をする前にアクティングコーチと一緒にそのシーンを解析する作業を行いました。大変ではありましたが準備をきちんと整えたうえで現場に入ることができたので、撮影自体はとてもスムーズでした。

――アクティングコーチとの協働、ぜひもう少し詳しく伺いたいです。

スペインで撮ったHuluオリジナル『THE HEAD』のときには現場にコーチをされている方がいましたが、今回はオンラインでやり取りしながら進めていきました。シーンの解析においては、まず「いまどういう環境にあるか」「一青の頭の中に何があるのか」を紐解いていき、それをふり幅を持たせて表現に落とし込んでいきます。例えば「愛してる」というセリフがあったとして、心からそう思っているパターンと、本当は「殺したい」と思いながら言ってみるパターンと……といったように、幅を広げてトライしながら調整していきました。

――「THE HEAD」「TOKYO VICE」「マン・フロム・トロント」「SEE HEAR LOVE」等々、各国のクリエイターとのコラボレーションが増えてきましたが、演じ手としてのターニングポイントとなったご経験はありましたか？

「THE HEAD」の撮影で、ひとりで外国に数カ月滞在した経験は大きかったです。右も左もわからないなか、システムの違いを体感できたことで意識は変わったように思います。ただ、人間の根本は一緒ですし、心もカルチャーもちゃんと通じます。そうした枠組みはあくまで表面的なものだなと気づけました。

――異国の地で、変わらないものを再発見されたのですね。

そうですね。新しい景色を見ることはとても大事ですし、これからも自分の世界を広げていきたいと考えていますが、同時に内側の世界も広げていきたいと思っています。

――多国籍な現場に参加される際、コミュニケーションを円滑にするために工夫していることなどはありますか？

撮影期間のところどころで、みんなを食事に招待しました。「みんなここなら喜んでくれるんじゃないかな」とお店選びをするのも結構好きで、『神の雫/Drops of God』のタイでの撮影では、現地の友人に「どのお店がオススメ？」と聞きながら探しました。