「年齢はただの数字」じゃない。だから真剣に話そう、楽しもう! 50歳の梨花が誘う新しい季節
梨花と始める、新しい秋【後編】
遂にスタートしたYouTubeチャンネルも大大大好評! 50歳を迎え、「梨花の新章」はますますパワフルに勢いを増しています。古い自分は捨て、新しい風を取り入れる。そんな彼女の今の気分とマッチするよう、今季のコレクションから自由で楽しいルックたちをピックアップ。自らの手で切り開く新しい季節の幕開けを、プレイフルなファッションストーリーとインタビューでお届けします。
年齢は「ただの数字」なんかじゃない。
だけど、忘れたって構わないもの。
一方的な発信だけでなく、ファンと交流するイベントの企画もある。みんなとどんな話をしたいですか、と訊くと「どんなことでも! ただ、女性と年齢の関係は大きなテーマになる気がする」と返ってきた。
「私は『年齢はただの数字』って考え方があんまり好きじゃない。何だか言い訳めいている気がして。いや、私が50歳であるという事実は何も変わらないよ? と思う。それなら『年齢は気にしない』『別に忘れてよくない?』みたいな捉え方のほうがすっきりします。実際、女性って年齢によっていろいろなものが左右されますよね。ライフステージもそうだし、健康のことや、生きるビジョン……もちろん人によって年齢の重ね方やタイミングはさまざまだけど、みんないろいろあるわけじゃないですか。そういうことを真剣に話そうよ! 元気で、楽しんでいこうよ!って感じはあるかもしれません」
梨花さんは、ファンの人たちと固い信頼関係で結ばれているというイメージがある。何かを手渡したいという感覚があるのだろうか。
「そんなおこがましいことは考えていないです。私はただ、自分がいいと思ったものに対して一生懸命なだけ。でもそこに何かしらの魅力を感じて、誰かが参考にしたり、取り入れてくれるのはもちろん嬉しいし、そういったことが私にとって一番のエネルギーになるのは間違いないです」
私がやりたいことって、
結局ひとつなんです。
昨年刊行された『What I’m doing 私がしていること73こ』(SDP)には、梨花さんが美しさと健康のために選んだ日常的なティップスが綴られている。スキンケアやメイク、運動にガジェット、食事のありようから心の整え方まで、情緒的でありながらロジカルなものがバランスよくチョイスされており、全てに明確な根拠がある。梨花さんが何度も咀嚼し血肉にしてきた道筋がうかがえる。
「偏った考え方をするほうの人間という自覚はあるんだけど(笑)、いろいろなものからいいところを抽出して、ミックスするのは、好きですね。意外と」
バランス感覚がいい。センスがいい。たしかにそうなのだが、器用な人かと言われると、ちょっと違う。そのコントラストが唯一無二なのだ。
「長くこの仕事をしてきていますが、何に憧れていてどうなりたいか、この部分は赤文字系雑誌でモデルをやっていたころから変わっていません。それが『カバーガール』。私は素敵な女性が輝いているファッションの世界が大好きで、カバーガールはその頂点だから。最初は『多数のモデルのなかで自分が頭抜けるには?』、その後は『カバーガールの位置をキープするには?』。そういったことについて、ずっと考えてきました。歳を重ねるたびにハードルがとんでもなく上がっていく世界だし、ただキレイなだけでも、ボディラインが完璧なだけでもダメでしょう。もっとこういう女性、ふるまい、キャラクターであるべきでは? そう試行錯誤するなかで、バランス感覚が養われていったのは間違いないと思います。もともと私は努力が嫌いな子どもでした。生まれて初めて徹底的にやったし、やり続けているのはこのことだけ。『努力は夢中に勝てない』という言葉の通りなんです」
雑誌のカバーを飾った回数は日本最多と言われる。ときには自分のビジュアルに自信をなくしたことだってあった。それでもオトナミューズ創刊から今まで、梨花さんはカバーを飾り続けてくれている。もちろん、これからも。
「全身の細胞が快感に震えるような、すごく大きな場所と役割を与えてもらっているという自覚はあるし、感謝もしています。これまでは『だってそれが私のやりたいことだから。自分が楽しむためにやってるし、プレッシャーなんてない』って感じだったけど、最近は『周囲からの期待に応えたい』って思うようになりましたね。そもそも、夢中になれるものに出会えること自体が奇跡のようなもの。その気持ちを持ち続けるためには、自分自身をいつでもフレッシュな状態に保つ必要があって、そのための苦労なら買ってでもします。古いものは捨てて、新しい風を入れて。回り道になっても、危険が及んでも、安住はしない。これまでの経験で、それが一番いい結果を生むって分かっているから」
もうあれこれ悩むのはやめた!と梨花さんは笑うけれど、それは梨花さんの本能が、細胞が、梨花としての生き方を捉えきっているから大丈夫、という確信の証拠。これまで自分ととことん向き合ってきたからこそ到達できた境地で、これから私たちにどんなサプライズを届けてくれるのだろう。
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photo_ITTETSU MATSUOKA styling_TOMOKO KOJIMA hair_ASASHI[ota office] make-up_UDA [mekashi project] interview_AYANA model_RINKA
otona MUSE 2023年10月号より