LIFESTYLE

木津明子のこども食堂日記vol.6

JR根岸線、横浜駅から約20分の洋光台駅。駅前のまちまどレンタルスペースの中に、「こども食堂レインボー」はあります。オープンは月に2日。昼ごはん30食、夜ごはん30食。 ずらりと並ぶカラフルなお惣菜、お魚とお肉のメインディッシュのワンプレートごはん。日によってメニューは変わりますが、家庭的で親しみやすく、栄養価の高い食事をいただくことができます。広めの廊下では子ども達が指揮をとって、わたあめやかき氷など食後のちょっとしたおやつを作ったりしています。 2021年8月に「こども食堂レインボー」は開店しました。店主は『otona MUSE』はもちろん、モード雑誌からタレントのスタイリングまで幅広く活躍しているスタイリスト木津明子さん。売れっ子スタイリストである彼女がなぜ、こども食堂をやってみようと決心したのか。今回のvol.6のテーマは、『こども食堂の理想の形』について。
木津明子のこども食堂日記vol.5はこちら

笑顔のスタッフたち。上段左から2番目が佐久間奈都子さん。

恵比寿にあるビストロ「ワインの樹」のオーナーである、佐久間奈都子さん。 このお店での食事会に参加していた木津さんが、友人とこども食堂の話をしていた時「私もこども食堂で働いてるの!」と奈都子さんがカウンターの中から話しかけたことが出会いのキッカケ。そこでこども食堂に対する価値観や思いが近かったことから、意気投合し家を訪ねることとなり、今では奈都子さんはたまに「こども食堂レインボー」にもお手伝いに来てくれています。 そんな奈都子さんが秋谷にも新しくお店をオープン。その新しいお店でも子ども食堂を始めたいと思っているとのこと。そんなタイミングで改めて、木津さんが子ども食堂の先輩でもある奈都子さんにお話を伺いました。 木津さん「最初になっちゃん(佐久間さんのこと)と話した時『子どもの孤食や、食事が食べられない子どもたちを助けるだけの場所ではなく、誰でも来れるようないいムードの場を作っていきたい』という部分がとても近くて、嬉しくなったのを覚えてる」 奈都子さん「その時にお店だとゆっくり話せないから家に来る?って次の約束したんだよね」 木津さん「そう。そこでなっちゃんが参加している“恵比寿じもと食堂”(こども食堂のこと)の話や運営のお金の話とか色々話せて。そもそもなっちゃんが“恵比寿じもと食堂”を始めたキッカケは?」 奈都子さん「私が始めたわけではなくて、お店のお客さんがそこでボランティアをしていて。私が興味あると伝えたら、手伝いにおいでよと誘ってもらったのがキッカケなの。5、6年前だと思う。最初は“恵比寿新聞”代表の人の仕事場である一軒家を借りてスタートして、その後は“景丘の家”で続いているよ。この間、100回を迎えたの」 木津さん「100回! すごいなぁ。私はもう少しで1年経つけれど、やっぱり続けていくことが本当に大切だなと思う」

奈都子さんが参加している「恵比寿じもと食堂」の数年前の雛祭りの日。子どもたちもキッチンでお手伝い。

奈都子さん「私が最初にあきちゃん(木津さん)に感じたのは、有言実行というところ。最初に会う時も『会おうね』って話になってもそのまま連絡とらなかったり、社交辞令だったりする人いるじゃない? 私はそういうのは苦手だから、また会いたい人には会いたいと伝えるし連絡する。あきちゃんにもそういう有言実行で嘘がない感じがあったな。こども食堂を始めたキッカケを聞いた時もそう感じたし」 木津さん「ありがとう。私はこども食堂で働く人たちにボランティアとしてお願いはしたくなくて、働いている人に対しても少額だとしてもお金をきちんとお支払いしたいと思っているのだけれど、そこになっちゃんが共感してくれたのも嬉しかったな」 奈都子さん「私は今までそういう考えはなかったの。けれど『働いている人もハッピーであって欲しい。働いてちょっとだけお金がもらえたら、帰り道にケーキとか家族に買って帰ったりしてそうやってハッピーが連鎖していくといいなと思ってる』というあきちゃんの言葉に、確かにそうだなと思ったの」 木津さん「こども食堂をボランティアではなく、企業としてやっていきたいとずっと思っていて。ボランティアだと一生続けられないし、私がヨボヨボのおばあちゃんになった時に会社だったら誰かに託すことが出来るじゃない? キッズスタッフにもちょっとだけお小遣いを渡しているんだけど、それによって責任持ってきちんと仕事してもらってる」  

「恵比寿じもと食堂」ではコロナ禍ではお弁当を配布していたそう。

奈都子さん「ここで初めて会った時も、『こども食堂大変じゃない?』と友人に聞かれたあきちゃんが『大変じゃないよ、楽しいからやってるんだよ』と答えていて、『そうそう!」って思ったの。楽しいからやってるってスタンスじゃないと絶対に続かないもの。私はこのお店を運営しているうえで、生産者の人たちをすごく大事に思っているの。第一次生産者さんって本当に大変なんだよね。24時間365日自然の中で戦っているから、思わぬ災害で全部パーになっちゃうこともあるじゃない。でも農家さんたちは笑いながらその話をして『だから今、この野菜はないんだよ〜』って言うんだよね。自然を相手にしているから動じない。この人たち本当に強いなって思う。私はご飯を出していて『美味しい!』『天才!』とかお客さんたちに言ってもらえて、それは素直に嬉しいじゃない。でもそれって生産者の人たちがいないと出来ないことで。けれど、生産者の人たちは直接お客様から言葉を聞く機会はなかなかないから、その喜びを感じられない。だからその間に私が入って繋いで、その喜びを生産者側に伝えてあげたいと思うから、間に人は入れず直接やりとりするって決めているの。こども食堂も同じで、野菜やお米が子どもたちの喜びになって、体の一部になったんだよってことをきちんと生産者の人たちに伝えるようにしていけたら、生産者さんも野菜を作る時に気持ちいいんじゃないかなって思ってる」 木津さん「本当にそう。支援してくれている人たち、生産者の人たち、そうして関わってくれている人たち全てがハッピーに気持ち良くなれる循環や場を作っていきたいと思ってる。なっちゃん、これからも相談に乗って欲しいし、話を聞かせてね」

新しく横須賀・秋谷にオープンした「ワインの樹 Akiya」オープニング当日の奈都子さん。(photo/Takayuki Akachi)

ワインの樹 住所/東京都渋谷区東2-15-2 ℡ /070-8520-6204 営業時間/18:00~25:00(L.O 24:00) ワインの樹2号店が横須賀・秋谷にオープン
ワインの樹 Akiyaのインスタグラムはコチラ!

photo&text:MAKI KAKIMOTO

otona MUSE K

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