「見えないはずのものが見えるって、ロマンがある」穂志もえか映画『Never After Dark』主演インタビュー
――脚本はそのあとでできあがったんですね。
穂志 たしか撮影に入る10カ月くらい前に届いたと思います。それを読んだ上で、脚本と監督を務めたデイヴ(・ボイル)にこの作品で伝えたいこと、そもそもこの映画を作りたいと思ったきっかけや、キャラクターの生い立ちについてもメールで質問し、やりとりを重ねました。世界観をちゃんと理解しないと、私も観る人も置いてけぼりになるかもな、と思ったので衣装合わせや本読みでも世界観や人物像を掴もうとしつつ、都度都度ディスカッションをしながら撮影に挑めたのは本当にありがたかったです。
――参考にして、と言われたような作品ってありました?
穂志 ピーター・メダック監督の『チェンジリング』(80)、『赤い影』(73)、『永遠のこどもたち』(07) でした。どれも観たことがない作品だったので、楽しく拝見しましたし、『永遠の〜』は観たいと思っていた作品だったので親近感ありましたね。古い映画には特有の力強さがありましたし、本作の根っこにあるものの参考になったのかな、と思います。撮影に入ってからもデイヴがリファレンスとして取り入れているシーンがあったりしたんですが、そのときも「あの感じにしたい」といってくれたときに、すぐにヴィジョンを共有できたんですよね。すごく便利。私が演じた愛里にこれらのリファレンスが役に立つとは、撮影前には思いつかなかったことだったので、ちょっと驚きましたけど。
――この3本はホラーやスリラーという感じでもないですもんね。
穂志 そうなんですよ。あからさまに怖がらせるような作品じゃないですし、登場人物も突出した能力があるという設定でもないし。日常の人間関係のなかで、ふと恐ろしいことが起こってしまう、というテイストですから。愛里も仕事として霊媒師をやっているけど、だからといって日常的におかしい人ではなくて、世の中を普通に生きる女性でもある。世界観や設定は理解しつつも、霊媒師の仕事中以外は「普通の生活感」は意識していたかも。それをデイヴも面白がってくれてましたね。

――現場で困ったことありました?
穂志 いくつかあったんですが、それほど苦しむことはなかったんですよ。たとえば、何度か再現する芝居ができなくて、前後が繋がらない可能性があったんですが、それですらデイヴは「面白いね。また違うのが出てくるかもしれないから、もう一回いい?」なんていって、私の芝居の特性を面白がってくれたことで、自由にできました。また、事前のディスカッションをたくさんできたこともあって、現場では本当にスムーズだったんですよ。愛里や作品の設定を細かく聞いていましたし、現場で迷ったことがあったとしても、聞いたらすぐに返ってくる。デイヴの作り上げていたイメージがあまりにも緻密だったので、「こういう世界がある」って自分でも信じられるくらいに作り込んでくれてました。それに、最初のミーティングで「穂志さんがいいです!」って言ってくれたことで、私はじゃあ堂々と芝居をすればいいんだ、って思えたんですよね。作品の入口にあった言葉が最大の助けになったと思ってます。
――撮影中は重苦しいことが多かったでしょうけど、なにか思い出に残ることはありました?
穂志 いろいろあったんですが、あるシーンから登場する謎の男役を演じた吉岡睦雄さんがとにかく面白くて。彼、とにかく毎日を愉快に変換する能力を持っているんですよ。この作品の撮影は夜が多かったんですが、そうするとけっこうきついんですよね。でも吉岡さんは「ヨーロッパにロケに来ていて、時差ボケで眠いだけって思うと楽ですし、ワクワクしません?」って(笑)。そんなことさらっと言えるの、素敵じゃないですか。彼のユニークさにはみんなが虜になってましたね。

Interview & text_MASAMICHI YOSHIHIRO
Photograph_KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
Hair & Make-up_AIKO TOKASHIKI
Styling_ERI TAKAYAMA
ドレス¥30,800、(コトハヨコザワ/オン・トーキョー ショールーム)、ヴィンテージのリング¥8,690(フィズ)
オン・トーキョー ショールーム 03-6427-1640
フィズ 03-5306-6552
WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。










