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脱ぐ!歌う!全編英語!日本を背負い過ぎな山本耕史。ミュージカル『フル・モンティ』インタビュー

――24年の『RENT』、ほんとに素晴らしかったですもん。

 

山本 ありがたいけど、軽はずみにはできないんですよね。『RENT』の場合、26年前からやってるおかげで作品のこともセリフも、ディテールに関しては理解しているつもりだけど、『フル・モンティ』は0スタートだから。

 

――ちなみに映画はご覧になりました?

 

山本 このお話が決まってから観ました。でも「あ、これオリジナルはミュージカルじゃいんだ」っていうのが第一印象。

 

――そうなんです。舞台もイギリスの炭鉱町で設定がかなり変わってます。

 

山本 そう。ミュージカル化するにはぴったりの作品だってことは分かったんですが、映画版がこの舞台版の参考にはあまりならない、と思って、普通に鑑賞して楽しみました。

 

――ミュージカルに向いている素材ではあるんですよね。メイルストリップ(男性のストリップ)は音楽がないと成立しませんし、映画版のサントラも名盤ですし。

 

山本 そう思いますよ。だからか、このミュージカル版の開発と上演はかなり早かったんですよ。1997年の映画ですが、2000年にはミュージカル化されているんです。当時あまり話題にならなかったんだけど、それには理由があって。当時って『プロデューサーズ』やエルトン・ジョンの『アイーダ』、『ライオン・キング』など、ミュージカルの最強演目が軒を連ねてしまって、ちょっと埋もれちゃったんですよね。すごくいい作品なのに、他の演目が強すぎるからって埋もれちゃうのはもったいない、ってトレイも言っていて、日本での公演を模索していたっぽいんですよ。

 

――日本も招聘公演や山田孝之さん主演のバージョンが上演されています。

 

山本 そうなんですよね。一定の知名度もある、ということも分かったので、映画も楽しんで観たのですが、すごく魅力的なストーリーでした。どん底にいる主人公たちがそれぞれの苦悩を抱えながらも一つの目標に向かって常識をぶち破りながらはいあがっていく、っていうストーリーライン、すごく好きなんですよ。この作品のつくりって、僕が以前出演した『メンフィス』(50年代のアメリカ南部を舞台に、音楽を通じて人種差別に立ち向かう物語。2010年のトニー賞を獲得)と似てるんです。人種差別があたりまえの時代に、ブラックミュージックに惚れ込んだ白人の青年が、音楽の素晴らしさを伝えるためにアフリカ系のコミュニティにがんがん入っていって、常識をぶち破っていくんですよ。

 

――たしかに大枠が似てますよね。

 

山本 『フル・モンティ』は冴えないおじさんたちが、うだつのあがらない生活にジレンマを抱えている一方で、彼らを支えている女性たちも描かれて。それが最後に文字通り裸になって全てを脱ぎ捨てるっていう作品。裸になるっていう、ある意味強烈な表現を、物語のテーマにすごくうまく利用しているんですよね。これで魅了されないわけがない。

 

――そうです。結末いっちゃってますけど、本当に裸になるのがこの作品の見せ場。

 

山本 いや、トレイが「ぴったりの作品」って言ってくれたのは、それが理由でしょ、って思いましたもん(笑)。

 

映画『フル・モンティ』
© 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.
ディズニープラスのスターで配信中

――(笑)。いやいや、『RENT』で魅せたお芝居の面でもですよ!

 

山本 それがですね……。『RENT』のときって、歌8割、セリフ2割くらいだったんですよ。しかもセリフの大半は自分のタイミングで始められるモノローグだったんです。ところが今回は逆。8割はセリフなので、プレッシャーがぜんぜん違うんですよね。日本語だったら、本番までにセリフを全部覚えておけば、なにかトラブルが遭ったとしてもなんとか形にはなるけど、英語で芝居するとなると相手のセリフを受けてアドリブでかわすなんてことは至難の業だし。いや、ほんと挑戦しかないです。

 

――それと共に、からだも仕上げて。

 

山本 それはあまり気にしないでいけそうなんですよね。普段からワークアウトをしていますし、なんなら他のキャストのガタイがデカいから。今回のイーサン役のスティーブン(・ロシェット・ロペス)は『RENT』でロジャー役をやっているんで知っているんですけど、彼もすごいからだをしてるんですよ。もうほぼマーベルのスーパーヒーローみたいなガタイ。それに、『フル・モンティ』の主人公たちはみんな、どこかだらしない体型だから親近感を持てるキャラクター設定なので、そこまでガッチガチに鍛え上げて、というのは必要ないかな、と思ってます。

 

――奥さんと子どもがいて、仕事にあぶれたダメ親父設定ですもんね。

 

山本 そうそう。子どものためならなんでもやります、っていう設定。だからこそ僕がこの作品に惚れ込んだというのはありますね。おそらくトレイはそこも考慮して僕に声かけてくれたんじゃないかな。僕も子どものためだったらなんでもやりたいと思いますし。あるシーンでジェリーは息子に諭されて次のステップに進むんですけど、身に覚えがありまくりですよ。

 

――お子さんから諭されることなんてあります?

 

山本 日々ありますよ。「お行儀が悪いと注意するくせに、お父さんは食事中に肘をついてもいいんだ」とか(笑)。ほんっと基本的なことばかりなんだけど、ハッとさせられますし、大人だから、子どもだから、じゃなくて、つねに対等でいるべきだって考えてます。

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Interview & Text_MASAMICHI YOSHIHIRO
Photograph_KAORI IMAKIIRE
Styling_TOM KASAI
Hair & Make-up_ KAZUHIKO NISHIOKA

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WRITER

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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