渦中にあった人たちの声を正確に残すことの重要さがズドンときた。西川美和監督最新映画『わたしの知らない子どもたち』
あたしの世代の幼少期、繁華街にはホームレスの傷痍軍人がいたり、それこそ戦争経験者の両親や祖父母がいたりしたので、実際には観たことがなくても存在は知っていた戦争孤児。大方の方は、もうその記憶どころかリサーチ文献に積極的にアクセスすることが少ないというかほぼ皆無なのよね。そこに着目してこの物語を作った西川監督、マジすごい。
『すばらしき世界』には原作のノンフィクション小説『身分帳』があるんだけど、それが今作のアイデアのもととなったのね。役所広司さん演じる正夫は、人生の大半を暴力団と刑務所で過ごして、自立を目指しているキャラなんだけど、このモデルになった人物が、まさに戦争孤児だったんですって(ちなみにこの原作も作者の佐木隆三さんがモデルになった本人から見せられた真っ白な戸籍謄本に驚いたのがきっかけで、執筆を始めたという経緯があります)。
西川さんから聞いたお話で、そこからのリサーチがこれまた興味深いのよ。劇中で坂東龍汰さんが演じている諸積記者にも着想したモデルがいて、その記者がとった取材録が大きく役に立ったんですって。劇中では諸積さんが収容施設にいる戦争孤児の暮らしを取材、記事化するっていうくだりになっているんだけど、元になったネタはそんなルポルタージュだったんですって(そんなものが存在したの!? と思うんだけど、本当に出版されて国会図書館に収蔵されているそうです)。戦争孤児たちの生の声を文字で残したモデルの記者、マジえらい。というか、これこそジャーナリズム。

琴子を探す先生役の二階堂ふみさん。この映画が20年前に作られてたとしたら、おそらく琴子役は二階堂さん確定! ってくらい、小八重さんの存在感と似てるの。
WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。
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