【初めてのニューヨーク】「白タク」の洗礼で60,000円を支払うことに…俳優・清水みさとの旅エッセイ
こうして、わたしは無事にJFK国祭空港に着き、エミコさんの待つ、ブルックリンへ向かうことになった。「Uberで来てね」と言われていたし、海外で野良タクシーに乗るほど怖いことはないと思っているので、もちろんそのつもりだった。
ところが出口を出た瞬間、きちんとした格好で、首からそれらしきものを提げた男性に「タクシーはこっちだよ」と声をかけられた。周りの人たちもぞろぞろそちらへ向かっている。
「Uberに乗るから大丈夫」と言うと、「外を見てごらん、いま空港が混み合っていて、Uberが来れないんだよ」と言う。見れば、本当に混み合っていて、夜も遅く、入国審査の大行列ですでにクタクタになっている。信じるための条件がキレイに揃って、わたしはさらっと信じてしまった。
住所を伝えて、車に乗り込む。初めてニューヨークにきたことを伝え、ドライバーとの会話は思いのほか弾んだ。わたしはすっかり気をよくして、これから始まるニューヨークに浮かれ始めた。
ブルックリンに着いたころ、それまで陽気にしゃべっていた彼が、急に申し訳なさそうな顔で「500ドル」と言った(1ドル=150円)。
ここでようやく、白タクだということに気がついた。さっきまで親切だと思っていた人から、突然500ドルの請求。彼も彼で情がうつったのか、「初めてニューヨークに来たスチューデントに500ドルは高い」的なことをボスに電話で伝えて交渉している(だいたい学生に間違われる)。やさしいひとでよかった、と思いかけた。危ない、違う。これもまた高額請求の一環である。
結局、400ドルになった。100ドルも安くしてくれてラッキー、と思いかけた自分をここでもなんとか制する。
完全に出鼻をくじかれたけど、これから初対面のエミコさんに会うのに、着いて早々騙されたとか言って、かわいそうな人になるのも嫌だった。せっかく遊びにきたんだし、400ドルのことは一旦心の奥にしまって、家の扉をノックした。
出てきたエミコさんは、やっぱりマサヤさんと同じように笑顔が大きいチャーミングな関西人で、わたしは一瞬で大好きになった。玄関に近い一室を貸してくれた。ちなみに、マサヤさん・エミコさん夫婦とは、翌年、夫婦同士でメキシコ旅行へ行き、翌々年にはロサンゼルスでドジャースタジアムに観戦に行くほど仲良くなったのだけど、白タクに騙されたことはいまだに言っていない(ここでバレる)。
photograph & text:MISATO SHIMIZU
WRITER
タレント・モデル・俳優
清水みさと
タレント、モデル、俳優など幅広く活動。サウナ好きが高じて、「サウナイキタイ」のポスターをはじめ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務めるほか、TRANSIT「世界のサウナ巡礼記」、るるぶ「あちこちサウナ旅」、リンネル「食いしんぼう寄り道サウナ」、オレンジページ「本日もトトノイマシタ!」など多数の連載を担当。







