薪で沸かす大正時代の銭湯にアンティーク時計店【愛媛・八幡浜】で叶うレトロ巡り|旅エッセイ
お店はネット販売が中心で、突然飛び込みで来る人はあまりいないらしく、カジュアルにフラッと時計を見にきたわたしに店主は少し驚いていたけれど、快く、今お店にある一点ものをいくつも見せてくれた。
せっかくヴィンテージを買うなら、自分の生まれ年の時計があったらいいなと尋ねてみたけれど、欲しい時計はその年だけ、生産自体がかなり少ないらしく、今は入荷していないという。そうですよねえ、と並んだ時計を眺めていると、その中の一本に目が留まった。
わたしの生まれ年よりひとつ年下で、文字盤はグレーなのに、よくみるとそのまわりに青がぼんやり残っている。聞けば、もともと青かった文字盤が長い年月をかけて、太陽の光を浴びるうちに少しづつ色褪せて偶然この色になったらしい、唯一無二の一本だった。
「試着させてください」とお願いして、ドキドキしながら腕に乗せてみると、不思議なくらいしっくりきた。サイズ感までピッタリで、現行品でこのサイズはもう生産されていないらしい。
どこへ行っても見つからなかった時計が、北京をやめて愛媛に来て、今治に行かずに八幡浜に来たら出会ってしまった。購入を決めるまで、ものすごい早さだったと思う。わたしは嬉しくて、こんなに嬉しがってる自分のことまで嬉しかった。
なんの記念でもなければ、人生の節目でもないし、時計を買う理由としては頼りない気もするけれど、こんなに自分が喜んでいるなら、もうそれでいいんじゃないかと思った。
photograph & text:MISATO SHIMIZU
WRITER
タレント・モデル・俳優
清水みさと
タレント、モデル、俳優など幅広く活動。サウナ好きが高じて、「サウナイキタイ」のポスターをはじめ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務めるほか、TRANSIT「世界のサウナ巡礼記」、るるぶ「あちこちサウナ旅」、リンネル「食いしんぼう寄り道サウナ」、オレンジページ「本日もトトノイマシタ!」など多数の連載を担当。
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